研究課題/領域番号 |
21K01594
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石原 俊時 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (70221760)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | スウェーデン・モデル / 職業教育 / 企業内職業教育制度 / 団体協約 / 高度成長期 / 職業学校制度 / 信認の制約 / グスタフ・カッセル / 比較制度分析 / 北欧 / スウェーデン / 高度成長 / 福祉国家 / 労使関係 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、戦後スウェーデンの企業内職業教育制度を労使中央組織間による集権的協約体制の一環として位置づけ、その動態を国民経済・産業・企業の3つのレベルの相互関係の中で把握していこうとする研究である。またこの作業を通じて、企業内教育制度が、スウェーデンでの戦後の高度成長を熟練労働力養成の面から如何に支えたのか、さらに早期に行き詰まりを見せたのは何故かという問題を検討することで、スウェーデン・モデルの一環としての職業教育制度の歴史的意義と限界について考察することとする。
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研究実績の概要 |
2022年12月10日に開催された名古屋教育大学職業教育研究センターの開設記念シンポジウムで、「スウェーデン・モデルと職業教育ー「信用の制約」から見た歴史的展開」と題した講演を行った。これは、戦間期から第二次世界大戦期のスウェーデンで、企業内職業教育活動が労使の中央組織間の集権的団体協約システムの枠組の下で展開することとなった経緯と、それが実際に運営される中でうまく機能せず、結局職業教育の主要部分を国家が監督し整備する職業学校にゆだねていくプロセスの概要を、労使それぞれの職業教育制度に対する信認確立の困難という観点から把握することを試みたものである。つまり本報告は、第二次世界大戦後の集権的労使交渉システムの枠組の下で展開した企業内教育制度の意義と限界を解明するというこの研究の見通しを示したものと位置づけられる。この報告は、間もなく刊行される予定である同センター紀要『職業教育学の探究』創刊号に掲載されることとなっている。 また、グスタフ・カッセル『社会政策』の翻訳(蒼天社出版)を刊行した。この書物は、ノルウェーとの同君連合が解体しつつあり、帝国主義列強の脅威を直接感じるに至ったスウェーデンが、帝国主義列強の間にあって生き残るためには、階級対立を克服し、国家が労働組合や協同組合など社会を組織化していくことを通じて国民的な生産力を増進していくことが必要であると主張したものである。そこでは労使間の団体協約体制を通じた賃金水準の上昇および平準化、さらには積極的労働市場政策を彷彿とさせる政策提言がなされている。この著作は、スウェーデン・モデルの思想的淵源の一つとして位置づけられるのであり、本研究が対象とする職業教育制度が展開した歴史的背景を理解するうえでも重要であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、2021年度に現地(ストックホルム)で史料収集の作業を行えなかったことに加え、2022年8月と2023年3月の現地文書館での史料収集作業で、産業レベルでの史料が予想以上に存在することがわかり、それを調査し内容を精査することに時間を取られているため、当初想定していたより、特に産業レベルでの史料の分析に遅れが生じている。それにより問題の広がりを改めて認識できたとはいえ、産業レベルの分析の遅れは、それと中央レベルや企業レベルとの相互関係の解明作業にも影響を及ぼしている。それゆえ、総じて予定よりも遅れが生じていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
現在コロナ禍がひとまず収まっているため、現地文書館での史料収集が可能となり、書物の購入も支障なくできるようになり、文献複写の依頼もようやくスムーズに対応されるようになっている。それゆえ、2023年8月と2024年3月には、再度ストックホルム文書館での史料収集を行い、遅れていた分を取り戻すつもりである。こうした史料収集作業に基づき、23年度前半には高度成長期の企業及び産業レベルでの職業教育の展開を描く論考を執筆し、年度後半には労使中央組織が設立した職業教育問題検討委員会(Arbetsmarknadens Yrkesrad)に焦点を置き、企業・産業・中央レベルという職業教育制度の三層構造の成立とその歴史的動態の特質を明らかにする論考の執筆にとりかかるつもりでいる。そうなれば、ほぼ期間内で研究課題の完遂の目星をつけられると思われる。
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