研究課題/領域番号 |
21K04130
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 (2022) 筑波大学 (2021) |
研究代表者 |
相原 健人 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (50892808)
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研究分担者 |
福山 敦彦 宮崎大学, 工学部, 教授 (10264368)
池沢 道男 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30312797)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 顕微PL測定 / CZTS太陽電池 / 表面起電力法 / 光熱分光法 / 分光評価 / 顕微測定 / 窒素等電子トラップ / 非発光再結合機構 / III-V族化合物半導体 / レーザー分光法 / 単一光子源 / 共鳴励起機構 |
研究開始時の研究の概要 |
量子コンピューターへの応用を目的とした区別のつかない希薄な発光素子を研究対象とした顕微分光評価技術の開発を行う。 具体的には、対象となる試料のバンドギャップやバンドギャップ内に存在する中間準位と一致する波長の光を照射する選択励起条件下での顕微測定の開発を行う。
取り組みとして、顕微装置系に新たに励起光照射時に試料表面で発生する「起電力」および非発光再結合の際に生じる「熱波」をそれぞれ検出可能にする。これらの信号を取得するために、それぞれ固有の検出器と試料ホルダーを設計・作製して実証実験を行い、得られた結果を共同研究者と議論・測定系の再検討を実施して多様な材料に適用できる評価技術の立ち上げを行う。
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研究実績の概要 |
前年度に実施したGaAs中の窒素不純物準位間の信号が検出できない原因について調査を行い、光生成された正孔を外部へ取り出すには困難な高さのエネルギー障壁が存在したことを突き止めた。 そのため、本年度は 非輻射再結合のマッピング評価が可能な別の候補材料の検討を行った。 新たな材料として、薄膜太陽電池材料のCZTSと呼ばれる多元系化合物半導体材料を研究対象にして、試料の準備と実証実験を行った。 試料は多結晶のCZTSを製膜したベア構造の試料Aと、その上にCdS層を堆積したpn構造の試料Bである。 まずはCZTS試料の顕微フォトルミネッセンス(PL)測定を実施して、試料構造と発光特性との相関を調査した。測定結果から2つの試料間で発光強度や強度分布等に違いは現れなかった。 これはマクロPL測定でも同様の結果が得られていた。先行研究によると、試料BではCdS層の堆積により空乏層が形成されるため発光効率の低下が生じる。 一方で、CdS層がパッシベーション層としても作用して表面再結合の低減にも寄与していた。そのため構造の異なる2つの試料間で発光強度に違いが生じなかったと結論付けていた。 今後は顕微PL測定で確認された、スペクトル形状の測定エリア変化について注目して、マクロ測定では明確な確認が困難な2つ試料の発光中心の比較を中心に実験を進めていく。 加えて、CZTS試料の非輻射再結合機構の観測方法として、1)光励起したキャリアの表面蓄積を観測する表面起電力法、および、2)光励起したキャリアの非輻射再結合による熱弾性波を観測する光熱分光法のマクロ測定を室温でそれぞれ実施した。 両測定ともに試料Bでのみ光学スペクトルが観測された。 本測定を顕微測定に移行するには各信号感度を可能な限り大きくする必要がある。それぞれの測定で信号強度が最大となる条件出しを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初検討していたGaAs中の窒素不純物起因の信号を非発光再結合機構で観測することはできなかった。その原因一つとして、この信号のエネルギー準位の高さが20 meVと、とても浅く、且つ、希薄に分布しているためガイドとして6 K程度の極低温での低温顕微発光測定で不純物準位が形成されている位置を探す必要があった、一方でこのような極低温では光生成されたキャリアを取り出す際にわずかでもエネルギー障壁の層が存在すると熱脱出できないため信号を外部に取り出すことができない. そのため、これまで研究対象としてきた試料では窒素不純物由来の信号の非輻射再結合機構での観測は不可能と判断した。 また、本年度より所属機関が変わったため本研究に着手する時間を設けることが大きく減少し、現状目的を絞って筑波大学で作業を行う状況にある。 対象試料については上記経緯より室温環境下で顕微発光測定(ガイド測定)が可能な試料へ変更して、現在はCZTSと呼ばれる化合物半導体材料の非発光再結合のマッピング測定を実施するため、筑波大学で顕微発光測定を行うための光学系の調整とスペクトルの取得。 また、同測定系でラマン測定を実施しては発光強度とラマンシフトのマッピング図に相関があるか調査できるように各測定条件の最適化を実施中。 その他の候補材料として、III-V族化合物半導体の太陽電池材料に対して放射線(陽子線、電子線)を照射して欠陥が形成された試料を準備。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は室温測定を中心にして、非輻射再結合機構のマッピング測定の実施していく。 CZTS試料については顕微フォトルミネッセンス(PL)測定と顕微ラマン測定を組み合わせて発光強度とラマンシフトの相関関係を組み合わせた測定を実施していく。 また、宮崎大学で実施しているマクロ測定の表面起電力法、および、光熱分光法について、信号感度の良い測定条件を参考にして、筑波大学で顕微での表面起電力法、および光熱分光法を実施して、発光強度とキャリア収集、および、非発光再結合のマッピング測定を実施して、各信号発生メカニズムの相関関係を調査する。 上記測定に関して相関の取れるマッピング図になっていた場合は、異なる太陽電池特性を示すCZTS試料を準備して同様のマッピング測定を行って各信号強度の変化等を比較して結晶品質等について議論・考察を行う。 尚、CZTSの発光スペクトルがバンドギャップよりも大きく低エネルギー側にシフトした場合は、発光中心の詳細なエネルギー位置を調査するためにレーザー変調反射分光法で評価する。 また、上述の評価方法をInGaP/GaAs 2接合型太陽電池材料にも適応する。2接合太陽電池に対して、陽子線のエネルギーを調整して、トップセルまたボトムセルで陽子線が停止した条件の太陽電池試料を用意する。各セルで形成された欠陥を顕微PL測定、表面起電力法、光熱分光法、LBIC法のマッピング測定を実施して多面的側面から欠陥形成に関する知見を取得する。上述で得られた成果物は国内外の学会で発表また論文投稿を行う。
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