研究課題/領域番号 |
21K00293
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
五味渕 典嗣 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10433707)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 戦争記憶 / 日中戦争 / アジア太平洋戦争 / 戦争文学・戦記文学 / 戦争映画 / 東アジア / アダプテーション / ナラティブ / 歴史実践 / ナショナリズム / 冷戦体制 / 比較思想史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、日本社会が半ば強迫的に繰り返してきた「なぜ日本は戦争に負けたのか」を問う語りに注目する。こうした語りは、一方では日本近代やアジア太平洋戦争に対する反省を踏まえつつ、同時代の日本社会の課題を戦時期からの連続性において捉える視座を提示した。しかし他方では、「敗北」の原因を戦時期の逸脱として位置づけていくことで、戦前・戦時期の帝国主義的な思考や発想を結果的に温存することにも貢献したのではないか。 本研究では、敗戦後の日本語の言説の場で反復されてきた「敗北の語り」を文学研究の手法で検討することで、日本の「敗北」を位置づける枠組みと戦後日本のナショナリズムの相剋・相関について考究する。
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研究成果の概要 |
本研究では、主にアジア太平洋戦争末期から1970年代にかけての文学・映画・ノンフィクション作品を対象に、戦争における日本国家の敗北と、新しい時代としての「戦後」の始まりを語る枠組みの生成と変化について検討した。その結果、(1)空襲下の日本社会に拡散した人種主義的な不安を語る言説が戦後の国民主義的なナショナリズムの土台となったこと、(2)メロドラマやミステリなどの大衆的なジャンルにおいて、戦後日本の空間的境界を上書きする物語が多く生産されていたことを明らかにした。加えて、(3)日本敗戦を昭和天皇と早期和平派の政治家の「合作」と位置づける認識の枠組みが1960年代に定着していたことを確認した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
(1)日本近現代文学研究の手法を用いて、広く日本社会の「戦争の語り」の枠組みの生成過程を歴史的に検証したこと。 (2)日本語のコンテクストの中で、帝国日本から戦後日本への屈折と断絶をはらんだ移行がどのように表現されたかを辿り直すことで、戦後日本の脱帝国化・脱植民地化が不十分に終わっていくプロセスを内在的に検討したこと。 (3)同時代の資料を活用して、世界史的な転換点の一つである「1945年」を日本社会がいかに経験したかを捉え返すことで、同じ時間を生きた人々、とくに帝国日本の旧植民地・支配地域をはじめとする諸地域の人々の経験と比較する視座を準備したこと。
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