研究課題/領域番号 |
21K03243
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 雅彦 東京大学, 大学院数理科学研究科, 名誉教授 (70183035)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | トンプソン群 / Thompson 群 / 自己同型 |
研究開始時の研究の概要 |
トンプソン群の背後に存在することが期待される空間やその上の構造を探索する.
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研究実績の概要 |
本研究課題の主題はトンプソン群である.トンプソン群には,区間 [0,1]に連続的に作用するもの(通常 F と表記される),長さ r の円周 R/rZ に連続的に作用するもの(T と表記されることが多い),そしてカントール集合に作用されるもの(V と記されることがある)の3種類がある.また,もともとは 2 進数に基づくものが取り扱われていたが,F および V の場合には一般の n 進数から出発することにより,一般化されたトンプソン群 F_n, T_n,r が考えられる.これらの間の(単射な)準同型に焦点をあてて,琉球大学准教授加藤本子氏の協力を得ながら研究を実施した.この種の問題に対する先行研究としては,Brin-Guzman の仕事が挙げられる.彼等の方法は群の生成元とその間の関係に着目したものであるのに対し,私たちの手法は,それらの群が作用する空間と,その間の連続写像,ないし同相写像に注意を向け,ときに力学系理論などを援用しながら議論を進めていくといったものである.意外なことに,トンプソン群に対する既存の研究には,この種のものが見出せない.トンプソン群に対する研究に新たな知見が得られつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度に得られた最初の成果のひとつに以下のようなものがある.トンプソン群 F_2 から トンプソン群 F_3 の中への(単射な)準同型が,Brin-Guzman により構成されている.その構成は F_2, F_3 の生成元を用いて具体的に与えられている(この構成に限らず,彼等の手法はほぼ全面的にこの種のシンボリックなものである).この準同型の背後にカントール集合が存在すること,そしてその準同型に対する半共役写像,すなわち,区間 [0,1] からそれ自身への上への順序を保つ連続な全射(しかし,単射ではない)写像であって,Brin-Guzman の準同型に関し同変なものが存在することを発見した.しかもその半共役写像はかつて1次元力学系理論において,Denjoy が新たな例を構成した手法と実質的に同一のものである.なんと,トンプソン群が登場するよりもはるか昔から存在した数学,ときに力学系理論がトンプソン群の背後に存在していたことが半世紀内外も気づかれていたのである.この種の現象の例を構成することに,研究時間の大半を費やした.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の最終年度にあたる 2023 年度には以下のような問題について研究を行いたいと考えている. ・トンプソン群の間の準同型と,その背後にある半共役,あるいは位相共役写像.より多くの具体例の構成を試みるとともに,一般論の構築を目指す. ・トンプソン群 T=T_2,1 の自己同型に関する Brin の剛性定理の別証明を完成させる.さらに,それと Mostow の剛性定理との類似性を追求する. ・トンプソン群が作用する無限次元空間の幾何を追究する.
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