研究課題
基盤研究(B)
グラム陰性細菌はその薬剤自然抵抗性により抗生物質や抗菌剤に対して耐性をしめし、院内感染などでしばしば問題となる。細胞膜と外膜と2枚の膜を持つことによる薬剤の透過性の悪さがその原因と古くは考えられていたが、そこに横たわる三者複合体形成型の膜輸送体による薬剤排出が真の薬剤耐性の責任蛋白質であることが分かった。我々はその構造と機能を本質的に理解するという基礎研究を通して、その知見をグラム陰性細菌による薬剤耐性化の克服に繋げたいと考えている。
本研究課題では、主に二つの輸送系を取り扱う。共にグラム陰性細菌由来の輸送系ではあるものの、一つは私たちのグループがこれまで20年間以上取り組んできた多剤排出に関わる三者複合体形成型排出輸送体である。この種のABC輸送体は2017年に我々が世界に先駆けて構造を明らかにした。これはABC輸送体として新奇構造をもち、Type-VII型ABC輸送体として新たにカテゴライズされた。また、二つ目のターゲットとしてType-VII型ABC輸送体ではあるものの薬剤排出輸送を担うのではなく、外膜蛋白質の経ペリプラズム輸送に関わるもので、大腸菌のLol系が知られている。これらの構造に基づく作動機構の解明が本研究課題の目的である。最終年度となる2023年度については、先ずLol系のペリプラズムシャペロンと外膜蛋白質との結晶解析を完了させた。ペリプラズムシャペロンは外膜蛋白質N末端の脂肪酸修飾部を分子内に硬く結合しているものの、そこから数十残基のフレキシブルなループ領域とは一切相互作用がないことが分かった。さらに、複合体のX線小角散乱解析により、このループの先にある外膜蛋白質本体は、揺らいでいて複数の相対位置をとることが、散乱データと複数のMDトラジェクトリを用いたフィッティングにより明らかになった。この件について現在論文を執筆中である。一方、Type-VII型多剤排出ABC輸送体は、基質との共結晶化を進めたものの基質複合体の構造解析には至らなかった。一方Lol系ABC輸送体と外膜蛋白質との光架橋による複合体の分析により、Type-VII型ABC輸送体のペリプラズムドメインに存在する基質結合部位に存在するアミノ酸残基を明らかにすることができ、立体構造モデル上にその位置をマッピングすることで、Type-VII型ABC輸送体の作動メカニズムの理解へと一歩近づくことが出来た。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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https://www.titech.ac.jp/news/2023/067130