研究課題/領域番号 |
21H02177
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
境垣内 岳雄 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 上級研究員 (00414847)
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研究分担者 |
末松 恵祐 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 研究員 (30807996)
鎌田 えりか 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 研究員 (40738118)
青木 直大 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70466811)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | サツマイモ / 直播 / 親いも肥大 / 直播栽培 |
研究開始時の研究の概要 |
一般的なサツマイモ品種では、植えた種いもが肥大して(親いも肥大)商品価値のある子いもが出来ないため、直播栽培は普及していない。提案者らは親いも肥大が小さく、子いも生産性の高いサツマイモ育種素材を開発した。 本研究では、親いも肥大性の異なる両親に由来するF1集団を解析材料として、親いも肥大に関与する遺伝領域を同定する。また、親いもでの酵素活性や代謝物の差異を明らかにする。遺伝領域の同定と生理的解析を並行することで、包括的に親いも肥大の機構解明ならびに原因遺伝子の特定を目指す。さらに、直播栽培での子いも収量向上への端緒とするため、子いもが多収となる草姿や個葉の特性などの地上部条件を解明する。
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研究実績の概要 |
令和3年度は、親いも肥大性の異なるサツマイモ6系統を生育時期別(3月植付け後、5月、6月、7月、8月の4回)にサンプリングし、親いもの酵素活性や代謝物を解析した。この結果、親いも肥大が顕著な系統(「コガネセンガン」など)では、デンプン合成に関わるADPグルコースピロホスホリラーゼ(AGP)活性や転流糖の分解に関わるスクロースシンターゼ(SUS)活性が高く、親いもがシンク器官として活発に機能していることを明らかにした。反対に、親いも肥大が小さい系統(「九州199号」など)では、親いものAGPやSUSの活性が低いまま維持されていた。このうち、生育が進んでも親いも低肥大系統では親いものAGPやSUSの活性が低いという知見は新規性が高く、原著論文としての公表準備を進めている。 令和4年度に実施する遺伝解析に向けて、親いも肥大性の異なる「コガネセンガン」と「九州199号」のF1集団(約200系統)を作出し、この種いもを確保するなど、令和4年度以降の試験準備を計画どおり進めた。 また、「九州199号」はサツマイモとしては特異な立型の草姿であることから、草姿の異なる両親(「九州199号」:立型、「九系358」など:開張)に由来するF1集団を対象として、草丈/茎長を指標とする草姿の評価を行い、後代系統群での立型の出現頻度の検証を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の主な研究内容として、親いも肥大性の異なるサツマイモ系統群を生育時期別にサンプリングして、親いもの酵素活性や代謝物等の解析を計画した。上記のとおり、親いも肥大性の異なるサツマイモ系統群では、AGPやSUSなどシンク機能に関係の深い酵素活性に明確な差があることを示すことができた。 また、令和4年度は親いも肥大性の異なる両親に由来するF1集団を対象として、親いも肥大に関与する遺伝領域の解明を計画している。このために必要なF1集団の種いもを予定どおり準備した。また、令和4年度は親いも肥大性の異なる系統を用いてトランスクリプトーム解析を実施し、発現変動遺伝子群の探索を試みる。この試験で重要となる適切なRNAサンプリング時期についても知見を得た。 以上のことから、本課題の令和3年度の進捗はおおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は親いも肥大に関与する遺伝領域の解明、また、親いも肥大性の異なる系統のRNA-seq解析による発現変動遺伝子群の探索が主な研究内容である。 両親である「コガネセンガン」と「九州199号」、ならびにF1集団200系統を3月下旬に直播する。収穫調査は10月に行い、親いも重、子いも重など塊根に関する表現型値を取得する。遺伝子型はGRAS-Di法で取得し、表現型値とあわせてGWASを行うことにより、直播適性に関わる遺伝領域の検出を試みる。また、F1集団(200系統の一部)の個葉光合成速度や草型など地上部形質を評価することで、直播栽培での子いも収量性に関連の深い形質について検証する。 遺伝解析に加えて、親いも肥大性の異なる「コガネセンガン」と「九州199号」について、親いもの肥大前(5月上旬)、肥大初期(6月中旬)、肥大期(7月下旬)に親いもからRNAを抽出し、トランスクリプトーム解析を行う。時期別、品種別に遺伝子発現パターンを比較し、QTL領域内の発現変動遺伝子から候補遺伝子の選定を進める。さらに、親いも肥大性の異なる品種間での酵素活性や代謝物の差異を明らかにすることで、遺伝子から代謝物にまで通貫した親いも肥大の包括的メカニズムの解明を目指す。
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