研究課題/領域番号 |
21K03640
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17010:宇宙惑星科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
徳丸 宗利 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (60273207)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 太陽風加速 / 惑星間空間シンチレーション / 密度乱流 / 宇宙天気予報 / 太陽風 / 太陽圏 / 宇宙天気 / プラズマ乱流 |
研究開始時の研究の概要 |
太陽からは超音速のプラズマ流(太陽風)が吹き出し、地球周辺の環境に大きな影響を与えている。この太陽風が如何にして加速されるかは未解明の謎である。最近の研究から、太陽から放射される磁気波動が太陽風の密度ゆらぎによって反射され、効率よく太陽風加速させるというモデルが提案された。名古屋大学宇宙地球環境研究所では天体電波源の惑星間空間シンチレーション(IPS)観測によって太陽風の速度と密度ゆらぎを測定している。本研究では、名古屋大学のIPSデータと飛翔体による観測データを比較することで、太陽風加速と密度ゆらぎの関係を明らかにし、磁気波動による太陽風加速モデルを検証する。
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研究実績の概要 |
太陽風が如何にして加速されるかは、未だ十分解明されていない重要課題である。これまでの研究から、太陽風の速度Vと密度ゆらぎΔNeの間にはΔNe∝V^αで記述される関係があることが知られており、この関係式のべき指数αは太陽風加速機構を探るための重要な手掛かりとなる。太陽風加速に寄与するΔNeは磁気波動によって生じた微細な空間スケールの密度ゆらぎであり、この特性を飛翔体観測で探ることは時間分解能の制約から困難であった。しかし、微細な太陽風密度ゆらぎによって発生する天体電波源の惑星間空間シンチレーション(IPS)を観測すれば、VとΔNeの関係を詳細に調査することができる。本研究では、IPS観測データを使った次の2つの解析からV―ΔNe関係式を決定し、両者の結果を統合することで太陽風加速機構に関連した新たな知見の獲得を目指している;1)IPS観測で得られた速度データのみを使った計算機トモグラフィー(CAT)解析の結果を飛翔体観測結果に最適化することで、V―ΔNe関係式を決定する、2)IPS観測で得られる速度とg値データを同時にCAT解析することでV―ΔNe関係式を求める。解析2のためには豊川アンテナの受信機の校正を行ってg値データの長期変動を補正する必要があったが、初年度の調査から校正装置が正常に動作しないことが分かった。そこで本年度は、受信機近くのアンテナ小屋で信号を計測するように新たに制御回路などを製作し、校正装置を改良した。その結果、正常に校正できるようになり、豊川アンテナの受信機における長期変動が無視できることが確認できた。解析2よってV-ΔNe関係式を求めたところ、解析1で求めた関係式と食い違いがあることが判明した。この違いは観測システムによるものではなく、太陽風の密度乱流の長期変動を反映したものと結論される。さらに、g値データを使って太陽風擾乱の長期変動を研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究初年度には解析1のための高速な計算機を整備し、速度データのCAT解析を行った。その結果、αが2009年以前とそれ以降では異なっていることが判明した。この変化は第24太陽周期における活動度の低下に関連していると推定される。解析2によって求めた関係式が解析1と食い違っていることも、第24太陽周期における活動度の低下と関連していると関係していると考えられる。このような太陽風密度乱流の長期変動は従来知られておらず、重要な成果である。本研究でCAT解析から精度良く太陽風速度の分布を決定できるようになったので、1985~2019年の太陽風構造の解析を行った。その解析結果からは、太陽活動に伴う太陽風構造の全球的変化が明らかになった。この成果はAstrophysical Journal誌に出版している。また、求めた太陽風速度分布データをポーランドの研究チームに提供して、太陽風速度の全球分布を決定するモデルの開発を行った。その結果はAstrophysical Journal誌に出版された。さらに、長期にわたるg値データの解析が可能になったので、宇宙天気予報にとって重要な研究課題である太陽風擾乱の長期変動についてg値データを使って解析を行った。その結果、第23と24太陽周期では太陽風擾乱の発生率の太陽活動依存性に違いがあることが判明した。これらの成果は学会で報告するとともに、論文をSolar Physics誌に出版した。g値データは、米国UCSDの研究グループとの共同研究にも利用されており、その成果をまとめた論文は目下投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によって、長期間にわたるIPS観測から信頼性のある速度およびg値データを取得することができた。最終年度では、こられのデータを利用して、以下の研究課題に取り組む。まず、前年度に着手したg値データを使った太陽風擾乱の研究について、さらに解析を進める。特に太陽風擾乱の種類によってg値データの東西対称性が変化する点に注目する。次に、太陽風速度と太陽磁場との関係について解析を行い、太陽風加速をよりよく説明するモデルを開発する。ここでは、太陽風加速を説明するパラメータとしてコロナホール境界からの距離(DCHB)に注目する。また、移流拡散磁気輸送モデルADAPTによる補正を行った太陽磁場データを用いて、ポテンシャル磁場解析を行ってDCHBを決定する。これらの解析で得られた成果は、研究会などで発表するともに論文にまとめて出版する。DCHBを用いた太陽風加速モデルの研究から得られた成果は、新たな研究課題へと発展させてゆきたい。
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