研究課題/領域番号 |
21H05041
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分G
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮脇 敦史 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (80251445)
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研究分担者 |
安藤 亮子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (10706170)
平野 雅彦 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 技師 (90601245)
陣崎 雅弘 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (80216259)
阪上ー沢野 朝子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (90462689)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
165,490千円 (直接経費: 127,300千円、間接経費: 38,190千円)
2024年度: 32,630千円 (直接経費: 25,100千円、間接経費: 7,530千円)
2023年度: 32,370千円 (直接経費: 24,900千円、間接経費: 7,470千円)
2022年度: 32,890千円 (直接経費: 25,300千円、間接経費: 7,590千円)
2021年度: 34,710千円 (直接経費: 26,700千円、間接経費: 8,010千円)
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キーワード | バイオイメージング技術 / 蛍光タンパク質 / brightness / photostability / 蛍光標識技術 / brightnes / 褪色 / 光安定性 / 細胞小器官 / 超解像顕微鏡 / 小胞体 / ミトコンドリア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、蛍光タンパク質におけるbrightness対photostabilityのトレードオフの打破を企図し、我々が作製した新規蛍光タンパク質をベースに、質的に明るくかつ褪色しない蛍光標識技術を開発することを目的とする。蛍光タンパク質の発現量を抑えたサンプルの調製、励起および照明を最適化した光学技術を総合し、生理的かつ定量的で再現性のあるSustainable fluorescence imagingに近づく技術の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
蛍光タンパク質の「明るさ」と「光安定性(褪色しにくさ)」の間にはトレードオフがあると考えられている。これまで多くの変異体が「明るさ」を追求して開発されてきたが、ほぼ全て「光安定性」を犠牲にした所産である。褪色は、対象を明るく標識して観る場合は心配ないが、導入蛍光分子の量に厳しい制限がある場合に深刻な問題となる。少コピー数の分子種をある時間連続して追跡する実験では、蛍光分子に高い「光安定性」が要求される。従来は量的にも「明るさ」偏重の傾向があり、導入蛍光タンパク質の発現制限の是非はあまり真剣に議論されてこなかった。昨今のゲノム編集技術を駆使することで、導入蛍光タンパク質の少コピー数発現制御が可能である。本研究は、「明るさ」対「光安定性」のトレードオフの実体を把握しながら、我々が最近に作製した新規蛍光タンパク質をベースに、質的に明るくかつ褪色しない蛍光標識技術を開発することを目的とする。研究代表者らは、タマクラゲから新規にクローニングした緑色蛍光タンパク質を元に改変を行い、優れた実用的な明るさ(モル吸光係数、蛍光量子収率、発色団形成スピード)を示しながら、ケーラー照明型蛍光顕微鏡観察(放射照度:~ 10 W/cm2)において全く褪色しない蛍光タンパク質StayGoldを作製することに成功した。StayGoldと超解像顕微鏡法(SIM)を組み合わせることにより、細胞小器官(ミトコンドリアおよび小胞体)の高速、長時間、高空間分解能の観察に成功した。たとえば、小胞体構造は高時空間分解能で観察すると振動運動していることが明らかにされているが、小胞体から細胞質へのカルシウムイオン放出時に小胞体の振動運動が抑制されるという現象を新たに発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
<StayGoldの多面的改変> StayGoldは、従来の蛍光タンパク質と比較して桁違いのphotostabilityを示すが、この蛍光タンパク質には、両末端(N末端およびC末端)が短く他のタンパク質との融合が難しい、2量体を形成するので分子や膜を標識しにくい、という問題がある。前者に関しては、数多くのN末端、C末端改変体を作製・スクリーニングすることにより、融合タンパク質作製において適当なアダプターを挿入する解決方法を確立した。後者に関しては、妥協的な解決策ではあるが、2個のStayGoldをタンデムに連結したtdStayGoldを作製し、単価の標識を可能にした。また抜本的な解決策として、StayGold単量体、すなわちmStayGoldの開発を鋭意行った。そのためにStayGoldの結晶構造解析を行い、2量体形成に関与するアミノ酸残基を明らかにした。 <StayGoldを利用した連続かつ持続的観察の実践> ゲノム編集技術を使って、内因性コンデンシンIのC末端に上記tdStayGoldが連結した細胞株を構築した。従来の標識でみられる過剰発現の問題はない状況で、M期において、核膜崩壊とともにコンデンシンIが凝集中の染色体に絡んでいく様子を詳細に観察することができた。観察にはスピニングディスク共焦点顕微鏡を使用した。また、tdStayGoldを使ってゴルジ体の膜を標識することに成功した。超解像仕様のスピニングディスク共焦点顕微鏡を使用し、ゴルジ体を出入する様々な膜構造を観察することができた。
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今後の研究の推進方策 |
mStayGoldの実用的開発を行う。すなわち、結晶構造で明らかになった2量体界面に変異を入れて単量体化を進めるのであるが、StayGoldのもともとの明るさと光安定性を保持するように努める。また単量体性および分散性を定量的に評価する方法の確立が喫緊の課題であり、一般的に使われるOSER法は信頼性に欠けるので、研究代表者独自のFluoppi法を活用する。これはタンパク質相互作用を液相分離の原理にもとづいて検出するものである。OSERが膜を場とするのに対し、Fluoppiは細胞質を場とするので、発現量過多によるアーティファクトが少ないと期待される。実用的なmStayGoldができれば、ミトコンドリア内膜やアクチンや微小管などの細胞骨格ネットワークを観察するのに活用する。StayGoldと各種蛍光顕微鏡との相性を体系的に調べる。とくにシングルビームの共焦点レーザー走査顕微鏡に関しては、スキャンの速度やレーザー強度などのパラメータを変えて、StayGoldの性能を上手く引き出す方法を見出す。現在、利用が広まりつつあるライトシート顕微鏡の側方シート状照明についてもStayGoldとの相性を調べる。また、完成したmStayGoldやtdStayGoldの配布体制を、理研BRCやAddgeneと連携しながら整備する。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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