研究課題/領域番号 |
21H02608
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石川 勇人 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80453827)
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研究分担者 |
塚本 佐知子 熊本大学, 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター, 教授 (40192190)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | 全合成 / バイオインスパイアード反応 / アルカロイド / イリドイド配糖体 / 集団的合成 / セコロガニン / 集団的全合成 / 中分子天然物 / ストリクトシジン / 樹形図型集団的全合成 / モノテルペノイドインドールアルカロイド / 生合成模倣反応 |
研究開始時の研究の概要 |
植物イリドイド配糖体であるセコロガニンは3000種以上の天然物へと樹形図的に導かれる生合成重要中間体として知られている非常に有名な分子である。申請者らは、この分子を起点とし、独自に提案する生合成フローを参考に樹形図型集団的天然物全合成を行う。具体的にはスイカズラ科植物から見出される高極性中分子に属するディプサクスイリドイド配糖体6種、およびアカネ科、マチン科、キョウチクトウ科から見出される生合成上流および下流のモノテルペノイドインドールアルカロイド18種の天然物を樹形図的に、市販品から20段階以下で全合成する。合成した天然物は多面的な生物活性評価を行い、医薬品シード化合物へと昇華する。
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研究実績の概要 |
本研究では、申請者らにより既に全合成による供給が可能となったセコロガニンおよびその誘導体を出発原料として、生合成樹形図に沿った独自の手法により関連する天然物を網羅的に全合成する。さらに合成した天然物の生物活性スクリーニングによって、それら天然物を医薬シード化合物へと昇華することを最終的な目的としている。令和4年度において、令和3年度に全合成を達成したディプサクスイリドイドオリゴマーの構造に疑義が生じたため、我々自身で天然より標的イリドイド類を単離し、その構造を訂正した。最終的に、集団的全合成と生物活性を併せて論文として発表した。 高等植物に含有されるモノテルペノイドインドールアルカロイドの全合成研究においては、まず、強力なオピオイド作動薬であるミトラガイナアルカロイド3種の全合成を達成した。現在、本合成法をさらに展開し、構造活性相関研究を進めている。さらに、セコロガニンと並んで極めて重要な生合成中間体と位置付けられているガイソシジンの全合成を達成した。また、その際、これまで合成例のなかったビロカリンA、アポガイソシジンの全合成も達成した。他方、糖鎖を有するβ-カルボリン型のインドールアルカロイドの全合成を行った。最終的にユニークな構造を持つリアロシド、オフィオリンAおよびBをはじめとした5種のアルカロイドの集団的全合成に成功した。 令和3年度から新たに開始したリコポジウムアルカロイド類の全合成では、4つの窒素含有ヘテロ環上に多数の不斉点を持つセネポジンFの全合成を行った。その際、天然物の立体化学に疑義が生じたため、考えうる立体異性体を網羅的に合成し、最終的にセネポジンFの絶対配置を含めた構造を決定することができた。 現在、合成した天然物群の、共同研究による生物活性スクリーニングが進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和3年度に達成した全合成は15種であり、令和4年度は18種である。それらの骨格は多彩であり、総収率もほとんどが10%を超えている。総工程数に関しても15段階以下である。また、そのうちの22種は世界初の全合成である。本提案研究では、わずか2年で33種の天然物の全合成が達成できた訳であるが、これまでの全合成手法では達成困難な数である。すなわち、今回我々が提案し、実行している生合成を模倣する樹形図型全合成の有用性を現状十分に示せていると考えている。加えて、民間伝承につながる生物活性を見出すこともできた。令和4年度内に、本研究の直接的な成果として5報の学術論文を報告する事ができた。そのうち、ガイソシジンの全合成はChemistry A European Journal誌の内表紙に採択された。また、イリドイド配糖体の網羅的全合成研究はOrganic Letter誌に掲載され、他の学術誌(Synfacts)にハイライトされた。 令和4年度で、重要な生合成中間体のガイソシジンの全合成を達成したので、令和5年度には更なる樹形図型全合成への展開が期待できる。 以上の理由により「当初の計画以上に進展している」とさせて頂いた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って、生合成樹形図を考案しながら、セコロガニン関連天然物の全合成研究を展開していく。令和4年度でガイソシジンの全合成が成されたので、そこから分岐するアルカロイド類を網羅的に全合成する。一方で、生合成を考慮した全合成を進めていくと、合成中間体が植物内でも合成されている可能性に気づかされる。従って、東南アジア、アフリカなどから基原植物を手に入れて、新規イリドイドやモノテルペノイドインドールアルカロイドの探索研究も併せて進めていく。そこで、想定される新規天然物を単離することができれば、全合成経路は既に確立されている状態であるため、速やかに調製し、量的供給を行ったのち、生物活性評価を行う。 また、構造活性相関研究を見据えて、インドール環の新しい化学修飾反応の開発を行い、計算科学による反応機構解析も併せて検討していく。 合成する全ての天然物群は抗腫瘍(ユビキチン-プロテアソームシステムを標的とする各種評価、細胞周期阻害、細胞形態変化)、抗菌、抗HIV、抗アミロイド、抗骨粗鬆症、抗慢性腎臓疾患をはじめとする幅広い生物活性評価を行い、医薬シードへと昇華する。
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