研究課題/領域番号 |
21K04281
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22040:水工学関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
原田 守博 名城大学, 理工学部, 教授 (40165030)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 雨水流出抑制 / 透水性舗装 / ポーラスコンクリート / 非線形透水則 / ダルシー則 / 浸出面 / デュピーの仮定 / 水循環系の健全化 |
研究開始時の研究の概要 |
都市域の豪雨に対する雨水流出抑制方策として、透水性ポーラスコンクリート(POC)舗装の雨水浸透・流出過程を実験的に解明し、それを踏まえた水理解析モデルを構築することによって、市街地に広くPOC舗装を施工した場合の雨水流出抑制効果を定量的に評価する技術を確立する。具体的には、まず、実物大のPOC舗装に対して模擬降雨を与えた浸透実験によりPOC槽内の雨水浸透・流出過程を計測するとともに、POCに代表される粗粒媒体特有の水理特性を室内実験によって検証し、それを組み込んだ水理解析モデルを構築して POC舗装の流出抑制効果を評価、さらには,その効果を高めるための具体的な施工形態を提案するものである。
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研究実績の概要 |
流域における市街地の拡大に伴い、土地利用が変化し、道路の舗装や下水管の敷設により、雨水は速やかに流出する傾向が強まっている。さらに、近年の局地的短時間大雨、いわゆる“ゲリラ豪雨”の発生により、都市河川の流出特性が先鋭化、すなわち流出流量が増大し、流出時間が短縮することにより、河川からの溢水・氾濫や低平な市街地での浸水被害が頻発している。流域に降る豪雨を地下へ浸透あるいは貯留させ、河川への流出を抑制する方策を進めることは、豪雨に対して都市域を強靭化するうえで喫緊の課題である。 都市域のゲリラ雨に対する雨水流出抑制方策として、透水性アスファルト舗装があるが、アスファルトが高温下で流動し機能の劣化が早いため、耐久性の高いポーラスコンクリート (POC)舗装が注目されている。POC は砕石を粗骨材とする多孔質材料であり、連続した粗大空隙をもち、きわめて大きな透水能力をもつことから、雨天時の路面湛水を防ぐことができる。しかし一方で,その透水性の高さゆえに、舗装内に浸透した雨水は速やかに排水され、下水道さらには市内河川に流出することが予想される。結果として、豪雨に対する十分な流出抑制効果が得られないのではないか?と危惧される。 そこで本研究では、Ⅰ. 実物大スケールの POC 舗装を建設し、降雨装置による模擬降雨を用いた浸透実験によりPOC 槽内の雨水浸透・流出過程を計測するとともに、Ⅱ. POCなど粗粒媒体特有の水理特性(非線形透水法則および下流端流出部での浸出面形成機構)を室内実験によって検証し、Ⅲ. それら水理特性を組み込んだ水理解析モデルを構築して POC 舗装の流出抑制効果を評価している。さらに,その流出抑制効果を高めるとともに、雨水を地下浸透させることで流域の水循環改善に寄与するための舗装形態を具体的に提案することを目標としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の具体的な実施過程および現在までの進捗状況は下記のとおりである。 Ⅰ.POC舗装における雨水浸透・流出過程の計測:実物大のPOC舗装を5号・6号・7号砕石と粒径と空隙率を変えて5種類建設し、人工降雨を降らせた一連の浸透実験によりPOC 槽内の雨水の挙動を詳細に計測した。実験槽には下流端に越流堰板を設置し、浸透した雨水が堰板を越流するまでは下部に貯留される形式とした。 Ⅱ.POCに代表される粗粒媒体特有の透水機構の解明 (1) 粗粒媒体における非線形透水法則とその水理機構:従来、POC層の透水現象は通常の線形ダルシー則に従うとされてきたが、粗粒媒体では間隙中の流れが乱流となる。ガラス球およびPOC供したいに対する高精度透水試験を行い、多孔体中の層流および乱流に関する水理学的検討により、レイノルズ数の増大とともに透水則に非線形性が現れることを確認し、媒体の粒径と透水則の非線形係数の関係を理論づけた。 (2) 粗粒媒体の浸透層下流端における浸出面の形成機構:従来、砂層など細粒の浸透層においても流出下流端においても浸出面が発生することが知られている。浸出面の発生は粗粒媒体でいっそう顕著に現われることから、POC層の浸透解析では下流端の境界条件を定める上で重要なポイントとなる。本研究では「浸出面の形成は透水則が線形関係から外れる限界動水勾配の存在に起因する」との仮説を立て、種々の粒径のガラス球を充填した浸透層を用いた実験によって検証した。当初、実験槽を層厚3mmのアクリル板で製作したところ水槽の歪が見られたことから、層厚を10mmに変更して歪変形を無視できる高精度な水槽が完成し、詳細な実験データを取得することが可能となった。実験では流れのピエゾ水頭を測定するため、浸透層の背面35ヶ所にマノメータを設置し、ポテンシャル分布を確認して水理解析モデルの適用可能性を検証した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの実施状況を踏まえた今後の研究計画は下記のとおりである。 Ⅱ.POCに代表される粗粒媒体特有の透水機構の解明 (2) 粗粒媒体の浸透層下流端における浸出面の形成機構:製作された実験水槽に種々の粒径のガラス球をそれぞれ充填して浸透実験を実施する。実験の着目点は、同じ境界条件における媒体の粒径と浸出面の形成状況の関係である。粒径が粗くなるにつれて乱流に切り替わる限界動水勾配が小さくなり、ダルシー則から想定される水面形状から早い段階で外れてくるものと予想される。 Ⅲ.POC特有の水理機構を踏まえた水理解析モデルの構築:上記Ⅱ-(1)の成果に基づき、非線形透水則を組み込んだ『POC層における雨水浸透貯留流出解析モデルMU-1D』を作成済みである。このモデルはデュピーの準一様流の仮定に基づく水平1次元モデルであるが、舗装内の流れを1次元で扱うことの妥当性、さらには浸透槽下部の貯留域の取り扱いについて、線形ダルシー則の条件下ではあるが、既存の鉛直2次元解析モデルUNSAF-2D と比較を行い、解析の有効性を検証している。また下流端の境界条件については、Ⅱ-(2)の実験結果を踏まえて浸出面の形成条件を組み込み解析を進めている。 Ⅳ.POC舗装の流出抑制効果の評価および施工形態の提案:本研究では、実物スケールの実験結果(Ⅰ)に基づき、POC 特有の透水機構(Ⅱ)を組み入れた水理解析モデル(Ⅲ)を駆使して実験の再現を行うとともに、広範な現地での雨水流出現象の予測を試みる。さらに、流出抑制効果を高めるための施工形態として、浸透した雨水を舗装内部に貯留して流出を抑制するとともに、降雨後は貯留水を舗装下面の自然地盤に地下浸透させる方法を提案する。これによって豪雨時の流出を抑えると同時に、浸透水が地下水を涵養して健全な水循環系の再生に資するよう、視野の広がりをもって研究全体を取りまとめる予定である。
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