研究課題
基盤研究(B)
CTRP3が自己免疫性関節炎や実験的自己免疫性脳脊髄炎の発症を抑制することを見出し、この過程にPAQR2受容体を介した Th17細胞分化の抑制が関与していることを示した。また、CTRP6は新規の補体第二経路の制御因子であることを明らかにしたが、変形性関節症における軟骨増殖促進作用や腎障害後の線維化抑制作用には補体制御作用以外に、PAQR1/4受容体を介した作用も関与していることを見出した。PAQR1~4のKOマウスを作製することにより、CTRP3、CTRP6がそれぞれどの受容体に作用するかを明らかにすると共に、それぞれのシグナル伝達メカニズムを解明する。
C1q/TNF-related protein(CTRP)ファミリーはadiponectinなど30以上の分子から構成される分泌タンパク質群で、炎症応答や糖代謝、骨代謝、発がんなどにおいて極めて重要な役割を果たすことが示唆されるが、その理解は十分でない。我々は自己免疫疾患モデルにおいて多くのCTRP分子が発現することを明らかにすると共に、CTRP3およびCTRP6が免疫疾患の治療標的として有用であることを示してきた。これらは他の疾患への関与も示唆されており、本研究では疾患モデルおよび遺伝子改変マウスを用いて疾患発症機序の解明を試みた。Th17細胞は自己免疫疾患の悪化に重要な免疫細胞である。我々はCTRP3がTh17細胞にて高発現することに着目し、CTRP3遺伝子改変マウスを用いた生理機能解析を実施した。その結果、CTRP3欠損によりTh17細胞の分化が亢進すること、一方で組換体CTRP3の添加によりTh17細胞の分化が抑制されることを見出した。このCTRP3によるTh17細胞の分化制御は受容体AdipoR2を介したものであり、CTRP3-AdipoR2によるTh17細胞の分化制御は自己免疫疾患である多発性硬化症を抑制できることを明らかにし、国際的な学術誌であるFrontiers in Immunology(Impact factor: 7.561)にて報告した。また、骨代謝疾患・腎疾患にてCTRP3およびCTRP6が抑制的に機能することを見出した。CTRP3およびCTRP6が作用する複数の受容体を明らかにしており、シグナル伝達など詳細な分子機序の解明のため遺伝子改変マウスの作製を試み樹立に成功した。次年度はこれらの遺伝子改変マウスおよび疾患モデルマウスを用いた解析を推し進め、CTRP分子-受容体の分子機序の解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
当初より研究目的としていた、CTRP分子の受容体である遺伝子の欠損マウス樹立に成功した。また、CTRP3および受容体AdipoR2に関する学術論文を発表することが出来た。疾患モデルマウスを用いた生理機能解析も進んでいる。これらの結果から、当初の目的を鑑みておおむね順調に進展していると考えている。
今年度樹立した遺伝子改変マウスおよび疾患モデルマウスを用いた疾患発症機構の解明を、当初の研究計画通りに進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (32件) (うち国際共著 16件、 査読あり 32件、 オープンアクセス 25件) 学会発表 (3件) 図書 (9件) 備考 (3件)
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