研究課題/領域番号 |
21H03044
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
溝口 昌弘 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (50380621)
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研究分担者 |
藤岡 寛 九州大学, 大学病院, 助教 (10914252)
秦 暢宏 大分大学, 医学部, 准教授 (10596034)
空閑 太亮 九州大学, 大学病院, 助教 (40759932)
三月田 祐平 九州大学, 大学病院, 助教 (00848640)
加藤 隆弘 九州大学, 医学研究院, 准教授 (70546465)
扇谷 昌宏 旭川医科大学, 医学部, 講師 (60636455)
中溝 玲 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80529800)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | グリオーマ / リキッドバイオプシー / エクソソーム / 免疫免疫環境 / ミクログリア / 免疫微小環境 / 直接誘導ミクログリア様細胞 / 免疫ゲノム |
研究開始時の研究の概要 |
がんゲノム医療時代において、グリオーマにおける最大の障壁が腫瘍のゲノム多様性と特有の微小免疫環境にある。グリオーマに対しても免疫療法が導入されつつあるが、脳という特殊な免疫環境下に発生する生物学的特性より他のがん種とは一線を画した独自の研究展開が求められる。本研究では、従来のctDNA、miRNA、エクソソームを含む細胞外小胞を対象としたリキッドバイオプシーに、新たに末梢血より直接誘導したミクログリア様細胞(iMG)の解析を追加することにより、免疫環境の多様性解明を目指す。また、エクソソームの特性に着目し、腫瘍微小環境形成機序の解明と新たな標的治療法開発へと繋げる。
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研究実績の概要 |
グリオーマ遺伝子解析:2021年WHO分類に対応した分子診断を44症例に継続した。新たにFGFR1に対しシークエンス、HRM法、MLPA法による遺伝子異常の検出が可能となった。 髄液cell-free(cf) DNAを用いたMLPA法によるコピー数解析:術前に採取した髄液を用いてコピー数変化をMLPA法で解析した。髄液cfDNA濃度(中央値0.213 ng/uL)はMLPA法の推奨濃度を著しく下回ったが、条件を探索し濃度0.15ng/uL以上かつ100 bp以上のDNA長で反応することを確認した。条件を満たす症例では全例MLPAの反応は成功し、EGFR増幅、Ch 7+/10-、PDGFRA、CDK4増幅、CDKN2A欠失は明確に同定され、感度はそれぞれ75%,88.9%,100%,100%,75%であり特異度は100%であった。 ヒト血液由来誘導ミクログリア様(iMG)細胞による評価:免疫微小環境のバイオマーカーとして有用であるiMG細胞における貪食能について検討した。グリオーマ25例、てんかん4例、髄膜種1例、GIST1例、そのうち11例に対し脳内ミクログリア(PMG)の貪食能も同時に解析した。同一患者でのPMG、iMGとの間には正の相関関係がみられ、機能面においてもiMGがPMGを反映している所見であった。また星細胞腫や膠芽腫は乏突起膠腫と比較して有意に貪食能が高かった。 CDKN2A/Bヘミ欠失の評価:IDH変異型グリオーマでCDKN2A/Bのホモ欠失は強力な予後不良因子であるが、ヘミ欠失の効果は不明である。コピー数解析によりホモ欠失、ヘミ欠失、正常の3群に分類しOS/PFSを評価するとastrocytoma ではヘミ欠失は正常と比較して有意なOSの短縮をみとめた。さらにp16とMTAPに対する免疫染色でヘミ欠失を診断可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グリオーマ手術症例に対し詳細な分子診断を確定したうえで、liquid biopsyの有用性の検証を継続することができた。髄液サンプルの微量核酸に対しデジタルPCRによる解析に加えMLPA法による検討が進んでいるが、エクソソーム分離、核酸抽出、解析に時間を要している。エクソソーム 分離、解析後に進める予定である、動物実験に関しても現時点でのモデル作成には至っていない。貪食能に着目したiMGの研究も、脳内ミクログリアの採取のため周囲脳組織を採取できる症例が限られており、そのサンプル収集に時間を要したが、今回の検討にて機能的側面においてもiMGのバイオマーカーとしての有用性がより裏付けられており、脳内の免疫微小環境のモニタリングとしての意義がさらに深まった。
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今後の研究の推進方策 |
グリオーマ症例に対し、WHO2021分類に対応できる分子診断アルゴリズムに基づき統合診断を継続する。さらなる症例蓄積を目指し九州大学関連施設におけるグリオーマ症例に対しても同様に解析ができる研究体制構築を継続する。Liquid biopsyに関しては安全性が確保できる症例を対象に、術前の髄液採取、解析を継続していく。頻用してきたtip-based digital PCRが生産終了となるため、後継となる機器の検討をおこなった。(1)Clarity Plus digital PCR、(2)QIAGEN QIAcuity Nanoplate 26K、(3)ThermoFisher Absolute Qの検証をおこなった。(1)はノイズ多く、偽陽性率高かった。更にpTERT検出困難。(2)は現行機で検出不能であった髄液cfDNAからH3F3A変異を検出可能だったがサンプル消費多く、pTERT検出困難。(3)は(2)より確実にH3F3Aの遺伝子変異が同定でき、サンプル使用量も少なく、pTERT分離の改善が見られた。デジタルPCR機器の変更により今後の解析精度向上を目指す。同様に培養液、動物モデル体液に分泌された核酸、エクソソーム に関する研究を展開する。動物モデルにおける原発巣と体液の解析により腫瘍の不均一性に関して解析を進め、最終的にはエクソソームを用いた、診断、治療法の開発へと繋げる。
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