研究課題/領域番号 |
21H05045
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分I
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小室 一成 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (30260483)
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研究分担者 |
油谷 浩幸 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (10202657)
中西 真 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40217774)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
189,280千円 (直接経費: 145,600千円、間接経費: 43,680千円)
2024年度: 36,790千円 (直接経費: 28,300千円、間接経費: 8,490千円)
2023年度: 36,790千円 (直接経費: 28,300千円、間接経費: 8,490千円)
2022年度: 36,790千円 (直接経費: 28,300千円、間接経費: 8,490千円)
2021年度: 42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
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キーワード | 心不全 / DNA損傷 / 老化 / シングルセル解析 / 臨床応用 |
研究開始時の研究の概要 |
あらゆる心臓疾患の終末像である心不全は世界中で多くの患者の命を奪っている。高血圧・心筋梗塞・心筋症・弁膜症など様々な病態の心臓疾患は最終的に心不全を発症するが、これまで長らくその機序は明らかでなかった。我々は心臓シングルセル解析によって、心筋細胞におけるDNA損傷およびその後のp53シグナル活性化が心不全の原因であることを突き止めた。そこで本研究は、(1)DNA損傷がなぜ生じるか?(2)DNA損傷・p53シグナルは心筋細胞をいかに異常に導くか?(3)異常になった細胞がいかに心不全を誘導するか?(4)これらの知見を基に心不全患者さんの病態を層別化できるか?、を解明することを目指している。
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研究実績の概要 |
Step 1. 心筋細胞でDNA損傷が生じる機序の解明:心筋DNA損傷の分子機序を探索し、NOX4遺伝子を介したミトコンドリアROS(Ko, Komuro et al. Nat Commun. 2022)、VDR遺伝子を介したビタミンD受容体シグナル(Ito, Komuro et al. submitted)、LMNA遺伝子を介した核ラミナ機能(Yamada, Komuro et al. Science Adv. 2023)、CSRP3遺伝子を介したメカノセンシング機構(Yamada, Komuro et al. Nat Cardiovasc Res. 2022)が同定された。 Step 2. DNA損傷・p53シグナルが心筋細胞機能を破綻させる機序の解明:心筋老化の過程でDNA損傷修復遺伝子の発現低下とNOX4を介したミトコンドリアROSが生じることがわかった(Ko, Komuro et al. Nat Commun. 2022)。シングルセルRNA-seqおよび空間的トランスクリプトーム解析によって、心筋梗塞後の梗塞巣における心筋細胞で老化形質を呈してサイトカイン分泌が亢進することで心不全を増悪させる機序を解明した(Ko, Komuro et al. Nat Commun. 2022; Yamada, Komuro et al. Nat Cardiovas Res. 2022)。 Step 3. 老化・不全化心筋が心不全を誘導する機序と心筋健常化リプログラミング機序の解明:代償性肥大心筋の特徴的転写因子を同定し、この遺伝子で不全心筋の機能回復を誘導できることを解明した。シングルセルRNA-seq解析を実施することによって、この遺伝子治療によって心筋サルコメア遺伝子およびミトコンドリア代謝遺伝子の発現が回復していることを見出した。 Step 4. 心不全患者における老化・不全化心筋の病的意義の解明:マルチオミックス統合解析によって、ヒト心不全組織における心筋DNA損傷(Dai, Komuro et al. submitted)、そこから分泌されるIGFBP7(Ko, Komuro et al. Nat Commun. 2022)、各種心不全病態における特徴的な分泌性因子、心房細動の原因であるERR-γ(Miyazawa, Komuro et al. Nat Genet. 2023)の同定に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初研究計画に基づいて、これまでに想定以上の研究の進展により大きな成果が得られて論文化も実現されており、既に学術的価値や関連分野への貢献が見出されているため。
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今後の研究の推進方策 |
Step 1. 心筋細胞でDNA損傷が生じる機序の解明:引き続き、DNA損傷に関連する遺伝子を網羅的に同定し、シングルセルRNA-seqにより分子機序を解析する。当初の予定を超えて、in vivo Perturb-seqのシステムをヒトiPS心筋細胞においても導入した系も確立するヒトにおいて多種多様な遺伝子の機能を網羅的に追求する。 Step 2. DNA損傷・p53シグナルが心筋細胞機能を破綻させる機序の解明:DNA損傷修復・エピゲノム・転写制御の関係性をエピゲノムワイドなマッピングにより明らかにする。心筋細胞だけでなく内皮細胞や免疫細胞の老化による病態への寄与についても解析する。 Step 3. 老化・不全化心筋が心不全を誘導する機序と心筋健常化リプログラミング機序の解明:心筋健常化リプログラミングによるエピゲノム変化を詳細に理解する。そしてその際に生じる心筋細胞の細胞内構造への影響をクライオ電子顕微鏡技術を用いて解析する。さらに空間的シングルセル解析技術を飛躍的に発展させ、シングルセル解像度で全遺伝子発現情報を取得できるプラットフォームを用いることによって、老化・不全化心筋とその周囲の細胞との関係性について詳細に理解を深める。 Step 4. 心不全患者における老化・不全化心筋の病的意義の解明:シングルセル解析の大規模化を進めるとともに空間的シングルセル解析技術によって個々の心不全病態を層別化するような空間的バイオマーカーの同定を試みる。さらにゲノム解析と組み合わせることによって、遺伝要因がいかに環境要因とオーバーラップすることによって老化・不全化心筋が生じるかの分子機序の解明に迫る。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A+: 研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる
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