研究課題/領域番号 |
21H02396
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
研究代表者 |
高橋 武司 公益財団法人実験動物中央研究所, 実験動物基礎研究部, 部長 (80335215)
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研究分担者 |
玉井 恵一 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん幹細胞研究部, 部長 (40509262)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | ヒト化マウス / 自然免疫 / 受容体 / Fc受容体 / マクロファージ / 抗体医薬 / 赤血球 / マラリア |
研究開始時の研究の概要 |
免疫不全マウスにヒト組織を生着させるヒト化マウス技術は様々な研究に用いられている。この技術の核は異種に対する受容性の高い免疫不全動物を開発することにある。申請者らは重度免疫不全NOGマウスを用い、主としてヒト血液細胞の生着、発生分化を試みている。NOGマウスは優れた免疫不全マウスであるが、それでも生着が困難な細胞種が存在している。ヒト組織の一部はその糖鎖を通してマウス免疫系に認識され、発生分化が抑制される、もしくは拒絶されることを見出している。本研究ではマウス糖鎖認識受容体とヒト組織の相互作用を明らかにすることにより、ヒト組織の生着性を向上させられる新しい免疫不全マウスを開発する。
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研究実績の概要 |
1.前年度までに樹立したNOG-C3/clec4f2重欠損マウスに移植したヒト赤血生存をさらに延長するために分子標的阻害剤投与実験を行った。そのうちマクロファージ機能に関連する細胞内分子Aを阻害する薬剤を2種類、またAの活性化に関連すると考えられる分子Bを阻害する薬剤を2種類投与するとヒト赤血球の生存がNOG-C3/cle4f2重欠損マウスに比較して劇的に延長することを見出だした(移植後4日目におけるヒト赤血球の生存率は移植直後を100%として 無投与群 40% VS 投与群 80%)。 これによりマウスの遺伝改良によりヒト赤血球の長期生存の可能性が現実的なものとして視野に入った。 2.上記細胞内分子Aに属する複数のファミリー分子に対する各分子標的阻害剤の効果を検討した。移植後4日目におけるヒト赤血球の生存率は薬剤投与群では60-75%で各ファミリー分子間で機能の重複があると推測された 3.現在Aに属するファミリー分子のうち2種類、Bに属するファミリー分子3種類の遺伝子のゲノム編集を行っている。 4.ヒト造血幹細胞を移植したNOG-C3/clec4f2重欠損マウスの循環血液からわずかではあるがヒト赤血球の分化が可能であることを確認した。 5.抗PD-1抗体の投与により抗腫瘍効果を顕在化するNOG-FcRKOマウスの特性解析のために、NOGマウスとNOG-FcRKOマウスの白血球の遺伝子発現を単一細胞RNAシークエンス(scRNAseq)により解析を行い、両者において優位に発現変化を示すパスウェイがあることを見出している 6.担がんしたヒト化NOGマウスとNOG-FcRKOマウスに抗PD-1抗体を投与した際の腫瘍浸潤細胞の遺伝子発現をscRNAseqにより解析し、現在データを解析している。これによりNOG-FcRKOマウスにおいてなぜ抗腫瘍効果が得られるのかを明らかにできる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C3/clec4f2重欠損マウスでヒト赤血球造血が確認でき、さらに阻害剤実験によりマウス自然免疫系分子でヒト赤血球排除に関わる標的分子が同定できた。この標的分子の同定にはRNAシークエンスのデータも活用できており、概ね現在までの解析手法が妥当であったと考えている。阻害剤実験の結果からは分子AないしBを阻害することで1週間程度はヒト赤血球のレベルを移植初日のレベルで保つことができるためマウスによるヒト赤血球認識のメカニズムの主要なパートが抑えられていると示唆される。 NOG-FcRKOマウスの特性解析ではNOGマウスと比較して遺伝子発現を基にした白血球の細胞クラスターは極めて類似していたが、特定のパスウェイで変化を示す遺伝子を見出しており、今後この遺伝子の役割をゲノム編集により明らかにできるものと考えている。また担がんマウスにおける腫瘍浸潤細胞の性質がNOGとNOG-FcRKOマウスにおいて大きく異なることを見出したことから抗体治療の奏功性のメカニズムを理解することにつながるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
C3/clec4f2重欠損マウスを用いた阻害剤実験によってヒト赤血球排除への関連が示唆された標的分子について、遺伝子をゲノム編集により破壊したマウスを作製する。樹立されたC3/clec4f/aまたはC3/clec4f/b 多重欠損マウスにヒト赤血球を移植し、生存の延長が可能かを検討する。またヒト造血幹細胞移植によりヒト赤血球の発生分化への支持能力がどの程度改善するかを検討する。 NOG-FcRKOマウスを用いた免疫チェックポイント阻害剤の検討を引き続き行う。scRNAseqのデータ解析により腫瘍浸潤ヒト及びマウス細胞の性質の相違を解明する。また抗PD-1抗体だけではなく抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体の抗腫瘍効果を検討する。
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