研究課題/領域番号 |
21H02646
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石澤 啓介 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (60398013)
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研究分担者 |
八木 健太 徳島大学, 病院, 特任助教 (10869085)
合田 光寛 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (40585965)
石澤 有紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 徳島大学専門研究員 (40610192)
新村 貴博 徳島大学, 病院, 特任助教 (50910014)
相澤 風花 徳島大学, 病院, 特任助教 (80848367)
座間味 義人 岡山大学, 病院, 教授 (70550250)
濱野 裕章 徳島大学, 病院, 特任助教 (10847289)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 大動脈解離 / 大動脈瘤 / 医療ビッグデータ / 感染症 / 抗菌薬 |
研究開始時の研究の概要 |
大動脈解離や大動脈瘤は、致死率が高く緊急性を要することから、その発症予防が重要である。近年抗菌薬の副作用として発症することが示唆されている一方、感染症そのものが大動脈疾患発症を惹起する可能性も報告されている。しかしながらその関連性は未だ明らかになっておらず、治療・予防に繋がる病態解明も進んでいない。そこで本研究では、人工知能 (AI) システム・医療ビッグデータ・基礎生命科学データベースを統合的に解析し、疾患モデル動物を用いた基礎薬理学的な検証を行うことで、感染症と大動脈疾患の包括的な連関解明、さらには予防戦略の確立を目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、人工知能 (AI) システム・医療ビッグデータ・基礎生命科学データベースを統合的に解析する「多層的データマイニングアプローチ」に基礎薬理学的手法を融合し、感染症と大動脈疾患の包括的な連関解明、さらには予防戦略の確立を目的とする。そのなかでも致死率が高く緊急性を要する大動脈解離や大動脈瘤に着目し、感染症の罹患歴や抗菌薬による治療に起因する大動脈疾患発症について疫学的な評価を行い、治療・予防に繋がる病態解明を目指す。前年度、感染症や抗菌薬の投与が大動脈解離・瘤発症のリスク因子となり得るかを明らかにするため、まず、医薬品副作用自発報告データベースであるFAERSおよびJADERを用いて、各種抗菌薬などの投与によって、大動脈疾患発症が増加するか否かについて解析した。本年度はこれらに加えて、より大規模なデータベースであるWHOに集積されるVigiBaseを用いた解析に着手した。そこで抗菌薬の種類によって大動脈疾患の報告リスクに差があることを見出し、特定の抗菌薬でそのリスクが高いことが示唆された。さらに診療報酬情報データベースであるJMDCデータベースでは、呼吸器感染症、尿路感染症のそれぞれに関して、感染症の罹患および抗菌薬の使用による大動脈疾患発症に対する影響を解析している。 また基礎薬理実験を並行して実施している。培養ヒト血管内皮細胞・血管平滑筋細胞において、抗菌薬による細胞障害マーカーの発現変動に及ぼす影響について検討を進めている。フルオロキノロン系抗菌薬では、いずれの細胞に対しても細胞障害をきたす可能性が見出された。そこで大動脈解離易発症モデルマウスを作成し、フルオロキノロン系抗菌薬の投与が発症率に影響を及ぼすか否か検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医薬品副作用自発報告データベース解析の結果、フルオロキノロン系抗菌薬の使用において有意に報告オッズ比が上昇することを確認した。JMDCデータベースでは、抗菌薬投与患者およびICD 10において感染症を診断された患者のレセプトデータを購入・データ構築し、抗菌薬投与患者における大動脈疾患発症における背景因子を解析している。また、呼吸器感染症、尿路感染症に分類しそれぞれのリスク因子について解析を実施している最中である。また、FAERS、VigiBaseにてリスクの上昇が示唆されたフルオロキノロン系抗菌薬の一つであるレボフロキサシンをマウスに単独投与したが、血圧上昇作用は認めず、単独での血管毒性は認めなかった。一方で、培養細胞を用いたin vitroの検討より、レボフロキサシンは内皮細胞傷害マーカーの上昇を惹起することが明らかとなった。さらに、血管平滑筋細胞においては細胞外基質分解酵素であるMMPファミリーの発現上昇を認めることを見出した。そこで、大動脈解離易発症モデルマウスを作成し、フルオロキノロン系抗菌薬の投与が発症率あるいは動脈における各種疾患マーカー・責任分子に影響を及ぼすか否か検討している。以上により、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
JMDCレセプトデータベースを用い、多変量解析、コホート解析を継続して実施する。感染症単独による大動脈疾患発症のリスクを同定し、さらに特定の抗菌薬の使用による有害事象としての大動脈疾患発症におけるリスク因子の層別化を試みる。 創薬支援AIシステム、LINCSデータベース解析などのin silico研究から抽出された標的分子に対して感染症および抗菌薬が及ぼす影響について、マウス、培養細胞を用いた基礎薬理学的手法から、そのメカニズムについて明らかにする。 さらに今年度は、FAERS、VigiBaseを用いて予防薬探索を実施する。大動脈疾患発症の報告オッズ比が1を下回るような併用薬を網羅的に探索し、予防薬候補とする。これらの薬剤が大動脈解離易発症モデルマウスにおける発症率を抑制しうるか否か、さらには炎症・血管内皮障害マーカーをはじめ病態の改善を示す会中について、モデルマウス・培養細胞を用いて検証する。
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