研究課題/領域番号 |
21K01482
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
土井 康裕 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (70508522)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 外国人労働者 / 数量的空間的一般均衡モデル / 政府統計 / 地域経済 / spatial GE model / reallocation of workers / high-education workers / 産業構造 / 労働市場 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、日本政府による外国人労働者受入拡大政策が、地域や産業毎の外国人雇用にどのような影響があるのかを詳細に把握し、外国人労働者の流入が日本の産業構造や労働市場に与える効果について実証分析を行う。具体的には、二つの方法で分析を行う。一つは、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」や総務省の「労働力調査」等ミクロデータを、自己選別的枠組みを包含する空間一般均衡理論モデルによって推計する実証分析である。二つ目は、外国人労働者や受入企業、並びに将来日本での就職を希望している留学生等への聞き取り調査やアンケート調査を実施することによるケーススタディを中心とした分析である。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、日本政府による外国人労働者受入拡大政策が、地域や産業毎の外国人雇用にどのような影響があるのかを詳細に把握し、外国人労働者の流入が日本の産業構造や労働市場に与える効果について実証分析を行う。 具体的には、二つの方法で分析を行う。一つは、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」や総務省の「労働力調査」等ミクロデータを、自己選別的枠組みを包含する空間一般均衡理論モデルによって推計する実証分析である。特に、Royの自己選別枠組みをモデルの中に組み込むことで、外国人労働者の受け入れにより、労働者の地域・職業間での再配分がどのように起こり、結果として地域の産業構造や労働市場にどのような効果をもたらすのか、実証分析を行う。二つ目は、外国人労働者や受入企業、並びに将来日本での就職を希望している留学生等への聞き取り調査やアンケート調査を実施することによるケーススタディを中心とした分析である。 本研究の目的は以下の3点である:(1)Royの自己選別枠組みとタスク・モデルを統合した数量的空間一般均衡モデルを構築する。(2)政府統計ミクロデータおよび日本版O-NET等のデータを活用し、地域・職業/タスク・産業についての詳細な分析単位でモデルを計量し、外国人労働者の受け入れ政策による地域経済への効果を定量的に反実仮想分析する。(3)さらに複数の政府統計ミクロデータを結合させることで外国人材受け入れの実態を詳細に把握する。その上で、構造分析の結果も踏まえつつ、外国人雇用政策へのインプリケーションを得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外国人労働受け入れの効果について数量的空間的一般均衡モデルによる構造分析を試みてきた。Royの自己選別枠組みをモデルの中に組み込むことで、外国人労働者の受け入れにより、労働者の地域・職業間での再配置が起こり、結果として地域の産業構造や労働市場にどのような効果がもたらされるかを分析するための理論枠組みを構築した。さらに政府統計ミクロデータの利用認可を受け、総務省・就業構造基本調査と厚生労働省・賃金構造基本統計調査を中心としたミクロデータ等を用いてモデルのパラメータをカリブレーションし、外国人労働受け入れの経済効果を反実仮想として分析した。 他方でこれまでの分析を通じ、本研究テーマを追究する上で重要となる「新たな課題」についても明らかとなった。2022年度に取り組んだ課題の一つは、モデルにおける「職業」を統計上の職業分類ではなく、各職業に求められる「タスク」によって分類することの重要性である。例えば同じ「生産工程従事職」の中にも、定型的・非定型的なタスクが存在する。仮に外国人と日本人が異なるタスクに従事しているとすれば、「生産工程従事者」を一括りにすることは、外国人と日本人労働者の間の重要な異質性(例:タスク間の比較優位)を見落とすことになり、外国人受け入れの一般均衡効果を正しく評価できない可能性がある。また外国人労働受け入れを巡る議論の中でもしばしば言及されるロボットや人工知能等の台頭との関係について検討する上でも、職業ではなくタスクと資本の間の代替・補完関係を考えることが自然と考えられる。モデルを拡張し労働者と資本の代替を組み込んだ分析を進める上でもタスクに基づいたモデル構築が重要であることが明確となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究目標は、外国人労働者受け入れによる各地域経済への効果に関する構造分析である。モデルでは、在留資格や教育水準に基づき労働者をタイプ分けし、Royの自己選別枠組みを確率的に定式化することで、個々の労働者が就労地、職業/タスクを内生的に決定するメカニズムを組み込むことである。同時に、このモデルを基盤とした政府統計を使った実証分析の結果を発表することである。 もう一つの目標は、外国人の雇用実態に関する政府統計ミクロデータによる詳細な実態把握である。統計法33条に基づき以下の政府統計ミクロデータを利用する予定である:厚生労働省・賃金構造基本統計調査、毎月勤労統計調査;総務省・国勢調査、就業構造基調査、経済センサス、労働力調査;経済産業省・企業活動基本調査、海外事業活動基本調査、工業統計;法務省・出入国管理統計、在留外国人統計(級登録外国人統計)。共通事業所コードをキーとした厚労省・賃構と経産省・企活の接合を試み、外国人雇用および外国人労働者を受け入れる企業の特色(企業規模や生産性、輸出入の有無等)を理解する。 以上の分析から得られる結果は、日本の従来の外国人雇用政策を定量的に評価するだけでなく、今後の政策設計においても重要な知見を与える含意をもたらすものと考えられる。
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