研究課題/領域番号 |
21H05005
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分C
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山村 和也 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (60240074)
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研究分担者 |
有馬 健太 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (10324807)
孫 栄硯 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (50963451)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
188,370千円 (直接経費: 144,900千円、間接経費: 43,470千円)
2024年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 34,450千円 (直接経費: 26,500千円、間接経費: 7,950千円)
2022年度: 57,330千円 (直接経費: 44,100千円、間接経費: 13,230千円)
2021年度: 62,140千円 (直接経費: 47,800千円、間接経費: 14,340千円)
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キーワード | プラズマ / 超精密加工 / ワイドギャップ半導体 / 難加工材料 / スラリーレス研磨 / パワー半導体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、精密高速ドライエッチングによる形状創成とプラズマ照射による表面改質を援用した高能率無歪研磨仕上げから構成される『プラズマナノ製造プロセス』を構築し、ワイドギャップ半導体やファインセラミックス等の硬脆機能材料に対してスラリーを用いない革新的な高能率完全無歪加工プロセスを実現するとともにその学理を探究する。
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研究実績の概要 |
単結晶GaNウエハ等の平坦化・平滑化を目的とした減圧型PAP装置を試作した。基板対向型プラズマ生成電極とビトリファイドボンド砥石が付けた研磨ヘッドをウエハの対面に左右配置し、ウエハと研磨ヘッドの回転・揺動によりウエハの全面研磨が実現できる。2022年度は、GaNウエハのPAP加工レートを律速する表面改質レートを向上させるため、改質に使用するプロセスガス種の選定を行った。最も酸化ポテンシャルが高いF、OH、Oラジカルを形成できるCF4、H2O、O2プラズマとGaNのエッチング加工によく使用されるH2プラズマを用いてGaNウエハのプラズマ改質実験を行った。改質前後ウエハ表面のXPS分析結果から改質膜の厚さを計算し、H2プラズマがGaNの表面改質に対して最も効果的であることを明らかにした。 単結晶ダイヤモンド基板のプラズマ援用研磨における加工特性を評価した。SCD(100)面の研磨レートおよび表面粗さの研磨圧力依存性において、143.8kPa以上の研磨圧力条件では<100>に沿った方向に格子状の表面構造が形成されることで表面粗さが悪化するが、100kPa以下の低研磨圧力条件では表面粗さが向上した。これは酸素ラジカルの吸着等によりダイヤモンド表面原子のバックボンドが弱体化してグラファイトへの相転移が生じやすくなる等の化学的な除去援用効果の比率が増加した結果、等方的な材料除去メカニズムが支配的になり表面粗さが向上したと考えられる。また、研磨後の表面を走査型カソードルミネッセンス測定により評価し、ダイヤモンド砥粒を用いたスカイフ研磨の場合には結晶欠陥に起因するBand-A発光がスクラッチに沿って見られるが、PAP面の場合にはその発光強度は極めて微弱であり、PAPによるダイヤモンドの研磨プロセスはダメージフリーであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画ではダイヤモンド基板の研磨は研究対象に入っていなかったが、脱炭素社会実現の切り札となる高性能パワーデバイス用材料およびパワーデバイスで発生した熱を高能率に抜熱するヒートスプレッダ用材料として有望であることから本研究における対象材料として追加した。プラズマ援用研磨による単結晶ダイヤモンド基板の平坦化と平滑化においては、本研究の開始前に20 mm角のモザイク基板に対して0.5 μm以下の平面度とSa 0.5 nm以下の表面粗さを得た実績があったが、研磨レートが低いことが課題であった。本課題を解決するため、2021年度にはファイバーレーザを用いたレーザトリミングにより低空間周波数のうねり成分を除去し、その後レーザ照射によりグラファイト化した層と高空間周波数の粗さ成分をプラズマ援用研磨により除去する複合加工プロセスを考案するとともにその実証を行い、トータルの研磨時間を1/6以下に短縮することに成功した。2022年度には大面積化と低コスト化が期待できる多結晶ダイヤモンド基板のプラズマ援用研磨プロセスの開発に取り組んだ。多結晶基板の場合、機械的な強度が異なることから面方位によって研磨レートが異なるため粒界段差が生じやすく表面粗さが減少しにくかったが、研磨プレートと多結晶ダイヤモンド基板の相対速度、ならびに研磨圧力を低減した条件を適用することによりSa 0.7 nmを達成した。
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今後の研究の推進方策 |
結晶成長後のバルクGaN結晶をスライスしたウエハに対して、まずダイヤ固定砥粒定盤を用いたラップ加工により平坦化と平滑化を行い、次にプラズマ援用研磨によりラップ加工時に残留した加工変質層とスクラッチを高速に除去する新規のGaNウエハ一貫製造プロセスを構築する。仕上げ工程の前段階として、ラップ加工ではGaNウエハの平坦化と表面粗さの初期低減を目的とする。加工レートとウエハ表面粗さに関わる加工パラメータ(砥粒径、砥石結合強度、回転数、水添加レート、加工荷重など)の最適化により加工レートを向上させる。最終仕上げ工程では、2022年度に得られた結果を踏まえて、GaNの表面改質に対して最も効果的であるH2プラズマを使用して、高レートプラズマ改質と軟質固定砥粒による改質層除去を複合し、従来のCMPを凌駕する研磨レートが得られるスラリーレスの低環境負荷プラズマ援用研磨プロセスを実現する。 多結晶ダイヤモンド基板のプラズマ援用研磨においてSa 0.7 nmの表面粗さが得られたが、常温接合を実現するためには0.1 nmオーダまで表面粗さを低減することが求められる。そのためには結晶粒ごとの面方位の違いによる研磨レートの差を低減する必要があり、そのために以下の項目を実施する。 (1)吸着種および吸着種密度と研磨レートの面方位依存性の相関評価 ダイヤモンド表面に吸着する反応種の違いにより、sp3構造からsp2構造に相転移する際の活性化エネルギーに関して、基板温度をパラメータとした研磨実験により評価する。吸着種としてはO, OH, H, Fを検討する。 (2)ダイヤモンド基板に吸着した反応種と表面再構成の相関評価 nc-AFMを用いて各種反応種を吸着させたダイヤモンド基板の表面再構成像を取得するとともに、第一原理分子動力学シミュレーションにより理論的な解析を行い、反応種の最適化を行う。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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