研究課題/領域番号 |
21K02843
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 貴 広島工業大学, 工学部, 教授 (40289260)
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研究分担者 |
松本 慎平 広島工業大学, 情報学部, 教授 (30455183)
林 壮一 福岡大学, 理学部, 准教授 (90804922)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 視覚障がい者 / 盲児童生徒 / 物理教育 / 理科教育 / 物理学習支援 / 力覚デバイス / 視覚障がい者の学習支援 / マルチモーダル図書作成 / 力覚デバイスによる物理学習 / 物理現像の可視化と可聴化 |
研究開始時の研究の概要 |
視覚に障がいをもつ中学,高校および大学の学習者が,触覚と聴覚をとおして効果的に物理が学べるような,マルチモーダルな学習教材を作成する。視覚障がい者の物理学習において最も大きなハンディは,動きを伴う自然事象のイメージを形成することであろう。しかしながら,物理の理解にはこのようなイメージが基軸になることも事実である。 そこで,盲の学習者に動きを伴う事象のイメージを芽生えさせ,イメージと言葉,数式を三位一体として物理の本質を理解させられるよう,ブラウザ上で読むテキストに加えて,随所で可触化,可聴化された事象を仮想体験できるアプリケーションを組み込んだ教材を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,自然事象の視覚的経験がない,またはほとんどない視覚障がい者でも自然事象のイメージを形成しながら物理をスムーズに学習できるマルチモーダルな学習支援教材を作成することである。そのために,この教材を二つのコンテンツから構成することを計画した。ひとつは,大学初年度レベルの物理学全版(力学,電磁気,熱,波動)をカバーする通常の参考書的なテキストだが,数式を含めてすべて音声で聴けるようにする。また,図は通常の画像とともに,点図(紙の凹凸で描かれた図)の出力ファイルを作成する。もうひとつのコンテンツは,可触化,可聴化した物理事象を力覚デバイス等を使用してありのままに仮想実験させるアプリケーションである。このアプリケーションはテキストの随所に組み込み,視覚では観察できないさまざまな物理事象を触覚と聴覚によってありのままに知覚させ,テキストで学んだ内容をその場で確認できるようにする。 令和4年度は,令和3度に続けてテキストの作成を進めた。令和3年度に仕上げた草案を本研究の目的にそぐうよう,視覚的経験がない読者にもイメージできる表現を選びながら推敲を重ねている。また,併せて,仮想実験用のアプリケーションの検討も始めている。仮想実験させる事象をいくつか選定し,どのような機能を実装すればそれぞれの事象の物理的本質を理解させることができるかを吟味して,アプリケーション開発を業者に依頼した。その結果,力覚デバイスを制御する新たなソフトウェアを開発する必要があることが判明し,その作成を依頼した。そのため,今年度は仮想実験用アプリの作成は行なえなかったが,その制御用ソフトウェアを使えば,どのようなアプリケーションにも対応できるようになり,今後のアプリケーション開発の可能性が広がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は物理学の全分野に渡ってテキストの草稿を仕上げたが,その段階では,中学生や高校生には難しい数式を含み,なおかつ自然事象の基本的なイメージをもっていることを前提とするような説明にとどまっていた。そこで,令和4年度は,本研究の目的に沿うように難しい数式は極力避け,言葉を駆使して自然事象のイメージ形成を一からできるように推敲を行なったが,この作業は予想以上に時間を要した。そのため,当初の予定では令和4年度の段階でテキストの8割程度を完成させることを目標としていたが,現時点では5割程度に留まっている。 また,仮想実験用のアプリケーションは,令和4年度に3,4個を業者に依頼する予定だった。そこで,仮想実験をさせるアプリケーションを選定し,それぞれの機能をデザインして業者に依頼したところ,それらの機能を実装し,力覚デバイスで動作させるためには,新たな制御ソフトウェアが必要だとの報告を受けた。残念ながら,今年度の予算額ではソフトウェアの開発費用しか拈出できず,アプリケーションの作成を依頼することはできなかった。上記のような理由で,現状は当初の計画よりも多少遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度(最終年度)は研究課題を達成させなければならない。まず,視覚的経験がない中学・高校生や大学生にも自然事象のイメージを形成させ,物理を極力言葉とイメージで理解できるようなテキストを完成させる。令和4年度までに力学はほぼ完成し,電磁気学の途中までは進んでいる。この段階で,テキストとしては全体の5割程度が終了している。今後は熱力学や波動についても完成させる。一方,もうひとつのコンテンツである仮想実験用アプリケーションも作成していかなければならないが,予算の残額では高々ふたつのアプリケーションしか業者に依頼することはできないと見積もっている。そこで,令和4年度に作成を依頼しようと計画していた力学事象のアプリケーションを選別して,予算に応じて依頼する。その他の分野でも,テキストに組み込むべきアプリケーションをデザインしていかなければならないが,それらの実装は上記の理由で業者には依頼できないため,これまで業者が作成したコードを参考にして,自力でアプリケーションの実装を行なう。 最終的には,テキストとアプリケーションが一体となったマルチモーダルな教材として仕上げそれをネット上に配備する。加えて,評価実験を受け入れてくれる盲学校等があれば,複数の盲生徒に使用してもらい,本教材の学習効果を確認したい。
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