研究課題/領域番号 |
21K02879
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
高橋 等 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80293273)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | メタディスコース / 暗黙知 / 数学授業 / 中学校数学 / 関数 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,中学校数学授業で子どもの言語活動として発生し,進展するディスコースとメタディスコースの様態を,授業の参与観察と,刺激再生法によるインタビューとによって明らかにする. 授業において,主として発話行為として現れるディスコースに対して,メタディスコースは通常は暗黙的であり,発話行為としては現れない。数学授業におけるディスコースの分析は広く実施されているものの,発話者同士のコミュニケーションにおける言外の意味の伝達を扱うメタディスコースの分析は,国際的にも新しい課題である.本研究は,研究代表者によるアイデンティティを扱った研究を自己意識の暗黙的な相互伝達に対する調査研究として発展させる.
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研究実績の概要 |
算数・数学に係るメタディスコースの存在と様態を説明するために,Polanyi,Mの暗黙知論,及びSfard,A.のコミュニケーション論を基に,理論を展開した。Polanyi,M.とSafard,A.とは共に,思考とコミュニケーションを統合する視点をもっており,数学教育的な現象に対する全体論的なアプローチを伴うものである。Polanyi,M.理論は科学哲学・知識論であり,Sfard,A.の見解は数学教育学の範疇にある。 理論的な展開が進むに従って,中学生の実際の数学的活動におけるメタディスコースの存在と様態とを,これまで収集したデータを分析することによって捉える作業を進めた。特に,中学校関数授業においてはメタディスコースとして,関数の定義に係るものや,関数の性質に係るものの他に,数学的内容全般に係るものがある。一見して,外的に現れるディスコースが成立している様であっても,個人的には各自異なるイメージをもっている場合があり,このイメージこそがメタディスコースとなっている。 数学授業ではコミュニケーションが成立しているような場合であっても,各個人が異なるメタディスコースをしているのであれば,構成する数学的知識が個人間で全くに同一ということはあり得ない。そういう意味では,数学的知識の絶対性を標榜するプラトニズムに反した社会的構成主義としてのメタディスコースの存在と様態を論ずることは数学教育学的に意義がある。 実際,数学教育の実践において,数学を絶対的なものとするか,社会的に構成されるものとするかは,特に,教師のもつ数学観を論ずる際に重要となる。この研究は教師のもつべき数学観とは何か,に対する見解にも一石を投ずることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で中学校の関数授業を参与観察すること,子ども達へのインタビューを通したデータ収集が殆ど中止になってしまった。しかしながら,苦心してこれまで蓄積してきたデータを分析することによって,僅かながらメタディスコースの存在と様態とを捉えることができてきている。
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今後の研究の推進方策 |
できれば学校現場に赴き,データ収集を実施したいけれども,コロナ流行の状況によって計画変更となることもある。これまでに蓄積したデータから分析に耐え得るものを選択して研究を進めていくことになる。場合によっては,学校での正規の数学授業でない子ども達の集まりの中で関数の問題を解かせることなどをして,データを収集することもあり得る。 何れにしても,当初の目論見よりは,データ分析ではなく理論的展開の方に比重が係るものの,研究は完遂できる。
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