研究課題/領域番号 |
21H04953
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐久間 一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50178597)
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研究分担者 |
富井 直輝 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00803602)
山崎 正俊 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (30627328)
中沢 一雄 森ノ宮医療大学, 医療技術学部, 教授 (50198058)
芦原 貴司 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80396259)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
2023年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2022年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2021年度: 20,800千円 (直接経費: 16,000千円、間接経費: 4,800千円)
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キーワード | 心房細動 / 生体制御・治療 / カテーテルアブレーション / 心臓旋回興奮波 / 光学マッピング / 渦巻き型旋回興奮波 |
研究開始時の研究の概要 |
我々が提案した位相分散解析手法は,心房細動や心室細動などの重篤な不整脈において発生する渦巻き型旋回興奮波(スパイラル・リエントリー:SW)に対して,そのダイナミクスを規定する複雑な伝導ブロックの時空間パターン解析に有効であることが明らかになりつつある。本研究では,心房細動治療時の多電極マッピングのデータ解析に対し位相分散解析を適用し,さらにそこから抽出されたSWのさまよい運動軌跡を基礎に,治療標的とすべき領域を定める手法の基礎を開発することを目的として,機械学習を含む計算科学・動物実験・臨床心臓電気生理学を組み合わせた融合研究を行う。
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研究実績の概要 |
1.多電極信号からの膜電位の再構成手法に関して、多電極計測と光学的計測の同時計測システムを用いて、ブタ心臓標本を用いたex-vivo実験を実施した。実際に臨床で用いられるカテーテルと同じ電極配置の電極信号から、コンピュータシミュレーションモデル上で学習された深層学習モデルによって光学計測と同等の精度での膜電位再構成が可能である事が確認された. 2.心房形状モデルに対して局所の心筋線維走向を手動で設定するためのUIを備えたツールを作成し、さらに設定した局所的な走向から適切な補間処理により、心房全体に心筋線維走向を設定可能なツールを作成した。また作成した三次元モデル内で、一定時間異常持続する渦巻き型旋回興奮波の再現が可能となった。 3.ヒトの心房細動時のデータ解析に関して、引き続き芦原らより提供されたデータの解析を行った.位相分散解析をExTRa Mappingに適用した場合、限られたマッピング分解能によって位相分散のアーチファクトが生じる問題に対して、空間フィルタリングによるアーチファクト解消を検討した. 4.電極信号からの膜電位再構成手法に対する位相分散解析の適用可能性を、実臨床カテーテル電極信号に対して検証した.ex-vivo実験と同様の複雑な旋回性興奮の膜電位映像が再構成されることを確認し、また上述の位相分散のアーチファクトが解消する事が明らかとなり、位相分散解析に基づく焼灼治療の最適化の可能性が示された. 5.2次元映像に対する位相分散解析をさらに発展させ、厚みのある心筋組織内で生じる異常興奮を電極信号から同定するための、電極信号に基づく3次元膜電位推定の初期検討を行った.シミュレーション検討の結果、心筋組織表面の電極信号から、従来は分別が困難であった3次元的な旋回興奮と組織内部での異常発火との分別ができる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である位相分散解析の基づく焼灼戦略の確立に向けて、既存のマッピング手法であるExTRaマッピングに対する位相分散解析の応用可能性を、実臨床データを用いて検証をすすめることができている.さらに、より精密な位相分散解析の実現に向けて開発された電極信号にもとづく膜電位推定手法に関して、ex-vivo実験によりその性能が光学マッピングに匹敵することを確認し、さらに実臨床データに対しても同手法が適用可能であること、再構成された映像に対する位相分散解析が可能であることを実証しつつあり、具体的な焼灼の最適化戦略の検討に着手している.さらに、分析された位相分散指標に基づいて、焼灼戦略の最適化を検討するために重要な役割を果たす、心筋線維走向等の不均一性を加味した心房細動数値シミュレーションモデルが確立されつつある.
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今後の研究の推進方策 |
1.多電極信号からの膜電位の再構成手法に関して、ブタ心臓標本を用いたex-vivo実験を継続して行う.近年普及が進む格子状のカテーテル配置に対しても本手法が適用可能であるかを、コンピュータシミュレーションモデル上で学習された深層学習モデルを用いて検討し、他の電極配置と同様に、光学計測と同等の精度での膜電位再構成が可能である事を確認する. 2.心房細動シミュレーションモデルに関して、心筋線維走向に加えて線維化等の組織の不均一性を加味した数値シミュレーションモデルを構築し、より実際の疾患に近い心房細動が再現できるかを検討する. 3.引き続き芦原らより提供されたExTRa Mappingに位相分散解析を適用し、焼灼戦略の最適化が可能であるかを検討する. 4.引き続き電極信号からの膜電位再構成手法の、実臨床データへの応用可能性、位相分散解析の適用可能性、および焼灼治療の最適化の可能性を検討する. 5.前年度で示された、電極信号にもとづく3次元的な旋回興奮の再構成手法を発展させ、非接触な電極信号からの心房の複雑表面での膜電位マッピング技術を検討する.
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