研究課題/領域番号 |
21H03096
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
坪田 一男 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (40163878)
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研究分担者 |
栗原 俊英 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (50365342)
鳥居 秀成 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50445326)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2021年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 近視 / OPN5 / バイオレットライト / 非視覚型オプシン / 非視覚系オプシン / 非視覚オプシン / 眼軸長 |
研究開始時の研究の概要 |
近視はアジア圏において急速に増加し、近年の日本の小・中学校においても近視有病率は7-9割であることが報告されているが、その発症・進行における分子機序は明らかではない。 ヒヨコ・マウス・ヒトを対象とした研究でバイオレットライト(VL)に近視進行抑制効果があることを見出した先行研究の結果から近視進行を抑制する治療法開発に繋がる可能性があり重要な知見として注目されている。しかしながら、VLによる近視抑制作用の分子メカニズムは依然として完全に解明されていない。本研究では、「VLは網膜に存在する非視覚オプシンを刺激することによって脈絡膜肥厚を促し、近視進行を抑制する」の仮説を検証していく。
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研究実績の概要 |
近視誘導マウスモデルを用いて網膜神経節細胞局在の非視覚光受容体OPN5が360nm~400 nmの可視光のバイオレットライト(VL)を受容することにより、脈絡膜の厚さを保持することで近視進行を抑制することを解明した。また、VLの近視進行抑制する照射時間帯についても同定することができた。網膜神経細胞特異的にOpn5遺伝子を欠損させた遺伝子改変マウス(OPN5 ノックアウトマウス)を作成し、VLによる近視進行抑制効果が消失したことを検証した。そして、OPN5 によるVL照射が脈絡膜厚を制御した結果から脈絡膜厚の変化が眼軸長伸長(近視進行)に影響を与えることを示唆した。 OPN5 は視覚に寄与せず、網膜局所の概日リズムや眼内の血管発生、深部体温の調節などに関与していることに加え、本研究によって脈絡膜の厚さを保持し、近視抑制機能を持つことを確認した。 また、日本の6歳から12歳までの子供を対象とした2年間の二重盲検ランダム化臨床試験からVLを伝達しない従来の眼鏡(プラセボ眼鏡)よりVLを透過する眼鏡をかけたことで眼軸長の伸長を21.4%抑制した結果が得られた。プラセボ群とVL群の屋外時間に有意差はなかったことから近視の進行が眼鏡を透過するVLに眼軸長伸長抑制効果があることを示唆している。 本研究の成果からVLの作用機序と非視覚光受容体OPN5の生体機能を解明し、近視予防・治療戦略に抜本的な改善策を提示したといえる。引き続き、OPN5のVL受容とシグナル伝達の分子メカニズムや活性・制御ペプチドなどの探索を行い、非視覚光受容体による近視抑制、眼軸長伸長抑制機構を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網膜神経節細胞のOPN5によるVLの受容、それによる脈絡膜厚の維持と眼軸長の伸長抑制といった近視進行抑制の機序を解明した成果から当初の研究計画から順調に進展しているといえる。さらに、日本の児童を対象とする臨床試験においてもVLを透過する眼鏡を用いてVLの眼軸長の伸長を抑制する結果を得られた。これらの研究成果を基に、引き続き非視覚光受容体による近視抑制効果を解明する。
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今後の研究の推進方策 |
OPN5のVL受容による脈絡膜厚の維持に関する詳細なメカニズムは未だに不明である。そのため、網羅的遺伝子発現解析を行い、OPN5下流の細胞・組織レベルでの病態機序を解明する。本研究により網膜のOPN5が受容したVLが眼組織外側の強膜による組織リモデリングによって眼軸長の伸長を抑制する生体内の全体プロセスを理解することが期待できる。 そして、VL以外のOPN5を活性化、もしくは制御するリガンドをルシフェラーゼアッセイを用いて化合物ライブラリから探索する。OPN5下流伝達分子メガニズムや活性・制御リガンドの探索によって、VLのみならず、さらなる近視予防、治療剤、サプリメントの開発にもつながると期待する。
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