研究課題/領域番号 |
21K02156
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 藤女子大学 |
研究代表者 |
岡崎 由佳子 藤女子大学, 人間生活学部, 教授 (80433415)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 大腸ALP / プレバイオティクス / 大腸内環境 / 脂質栄養 / ラット |
研究開始時の研究の概要 |
腸内環境と健康は密接に関与することが知られてきており,その機能調節に関して食生活の面からも幅広く研究されている。我々は,腸内環境改善作用が知られている難消化性オリゴ糖(プレバイオティクス)類が共通して,近年抗炎症作用やメタボリックシンドローム抑制作用が指摘されているアルカリホスファターゼ(ALP)活性を大腸特異的に誘導することを発見するとともに,この作用は摂取脂肪の種類と量により異なる可能性を示してきた。本研究では,プレバイオティクスによる大腸ALP活性増加をはじめとする腸内環境調節作用に,脂質栄養が与える影響を詳細に検討し,両者の関連性に新規知見を見出すことを目的としている。
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研究実績の概要 |
1.油脂の脂肪酸組成の違いがプレバイオティクスによる大腸ALP活性を含む大腸内環境調節作用に及ぼす影響を検討した。前年度までの研究においてオリゴ糖摂取による大腸ALP活性と遺伝子発現への影響は,ω-6系多価不飽和脂肪酸含量の高い綿実油食よりも飽和脂肪酸含量の高い牛脂食で顕著であることが示された。そこで今年度はω-3系多価不飽和脂肪酸含量の高い食用油の影響を検討した。実験動物として4週齢のSD系雄ラットを用いた。実験食として飽和脂肪酸含量の高い30%パーム油食およびω-3系多価不飽和脂肪酸含量の高い30%亜麻仁油食を用い,それぞれの飼料に4%フルクトオリゴ糖(FOS)を添加した4群を設け,14日間飼育した。その結果,亜麻仁油食はパーム油食と同様にFOS摂取による大腸ALP活性,Alpi-1の発現,糞中Mucin含量およびLactobacillus spp.の割合を有意に増加させ,ω-6系多価不飽和脂肪酸含量の高い食用油摂取の場合とは異なる影響を示すことが認められた。
2.FOS摂取による腸管Mucin含量と盲腸内有機酸含量への影響が,大腸ALP活性と同様に20%の脂肪添加量で最も高まるか否かについて検討した。4週齢のSD系雄ラットを用い,7%ラード食を基本食とし,低脂肪食として2.5%,高脂肪食として20%および40%ラード食群を設け,各飼料に4%FOSを添加し14日間飼育した。その結果,FOS摂取による糞中Mucin含量および盲腸内n-酪酸含量への影響は,大腸ALP活性の場合と同様に20%ラード添加食で顕著であることが示された。これらの結果より,オリゴ糖の大腸内での機能が最大限に発揮されるには,通常より多くの脂肪量を要する可能性が推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究計画に沿って,脂質栄養がプレバイオティクスの大腸ALPを含む腸内環境調節作用に及ぼす影響について検討することができたため。当該年度の研究において,フルクトオリゴ糖(FOS)摂取による大腸ALP活性誘導と遺伝子発現の影響は,飽和脂肪酸含量の高いパーム油に加え,ω-3系多価不飽和脂肪酸の高い亜麻仁油を摂取した場合にも高まることが示された。また,FOS摂取によるMucin含量増加作用や腸内細菌類調節作用への影響についても,ALP活性の場合と同様に亜麻仁油食で高まることが示された。さらにオリゴ糖の大腸内での機能が最大限に発揮されるには,通常より多くの脂肪量を要する可能性が推定された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,プレバイオティクスによる大腸ALPを含む腸内環境調節作用に及ぼす脂質栄養の影響について検討する。前年度までの研究において,ω-6系多価不飽和脂肪酸含量の高い綿実油食と比較して,飽和脂肪酸含量の多い牛脂食とパーム油食では,オリゴ糖摂取による大腸ALP活性,ALP遺伝子発現,腸内細菌類およびMucin含量への影響が高まり,さらにω-3系多価不飽和脂肪酸の高い亜麻仁油食でも同様に高まることが明らかとなった。今年度は食餌脂肪としてω-3系多価不飽和脂肪酸のイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸を多く含む魚油を用いた検討を行う。また,飽和脂肪酸含量の高い油脂とω-6系多価不飽和脂肪酸含量の高い油を配合した飼料を用いた場合の,オリゴ糖摂取ラットの大腸ALPをはじめとする大腸内環境への影響についても検討を行う。SD系雄ラットに,実験1では実験食としてイワシ油およびマグロ油食を用い,実験2では飽和脂肪酸含量の高いラード食,ω-6系多価不飽和脂肪酸含量の高いブドウ種子油食,およびこれらの配合油食を用いる。それぞれの飼料にオリゴ糖を添加して数週間飼育する。大腸ALP活性および遺伝子発現,腸管Mucin含量,腸内細菌類,腸内発酵産物の有機酸含量の解析を行い,プレバイオティクスの大腸内環境への影響と摂取脂質の脂肪酸組成との関連性を検討する。また,腸管β-グルクロニダーゼ活性への影響についても併せて検討する。
前年度までの研究で,プレバイオティクス摂取による大腸内環境への影響は脂肪の添加レベルによって異なり,20%の添加量で顕著であることが示された。今年度は,20%脂肪食の条件下でプレバイオティクスの添加レベルを設け,大腸ALPをはじめとする腸内環境関連因子への影響を検討する。
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