研究課題/領域番号 |
21H03000
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
江口 英利 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90542118)
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研究分担者 |
石井 秀始 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任教授(常勤) (10280736)
小林 省吾 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30452436)
野田 剛広 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (50528594)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 膵癌 / 集学的治療 / 個別化治療 |
研究開始時の研究の概要 |
膵癌はたとえ切除可能であっても予後が不良で、術前に化学療法や放射線療法を行う集学的治療が推奨されている。しかし、膵癌に対する化学療法・放射線療法の奏功率は高くなく、どの症例にも画一的な治療を術前に行うことはむしろ切除のチャンスを失う危険性をはらんでおり、術前療法の効果予測法の開発および効果を高めるための新規治療法の開発は急務である。本研究では、治療抵抗性に関わるmicroRNAとそのターゲット蛋白やパスウェイを同定し、術前化学療法・放射線療法の効果予測法を構築すること、さらには効果を増強するための新たな治療戦略を提案することを目的とする。
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研究実績の概要 |
膵癌の治療成績の向上のためには術前治療を含めた集学的治療が必須とされているが、現時点では術前治療の最適なレジメンや治療期間確立されておらず、全ての症例で画一的な治療が行われている。 術前治療の治療効果に関わるmicroRNAを同定し、治療効果の予測式を確立し、臨床応用を目指すこと、およびmicroRNAを介した治療耐性メカニズムを解明することを本研究の目的としている。2012~2017年に当科にてGemcitabineベースの術前治療および治癒切除を施行した浸潤性膵管癌20例を対象に、術前治療前の末梢血サンプルからexosomeを抽出し、マイクロアレイにてmicroRNA発現量を網羅的に測定した。その結果をNetwork解析にて解析したところ、治療効果良好群と不良群では異なるNetworkの形成を認めており、Clusterの中心を担うmicroRNAはそれぞれ異なっていることが明らかになった。機械学習により、治療効果良好群と非良好群を予測するために有用なmicroRNAをそれぞれ6種、3種抽出した。 上記マイクロアレイのデータの内、術前放射線治療施行症例のデータを用いて膵癌治療抵抗性に関わるmicroRNAの抽出を試みた。術前放射線治療施行症例10例を対象に発現量の差があるmicroRNAを抽出し、2種類(miR-6855-5p、miR-193a-5p)に絞り込むことができた。膵癌細胞株(Panc1, PSN1)にmiR-6855-5pを過剰発現させると、浸潤能,増殖能が亢進した。また、過剰発現株に放射線照射を加えてcolony formation assay、cell cycle assay、apoptosisの評価を行ったところ、過剰発現細胞株ではapoptosisの減少、G2/M期の細胞の減少を認め、miR-6855-5pが膵癌細胞の放射線耐性に関連することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では昨年度に、術前療法を行って良好な効果を認めた症例と効果不良の症例での末梢血中のmicroRNA発現の差を網羅的に解析し、術前療法に関与するmicroRNAの候補を同定し、文献的考察も加えて候補を4種に絞り込んだ。しかしそのmicroRNAを強制発現したり発現抑制したりしても、予想に反して薬剤感受性が変化しないもの、あるいは想定とは逆の感受性の変化を来すものなど様々であった。その結果を踏まえ、本年度はNetwork解析を用いて、さらに中心的役割を担うmicroRNAを新たに同定することができた。microRNAは多数の遺伝子を標的としているものであることから、microRNAの変化を網羅的に捉え、パスウェイとしてどのような方向性に変化しているかに着目すべきという発想に至り、Network解析を用いて生物学的に真に意味のある候補microRNAを見いだせたことから、研究の進捗は予定通りであると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では2012~2017年に当科にてGemcitabineベースの術前治療および治癒切除を施行した浸潤性膵管癌20例を用いて解析を行ってきているが、今後は上記20例とは別のコホート(68例)を用いて、術前治療前血清よりRNAを抽出し、術前治療開始前に治療効果を予測する効果予測式の作成および有用性の確認を行う予定である。
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