研究実績の概要 |
説一切有部の伝承するサンスクリット文『雑阿含』を禅観経典との関連性で検討するうえで、降魔・成道・梵天勧請等の仏伝記事にみられる、精勤・信・智慧等の語は古層経典以来知られるが、これらは禅定に関わる要語であり、思想史を解明する大きな手掛かりとなっている。これは阿含の修行論を内容とする『雑阿含』「道品」各支に見られる禅定の系譜を体系的にまとめていく過程を示すものである。 また、禅定思想の現代的意義について、T.S.エリオットを取り上げ、「『荒地』第5章と『ブリハッド・アーラニカ・ウパニシャッド』第5章第2節の「雷のことば」」(T.S.Eliot Review, 34, 2024, pp.89-102))に公表した。 研究分担者は、「スコイエン写本のアシュヴァゴーシャ―荘厳経論(Sutralamkara)のクシャーナ貝葉断簡発見記―」(『印度学仏教学研究』第72巻第1号,2023年12月,pp.36-44)、「アシュヴァゴーシャのアートマン批判―第8三啓経「勝義空経」の梵文テキストと和訳―」(『佛教大学仏教学部論集』第108号,2024年3月,pp.1-22)、「アシュヴァゴーシャから鳩摩羅什へ─精進と懈怠の大智度論引用偈に基づいて─」(『佛教学セミナー』第118号,2023年12月,pp.1-22)、共著「老いと病と死と─第11三啓経『無常経』の梵文テキストと和訳─」(『佛教大学仏教学会紀要』第29号,2024年3月,pp.1-31)、共著 "Possible Fragments of Asvaghosa's Lost Sutralamkara from the "Manuscript Cave" in Sorcuq", (WIENER STUDIEN ZUR TIBETOLOGIE UND BUDDHISMUSKUNDE, 104.1, 2023, pp.111-130)により、禅観経典類との関連も明らかにした。
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