研究課題
基盤研究(B)
私達の体や組織の表面は上皮細胞で覆われているが、上皮細胞は均一な細胞ではなく極性を持ち、その細胞膜は体の外側を向いた部分と体の内側の部分で性質を全く異にする。例えば腸での正常な消化吸収には腸上皮細胞が極性をもつことが必要である。また、肝臓の主な構成要素である肝細胞も類似の細胞極性を持っており、肝細胞の機能にも極性形成が必須である。本研究では、上皮細胞および肝細胞の極性形成の分子機構を明らかにする。
細胞極性を確立した後の上皮細胞を、低カルシウム濃度の培地などで培養すると細胞極性が失われるが、この時apical 膜は細胞内に取り込まれ「細胞内 apical 膜凝集体」が形成される。「細胞内 apical 膜凝集体」はvacuoleの有無により2種類に分類されるが、1つはvacuole をもつVACであり、もう1つは本研究により明らかにしたINAC(apical膜由来の細胞内顆粒と低分子量Gタンパク質Rab11aをもつ顆粒の2種類の顆粒の集合体)である。興味深いことに,2種類の「細胞内 apical 膜凝集体」の存在比は細胞種毎に異なり、大腸癌由来Caco-2細胞ではVACが、腎尿細管上皮細胞由来MDCK 細胞ではINACが主たるものであり、一方、乳腺癌由来MCF-7細胞では両者が同等に存在する。細胞の再極性化時には、VACはINAC に変換されるが,INACからはapical膜由来顆粒がRab11a陽性になって新たに出芽し、この新たな顆粒が『apical膜が再構成される場所』へとexocytosisされることになる。このexocytosisでは、Cdc42(低分子量Gタンパク質)の下流でCIP4、N-WASP、Par6がsequentialに作用することも明らかにした。一方、上皮細胞の再極性化時のapical膜の再構成には、同時にタイトジャンクション(TJ)が再構成されることが必要である。TJ形成には膜タンパク質クローディン(Cldn)のassemblyが必須であるが、Cldnのassemblyがどのように調節されているのか分かっていなかった。今回、TJ形成の制御因子として知られているPar3の新規な結合タンパク質としてIg 型膜タンパク質TMEM25を同定し、TMEM25がCldnのassemblyを阻害することでTJ形成を負に調節していることを明らかにした。更にPar3は、TMEM25に結合してTMEM25を抑制することで、TJ形成を促進することも示した。以上のように本研究では、Cdc42とPar3が協調して働くことで上皮細胞の再極性化が行われることを明らかにし、その詳細な分子機構を解明した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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