研究課題/領域番号 |
21K01855
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
古村 学 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (10547003)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 世界自然遺産 / 自然保護 / 知床 / 小笠原諸島 / 西表島 / エコツーリズム / 野生動物 / 日常生活 / 野生生物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、地域社会に暮らす人びとにとっての世界自然遺産の意味を明らかにすることにある。対象地域は、知床、小笠原諸島、西表島である。これらの地域の人びとは、世界遺産をどのようにとらえているのか、どのような行動をとっているのか。それはなぜなのか、これらを地域の日常生活から考察する。とくに、①世界遺産登録後の社会条件の変化、そこから生まれる住民の意識、行動、自然観などの変化に着目し、②さらに、登録時期の異なる複数地域の比較検討をおこなうことにより、その変化の意味を明確化させる。そのうえで、地域社会にとって、より望ましい世界自然遺産のあり方、さらには、自然保護の在りかたを模索していきたい。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域社会に暮らす人びとにとっての世界自然遺産の意味を明らかにすることにある。対象地域は、知床、小笠原諸島、西表島である。これらの地域の人びとは、世界遺産をどのようにとらえているのか、どのような行動をとっているのか。それはなぜなのか、これらを地域の日常生活から考察する。とくに、①世界遺産登録後の社会条件の変化、そこから生まれる住民の意識、行動、自然観などの変化に着目し、②さらに、登録時期も、社会条件も異なる複数地域の比較検討をおこなうことにより、その変化の意味を明確化させる。そのうえで、地域社会にとって、より望ましい世界自然遺産のあり方、さらには、自然保護の在りかたを模索していきたい。 2022(令和4年)度の到達目標は、前年度に設定した【傾向と問題点の明確化】に従い、【現地調査】に着手することである。なお、【現地調査】の着手は、2021年度から行う予定であったが、新型コロナ蔓延のため、今年度からの着手となった。既存研究の精査から明らかになったことは、既存研究では、対象となる遺産の保護の側面が強く、その地域に生き、暮らす人びとがおざなりにされているということである。そのため、本研究では、これらの人びとの視点から世界自然遺産を読み直す方向性をとることとし、これまでの研究データを整理し、変化に留意しながら【現地調査】をおこなった。 【現地調査】は、8月から9月にかけて、および3月に、2021年7月に世界自然遺産登録された西表島にておこなった。夏の調査はコロナの影響により、参与観察、聞き取り調査などを制限せざるを得ないものであったが、ある程度の研究データを得ることができた。また、その後の春の調査にて補完することにより、十分な成果とすることができた。現在、成果報告の準備中である。また、この調査で得られた成果は、ほかの対象地域での調査にも有益なものとなろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年(令和5年)度の到達目標は、【傾向と問題点の明確化】により設定した方向性により、【現地調査】をおこなうことである。今年度は8月から9月、および3月にかけ西表島にておこなった。とくに、世界遺産に登録され1年と間もないため、登録後の変化、地域社会への影響、そのことの地域社会にとっての意味にかんしてのデータを、聞き取り調査、参与観察などにより収集した。 西表島では、登録以前から、世界自然遺産登録に伴うオーバー・ツーリズムが懸念されていた。世界遺産だからという理由で来る観光客の増加、それにともなう地域生活への弊害、さらに観光資源である自然の過剰利用による負荷も危惧されていた。そのため、島民の大半は登録することに反対の立場であった。 この点に関しては、新型コロナの影響により、まだ顕在化していない。2022年の夏から観光客は戻りつつあるが、以前の状態にも達していないというのが現状である。そのため、住民生活への影響はすくない。また、町役場や環境省を中心として、受け入れ態勢の整備も進められている。しかし、弊害を懸念する声は根づよく、世界遺産登録への不信感が残っている。登録に強く反対しているわけではないが、しかたなく受け入れているというのが島の人びとの現状である。 これとは別に、世界自然遺産登録を契機に、大規模外部資本による影響も懸念されている。西表におけるカヌーなどのアクティビティ業者は小規模なものが大半であったが、登録前より大規模外部資本による業者が参入しており、その影響の拡大を懸念する声が広く聞かれた。また、登録を契機としたホテルなどの大規模開発による自然破壊も懸念されている。 この調査で得られた成果は、現地での勉強会などの意見交換などで内容を深化させてきた。また、今後のほかの調査地での研究を進めるうえでも有効であり、十分な成果を上げることができたといえるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
2023(令和4)年度の研究到達目標は、【現地調査】を続けることである。当初の予定とは変更し、調査期間を延長することにより、8月から3月にかけて3か所全地域での調査をおこなう予定である。 なお、これらの調査では、2021年度におこなった【傾向と問題点の明確化】で確定した方向性にもとづき遂行する。これまでおこなってきたエコツーリズム、保全活動と地域社会との関係などの研究で蓄積してきたデータは、経年変化に留意しつつ、調査地ごとの比較検討のうえ、整理済みである。これに、2022年度の西表島での現地調査で得られた知見を加え、比較検討のうえ、2023年度の調査の方向性を7月までには確定したい。 【現地調査】にかんしては、新型コロナのため2021年度におこなうことができなかったため、遅れていることが否定できない。そこで、本年度は、所属研究機関の研究専念制度を利用し、8月から3月までの期間、現地調査をおこなう予定である。なお、これらの調査地では、これまで長期にわたり調査をおこなってきたため、すでに関係性が築かれており、円滑な調査が期待できる。 現地調査では、これまで通り、参与観察、聞き取り調査を中心として、データを取集していく。登録から知床は18年、小笠原は12年、地域住民の生活の中にどのように世界自然遺産が埋め込まれているのか、いないのか、経年変化および新型コロナ後の変化などに留意しながら現地調査を進めていくつもりである。 また、所属学会や研究会など学問界にとどまらず、現地調査のさいには、現地での講演会、勉強会などの【成果発表】を可能な限りおこなっていく予定である。これは、研究成果を現地にフィード・バックする意味もあるが、それ以上に、そこでの反応を取り込むことにより、より現地社会からの視点にもとづいた研究へと発展させるという目的も持っている。
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