研究課題/領域番号 |
21H02697
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中井 彰 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60252516)
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研究分担者 |
瀧井 良祐 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00419558)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 熱ショック応答 / プロテオスタシス / 転写 / クロマチン / がん |
研究開始時の研究の概要 |
熱ショック応答を制御する転写因子HSF1は熱ショックタンパク質(HSP)などの発現を介してプロテオスタシス容量を調節する鍵因子であり、その異常は神経変性疾患やがんの病態進行と関連する。本研究では、新しいChIP-MS法を用いたHSF1転写複合体の同定と解析を基盤として、これまで不明であったHSP遺伝子のクロマチン弛緩と転写の調節機構を解明し、それがプロテオスタシス容量およびがんのモデルに与える効果について明らかにする。そして、これらの知見を基に、がんの新規治療ターゲットを提案する。
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研究実績の概要 |
本研究では、新しいChIP-MS法を用いたHSF1転写複合体の同定と解析を基盤として、HSP70遺伝子のクロマチン弛緩と転写の調節機構を解明する。これまでに、HSF1-TRRAP/TIP60複合体とp300がヒストンアセチル化を誘導することを明らかにした。本年度は、このアセチル化依存的なクロマチン構造の調節機構、およびその機構の腫瘍形成への効果を明らかにした。 ヒトHeLa細胞でのTRRAP、TRIM33、TRIM24の結合部位をChIP-seqにより解析し、それらがHSF1と同様に熱ストレス依存的に一群のHSP プロモーターに集積することを示した。TRIM33のHSP70プロモーターへの結合にはTRRAP/TIP60によるH3K18アセチル化、TRIM24の結合にはp300によるH3K23アセチル化が必要であった。これらの結合は、H2BK120のモノユビキチン化を導いてクロマチンを弛緩させた。さらに、これら一連の機構にはPLK1によるHSF1-S419リン酸化が必須であった。 HSF1とTRRAPをノックダウンした細胞あるいはHSF1-S419変異体へ置換した細胞を用意した。熱ストレス条件下での不溶性Ub化タンパク質の蓄積およびプロテオスタシス容量モニターのためのルシフェラーゼ活性を調べた。その結果、この新規機構がプロテオスタシス容量の維持に重要であることが分かった。 変異体HSF1-S419Aへの置換が細胞増殖に大きく影響するがん細胞株を調べ、メラノーマ細胞株への影響が著しく大きいことを見出した。このメラノーマ細胞のHSF1を変異体HSF1-S419変異体へ置換すると、マウスでの腫瘍形成がほとんど阻止された。以上の結果は、HSF1-TRRAP/TIP60複合体形成がメラノーマの腫瘍形成に必須であり、これを導くリン酸化がメラノーマの治療ターゲットとなることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱ショック応答の転写誘導過程におけるクロマチン調節機構を哺乳動物細胞を用いてはじめて解明した。リン酸化されたHSF1がTRRAP-TIP60複合体をリクルートすることで特定のヒストンアセチル化を促進した。そして、アセチル化依存的な新規のヒストンモノユビキチン化の機構を示した。これら一連の機構は、PLK1によるHSF1-S419のリン酸化を必要としており、このリン酸化を抑制することでヒトメラノーマ細胞の腫瘍形成が阻止されることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ChIP-MS法を用いて同定されたHSF1-CBFA2T2/PRDM6複合体よるクロマチン調節に焦点を絞り、HSF1とCBFA2T2及びPRDM6との相互作用、CBFA2T2のHSP70転写誘導における効果、CBFA2T2のHSP70プロモーターへのリクルートの解析などを明らかにする。さらに、CBFA2T2が転写を誘導する機構の解明をめざす。
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