研究課題
基盤研究(B)
マウス骨格筋に含まれるPC分子種は、速筋では1-palmitoyl-2-docosahexaenoyl-sn-glycero-3-phosphocholine (PDPC)が約80%であるのに対し、遅筋ではPDPCが60%に低下する代わりに、1-stearoyl-2-docosahexaenoyl-sn-glycero-3-phosphocholine (SDPC)が30%含まれることを見出している。本研究課題では、遅筋に多く存在するSDPCが遅筋特性にどのように貢献しているのかを明らかにし、生体膜を構成するPCに結合している脂肪酸の種類が筋機能を調節するか否かを検証する。
リン脂質のアシル鎖は、筋線維タイプで異なるが、そのメカニズムや生理的役割は不明である。我々はマウス長趾伸筋(EDL)では、PC分子の大部分はパルミチン酸(16:0-PC)を含んでいたが、ヒラメ筋では、16:0-PCに加えて、27.9%のPC分子がステアリン酸(18:0-PC)を含んでいることを明らかにした。LPGAT1のノックアウトは、マウス骨格筋における18:0-PCと18:0-PEの量を減少させ、LPGAT1を介したPCとPEの筋線維特異的アシル鎖プロファイルの制御を説明した。骨格筋におけるLPGAT1発現の喪失は持久力に影響を及ぼすことが示唆された。
リン脂質は生体膜を構成する主要な脂質であるが、リン脂質に結合している脂肪酸種の制御に関する研究の歴史は浅く、組織レベルでの解明や組織の機能に及ぼす影響についての検討は遅れている。その理由として、脂質はゲノムに直接コードされないため解析が難しいことや、抗体を用いた検出が難しいことなどが考えられる。本研究課題では、骨格筋の筋線維タイプによるリン脂質分子種の相違を手がかりに、“生体を構成する脂質の質”と生体機能の関係性まで踏み込んだ解析を実施した。今回の研究成果は、栄養学における脂質の新たな意義を見出し、栄養学の新しい研究領域の開拓や新概念の提唱につながることが期待される。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 299 号: 7 ページ: 104848-104848
10.1016/j.jbc.2023.104848