研究課題/領域番号 |
21K04010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
今坂 公宣 九州産業大学, 理工学部, 教授 (40264072)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | パルスパワー / 表面改質 / ナノカーボン / 固体高分子型燃料電池 / オゾン / 官能基 / ナノ材料 / ナノチューブ・ナノホーン / 燃料電池 / 電子電気材料 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、新しい電力技術として期待されているパルスパワー技術を用いてカーボンナノチューブ等のナノカーボン材料の表面改質を行うことにより付加価値の高い材料として創製し、持続可能な社会におけるクリーンエネルギーとして注目されている固体高分子型燃料電池の電極材料として応用する。 これまでの研究成果を基盤としたパルスパワー技術によるナノカーボンの表面改質技術をさらに効率化して固体高分子型燃料電池の出力向上を目指すとともに、固体高分子型燃料電池の動作特性における表面改質ナノカーボンの効果を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、パルスパワー技術を用いてカーボンナノチューブ(CNT)等のナノカーボンの表面改質を行うことにより付加価値の高い材料として創製し、固体高分子型燃料電池(PEFC)の電極材料として応用することを目的としている。本年度は、パルスパワー技術として磁気パルス圧縮パルスパワー電源を用いて酸素雰囲気中でのバリア放電によりオゾンを生成し、ナノカーボンのオゾン暴露による表面改質を昨年度より継続して行った。バリア放電の条件として繰り返し周波数の影響を調査するために100、500Hzで行った(昨年度300Hz)。表面改質におけるオゾン暴露の時間依存性を検討するために放電時間は30分(昨年度60分)とした。酸素供給量は1L/minとした。100、500Hzにおけるオゾン濃度は放電開始1分程度で50、150ppmに達し、30分でそれぞれ100、300ppm程度まで達した。ナノカーボンとして多層CNTとカーボンナノホーン(CNH)を用いた。本バリア放電の条件下でオゾン暴露後のナノカーボンの水中分散性の経時変化を観察した結果、1週間ほど分散性が維持された。X線光電子分光法(XPS)のスペクトル波形分離を用いて表面分析を行った結果、酸素を含む複数種類の親水性官能基が導入されていることがわかった。このとき酸素の結合割合は100Hzの方が500Hzよりも多くなる傾向が伺えた。さらにCNTとCNHをPEFCの電極材料として膜電極接合体(MEA)を作製し、水素極と酸素極に使用する表面改質の有無によるナノカーボンの4種類の組み合わせで出力特性試験を行った。その結果、表面改質したナノカーボンを水素極、または両電極に使用することで出力電力が2倍以上増加することがわかった。これらの実験結果は非常に有益な研究成果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するために2022年度は研究計画項目に基づいて(1)高繰り返しパルスパワー放電を利用したナノカーボンの表面改質に関する表面官能基の導入およびナノカーボン表面状態の観察および分析、(2)固体高分子型燃料電池の出力特性試験についての研究を遂行した。 研究計画項目(1)については、現有している自作のパルスパワー電源を改良した磁気パルス圧縮パルスパワー電源を用いて、パルスパワー放電(バリア放電)の周波数制御の対策として最大500Hzまで制御可能となった。このバリア放電によるオゾン生成を利用してナノカーボン材料であるCNTおよびCNHの表面改質における放電周波数の影響を検討することができている。また、X線光電子分光法によるスペクトル波形分離を用いたオゾン暴露後のナノカーボンの表面状態の分析として、表面官能基の種類等に関する基本的な分析結果も得られていると考える。研究計画項目(2)については、固体高分子型燃料電池の出力特性試験における電極材料の最適な組み合わせを検討するために、表面改質ナノカーボンと未処理のナノカーボンを用いて4種類の膜電極接合体を作製し、出力特性試験を行っている。なお、研究計画項目(1)については、昨年度購入予定の高繰り返しパルスパワー電源を利用することはできなかったが、自作のパルスパワー電源の改良により放電周波数の制御をある程度まで実現できたため、当初の計画を概ね達成できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究内容を継続してパルスパワー放電としてバリア放電を利用したナノカーボン材料の表面改質技術の効率化および固体高分子型燃料電池の出力向上の観点より、研究計画項目(1)高繰り返しパルスパワー放電を利用したナノカーボンの表面改質および(2)固体高分子型燃料電池の出力特性試験について研究する。また、(3)固体高分子型燃料電池の出力特性における表面改質ナノカーボンの効果の検討や出力向上に関する理論的解析についての研究も行う予定である。 研究計画項目(1)については、酸素雰囲気中でのバリア放電の周波数を最大500Hz程度で制御し、放電周波数とオゾン暴露時間に対するナノカーボンの水中分散性およびXPSによる表面状態の分析を継続して行う。その際にスペクトル波形分離を用いてナノカーボンの表面に導入された親水性官能基の種類や酸素の結合割合が放電周波数やオゾン暴露時間等によってどのように変化しているのかを検討する。 研究計画項目(2)については、固体高分子型燃料電の電極材料として表面改質ナノカーボンを用いる際に使用するMEAを構成する電極の組み合わせが出力特性に影響することが明らかになっため、継続して4種類の組み合わせで膜電極接合体を作製して出力特性を調査する。 研究計画項目(3)については、作製した固体高分子型燃料電池電極のインピーダンス測定(Cole-Colo プロット)により出力特性に対する4種類の電極の組み合わせの評価を行う。また、過電圧分離法による各種損失(活性化過電圧、抵抗過電圧、拡散過電圧)の理論的な検討を行うことで出力向上のための電極作製の評価を行う。
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