研究課題/領域番号 |
21K04023
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
水野 幸男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50190658)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 電気火災 / トラッキング / 半断線 / ねじの緩み / 伝導ノイズ / 火災未然防止 / 周波数スペクトル / 磁界 / 火災予兆検出 / 特徴量 / 機械学習 / 遠隔監視 |
研究開始時の研究の概要 |
100V電源コードプラグのトラッキング(絶縁体表面の炭化)、電源コードの半断線(導体素線の一部断線)による短絡、および導体接続部の緩みに起因する過熱は、電気火災の主原因であり火災防止手法確立が喫緊の課題となっている。 本研究では、以下の手順で課題の解決を図る。火災の前駆現象として生じる放電に着目し、放電発生時の電圧波形・電流波形の歪み、あるいは伝導性ノイズの周波数スペクトルから火災予兆検出のための特徴量を抽出する。3つの原因による火災に共通する特徴量に基づき、機械学習を用いた信頼性の高い火災兆候検出手法を考案する。さらに、常時遠隔監視システム構築に向けた指針を与える。
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研究実績の概要 |
電気火災件数は年々増加しており、火災防止手法の確立が強く要望されている。火災の3大原因である差込みプラグのトラッキング(絶縁体表面の炭化)、電源コードの半断線(導体素線の一部断線)による短絡、導体接続部の緩みに起因する過熱を対象として火災予兆検出手法を確立し、火災防止監視システム実現への道筋をつけることに本研究の意義がある。今年度は、3つの現象を同一の物理量で検出することを目的として、伝導ノイズに着目して実験・検討を行った。 100V差込みプラグをコンセントに差し込んだ状態で、電解液を断続的に滴下してトラッキングを発生させた。差込みプラグにトラッキングが発生すると、広範囲の周波数で伝導ノイズが大きくなることを確認した。正常時とトラッキング時の伝導ノイズの平均値比較により3.52MHzおよび7.42MHzの成分を特徴量とすると、80%以上の正解率でトラッキングを検出することができた。 現場で生じる半断線を模擬するため、100V電源コードの曲げ試験により導体素線30本中26本程度を断線させた半断線電源コードを用い、通電と無通電のサイクルを繰り返した。健全コードでは、サイクル数が増えても伝導ノイズに変化はなかった。一方、半断線電源コードの場合には、約10サイクル以降で2~6MHzの伝導ノイズレベルが増大し、継続することを確認した。この変化で半断線状態を検出し、短絡により生じる火災を未然防止できる可能性がある。 ブレーカの導体接続部にねじの緩みを導入すると、緩みにより生じた微小空間で放電が発生し温度が上昇する。ねじを緩めただけでは伝導ノイズは正常時と変わらないが、放電発生時には38~78kHzの伝導ノイズレベルが高くなることを明らかにした。3種類の異なるブレーカでこの現象が確認できており、この周波数帯の伝導ノイズの変化により放電の発生ひいてはねじの緩みを検出できる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
差込みプラグのトラッキング(絶縁体表面の炭化)、電源コードの半断線(導体素線の一部断線)による短絡、導体接続部の緩みに起因する過熱の3つの現象を、伝導ノイズという共通の物理量で検出できる可能性を示すことができたため。 共通の物理量で検出できれば、火災未然防止システムの実用化の際には小型化や価格の点で大きな利点となる。
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今後の研究の推進方策 |
差込みプラグのトラッキング(絶縁体表面の炭化)、電源コードの半断線(導体素線の一部断線)による短絡、導体接続部の緩みに起因する過熱の3つの現象検出のための共通の物理量としての伝導ノイズの有効性を、種々の条件下で確認する。 今年度は結果解析のしやすさの観点から、主として抵抗性の負荷を用いた。インバータを含む家電製品を負荷とする場合、複数の家電製品を同時に使用する場合などについて検討を行う。 今年度示した伝導ノイズの周波数帯域以外に、特徴量として使用できる周波数帯域がないかを検討する。上述の3つの現象を同じ周波数帯域の伝導ノイズで検出できれば望ましいためである。一方で、同じ周波数帯域で検出できたとしても3つの現象の伝導ノイズの差が小さい場合には、異常の検出はできるものの現象の識別が難しくなる。この点にも留意して検討する。 それぞれの現象が生じた状態と健全状態との特徴量の差は小さい場合などには、機械学習を用いた異常検出や現象識別を試みる。
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