研究課題/領域番号 |
21H02660
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
征矢 晋吾 筑波大学, 医学医療系, 助教 (90791442)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 扁桃体 / Npbwr1 / ソーシャルディスタンス / 社会性 / 個体間距離 / 情動行動 |
研究開始時の研究の概要 |
社会性を持つ動物にとって、見知らぬ他者との物理的距離(ソーシャルディスタンス)を 適切な範囲に維持することは円滑なコミュニケーションを行う上で必須である。社会的接触は恐怖の対象となり得る他者とのソーシャルディスタンスを縮めるプロセスを必要とするが、物理的距離と情動応答がどのように統合され、制御されているのかは不明である。本研究では、新規神経ペプチドNPB/Wの受容体であるNPBWR1に焦点を当て、主に扁桃体に発現するNPBWR1が制御する神経回路の同定およびその操作等を行うことで、ソーシャルディスタンスの調節におけるNPBWR1の役割およびNPBWR1発現ニューロンの生理機能を明らかにする。
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研究実績の概要 |
扁桃体中心核(CeA)におけるNpbwr1発現ニューロン(Npbwr1ニューロン)がソーシャルディスタンスの調節時にどのような活動動態を示すのかを明らかにするため、Npbwr1-iCre(ヘテロ)マウスのCeAにAAVを用いてjGCaMP7cを発現させ、ファイバーフォトメトリーを用いたカルシウムイメージングを行った。リアルタイムにソーシャルディスタンスを計測する解析プログラムと併用し、ソーシャルディスタンスが増減するタイミングでNpbwr1ニューロンのカルシウム動態を観察した。その結果、Npbwr1ニューロンは新規個体(雄、雌)との接触によって活動が増加し、既知の個体との接触時にはその活動に変化が見られなかった。また、AAVを用いてNPBWR1およびNPBWR1(SNP)をNpbwr1-iCre(ホモノックイン)マウスのCeAに発現させ、新規個体に対する社会行動およびソーシャルディスタンスを評価するとともに、その際の神経活動をファイバーフォトメトリーを用いて観察した。その結果、NPBWR1(SNP)を発現させた群では新規個体との接触時にNpbwr1ニューロンの活動増加が観察されたが、NPBWR1を発現させた群では変化が見られなかった。また、NPBWR1(SNP)を発現させた群では、コントロールに比べて社会行動およびソーシャルディスタンスに変化は見られなかったが、NPBWR1を発現させた群ではソーシャルディスタンスの増加および社会行動の減少が観察された。以上の結果から、新規個体との社会的接触に高まるCeAのNpbwr1ニューロンの神経活動は社会性の向上に重要な役割を果たしており、Giタンパク共益型受容体であるNpbwr1はこのニューロンを抑制することで新規個体に対する不必要な接触を避ける働きがあることが想定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在、これまでに得られた実験の結果を論文として投稿する準備を行っている。さらに、新規個体との社会的接触を行う上でNpbwr1ニューロンの活動増加が必要であるかどうかを明らかにするため、新規または既知のマウスに対する社会行動を同時に評価した。薬理遺伝学によりNpbwr1ニューロンの活動を抑制した結果、新規マウスに対する社会行動においてのみ減少傾向が観察された。したがって、新規マウスに対して常に観察される探索行動を持続して行うためにはNpbwr1ニューロンの活動増加が重要であり、このニューロンは新規マウスを検知する神経メカニズムに関与する可能性が示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
Npbwr1ニューロンの操作により新規個体に対する社会性が変化することから、このニューロンの人為的興奮が社会的敗北ストレスによる社会性低下を回復させるかどうかを検証する。具体的には、CD-1マウスを用いた1週間の社会的敗北ストレスを与えた後に同種の個体(BL6J)に対する社会性を評価する。これまでに、コントロール群では同種の個体に対する社会性が減少したが、hM3Dq(薬理遺伝学)を用いてNpbwr1ニューロンを興奮させた群では社会性が回復する傾向を示す知見が得られている。今後はこの実験を進めるとともに、Npbwr1ニューロンが新規個体との接触によって興奮する神経メカニズムに焦点を当てる。狂犬病ウイルスを用いたこれまでの実験結果から、Npbwr1ニューロンに興奮性の入力を送る脳部位の特定および社会的接触時における活動動態を明らかにする。また、Npbwr1のリガンドであるNPB/NPWを産生するニューロンを操作することで、新規個体に対する社会行動にどのような影響を与えるのか検証する。
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