研究課題/領域番号 |
21H02777
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内藤 幹彦 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任教授 (00198011)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 融合タンパク質 / 脱ユビキチン化酵素 / ユビキチン / タンパク質分解 / がん |
研究開始時の研究の概要 |
染色体転座等によってがん細胞に生じた融合遺伝子は、がん特異的融合タンパク質をコードする。これらの融合タンパク質は通常は細胞内でタンパク質の品質管理機構によって認識され、ユビキチン修飾を受けた後プロテアソームで分解される。しかし多くのがん細胞でこれらの融合タンパク質が安定に発現することから、がん細胞にはこれらの融合タンパク質の分解を抑制する機構が存在すると考えられている。本研究では、がん細胞の増殖に重要ながん特異的融合タンパク質の分解を抑制する脱ユビキチン化酵素を同定し、がん細胞で融合タンパク質が安定に発現するメカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
慢性骨髄性白血病細胞に発現しているBCR-ABLと同様に細胞内の脱ユビキチン化酵素によって細胞内で安定に存在できるがん特異的融合タンパク質を探索するために、各種がん細胞を非特異的脱ユビキチン化酵素阻害剤PR619で処理し、融合タンパク質の発現量をウェスタンブロットで解析した。その結果、非小細胞肺がん細胞株H2228ではPR619処理によってEML4-ALKタンパク質量が約34%にまで減少した。同様に肺腺がん細胞LC-2/adではCCDC-RETタンパク質が4%に減少し、軟骨肉腫細胞A673ではEWS-FLI1タンパク質が約50%に減少した。一方で膀胱がん細胞RT-4ではFGFR-TACC3の発現量はそれほど変化が見られなかった。これらの結果から、少なくともいくつかのがん特異的融合タンパク質は脱ユビキチン化酵素によってがん細胞内で安定に存在できることが示唆された。 膀胱がん細胞RT-4で発現しているFGFR-TACC3の分解を誘導するために、KHS108(TACC3リガンド)とLCL161(IAPリガンド)をリンカーで繋いだキメラ化合物SNIPER(TACC3)-11を新規に開発した。SNIPER(TACC3)-11はFGFR3及びTACC3タンパク質の量には影響を与えず、融合タンパク質FGFR-TACC3を選択的に減少させる活性を示した。またSNIPER(TACC3)-11は、FGFR-TACC3を発現するRT-4細胞に対して選択的な増殖阻害活性を示した。これらの結果からSNIPER(TACC3)-11はFGFR-TACC3を発現するがん細胞に対する選択的な治療薬となる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BCR-ABL以外にも脱ユビキチン化酵素によってがん細胞内で安定に発現するがん特異的融合タンパク質が存在することがわかった。またFGFR-TACC3を分解するSNIPER(TACC3)-11がRT-4細胞に対して選択的な増殖阻害活性を示したことから、がん特異的融合タンパク質の分解を誘導する化合物が新しい抗がん剤として有望であることを示した。以上のことから、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
肺がん細胞に発現するEML4-ALK、CCDC-RET等のがん特異的融合タンパク質の安定な発現に関与する脱ユビキチン化酵素を同定し、その機能を明らかにする。また各種のがん特異的融合タンパク質を分解するSNIPERを開発し、がん特異的融合タンパク質の分解を誘導による新規医薬品リードの開発を目指す。
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