研究課題/領域番号 |
21H02510
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高橋 裕一郎 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任教授 (50183447)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 光合成 / 光化学系 / 構造解析 / ダイナミクス / 分子集合 / 環境変動 / 分子集合因子 / アンテナ複合体 / 緑藻クラミドモナス / 環境順化 / 分集合因子 |
研究開始時の研究の概要 |
酸素発生型光合成反応で最も特徴的かつ重要な反応は、光化学系ⅠとⅡ(PSIとPSII)が担う光エネルギーの捕集と光化学反応である。PSIはおよそ20のサブユニットと200ほどのコファクターから構成される葉緑体に存在する最も大きな複合体の一つで、その構造が原子レベルで明らかにされてきた。しかし、PSI構成サブユニットが機能的な複合体へ分子集合する過程は不明な点が多く残されている。本研究では、葉緑体および核ゲノムの形質転換系が確立している緑藻 クラミドモナスを利用し、PSI複合体の構造と機能のダイナミクスな分子集合機構を解明し、変動する光環境下に馴化して効率的に光合成が進む分子機構を解明する。
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研究実績の概要 |
1)光化学系I(PSI)複合体の分子集合因子の解析を行った。精製した分子集合因子に結合するPSI分子集合中間体にクロロフィルが結合していることをレーザー蛍光顕微鏡で明らかにし、その蛍光スペクトルを測定した。 (2)嫌気条件下で培養したクラミドモナスから単離したPSI複合体が二量体を形成することを見出し、クライオ電子顕微鏡で二量体構造を初めて高分解能で解明した。今後の分子集合の分子機構解明に重要な情報を得ることができた。 (3)9種のLHCIのうちLHCA3とLHCA7をそれぞれ欠損した変異株からPSI複合体をアフィニティー精製する方法を確立し、そのサブユニット組成を明らかにし、低温蛍光スペクトルを測定した。これらの変異株は超波長の蛍光スペクトルが欠失しているため、励起エネルギー移動の効率が低下している可能性を指摘しることができた。今後は、アンテナサイズの測定を閃光分光法などの手法を用いて進める予定である。 (4)シトクロムb6f複合体のPetCのN末から171番目のProをLeuに置換(PETC-Pro171Leu)したpgr1変異株の電子伝達活性が、チラコイド膜ルーメンのpHが酸性になった時により強く抑制されることを明らかにした。この成果によりPSI周辺のサイクリック電子伝達活性の制御機構に関する新しい知見が得られ、変動する光環境下におけるPSIの活性の制御および光損傷の分子機構の解明に貢献した。さらにHis-tagを融合したCyt-b6f複合体をアフィニティ生成し、その構造解析をクライオ電顕で進めた。pgr1変異をもつ複合体の構造の解明も順調に進んでいる。 (5)PSI複合体に結合するアンテナ複合体LHCIの分子集合過程関与するcpSRP43/cpSRP54とインセルターゼAlb3.1が複合体を形成しすることを明らかにした。クライオ電子顕微鏡による構造解析を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
クライオ電子顕微鏡を用いて、緑藻クラミドモナスの光化学系Ⅰ複合体の二量体の構造を最も高い分解能で決定できた。この成果は新しい構造を明らかにしただけでなく、今後の分子集合の分子機構を解明する上で必須の高分解構造を得たため重要である。また、光化学系Ⅰ複合体の分子集合因子の構造解析の道を開くアフィニティー精製法を確立することができた。特に、光化学系Iコア複合体の分子集合に必須であるYcf3/Y3IP1/Yc4/CGL71複合体とアンテナ複合体であるLHCIの分子集合に必須である因子cpSRP43/cpSRP54/Alb3.1が複合体を形成していることを示した成果は新規知見でありかつ重要である。これらの分子集合因子の構造解析を進めるための標品の精製は順調に進んでおり、今後のクライオ電子顕微鏡による構造解析が可能となる成果である。 シトクロムb6f複合体のpgr1変異株の電子伝達活性が、チラコイド膜ルーメンのpHが酸性になった時により強く抑制されることを明らかにした成果は、PSI周辺の電子伝達活性の制御機構に関する新しい知見であり、今後の研究の進展に重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
光化学系Ⅰ複合体の反応中心サブユニットは葉緑体遺伝子PsaAとPsaBにコードされているため、葉緑体リボソームにより翻訳され、チラコイド膜へ挿入され、コファクターを結合して複合体を形成する。これらのサブユニットは100を超える色素分子などを結合し、膜を貫通するヘリックスを11個もつことから、チラコイド膜に結合した葉緑体リボソームで翻訳されると同時にチラコイド膜へ挿入される可能性が考えられる。反応中心の分子集合の機構を解明するには、チラコイド膜に結合した葉緑体リボソームを単離し、反応中心サブユニットを合成途中の構造を解析することが重要である。そこで、緑藻クラミドモナスから無傷葉緑体を単離し、チラコイド膜結合リボソームを精製する方法を確立する。
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