研究課題/領域番号 |
21K04338
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
北山 和宏 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (70204922)
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研究分担者 |
晉 沂雄 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (60727006)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 建築構造・材料 / 鉄筋コンクリート構造 / 柱梁接合部 / 降伏破壊 / 軸崩壊 / 耐震性能 |
研究開始時の研究の概要 |
地震を受ける鉄筋コンクリート建物の柱と梁との交差部(柱梁接合部)が曲げ降伏した後に鉛直軸力を保持できずに軸崩壊すると、建物の崩壊を招き危険である。それでは、柱梁接合部の軸崩壊は如何なる条件でどのように発生するのか。 この疑問を解明するため、立体柱梁部分骨組に三方向の力を載荷する実験および有限要素解析を実施し、曲げ降伏後に軸崩壊する柱梁接合部の破壊機構を追究して力学モデルを構築する。このモデルを用いて骨組の諸元を変数とした解析を実施し、軸崩壊する柱梁接合部を有する骨組の定量的な耐震性能評価を可能にする。
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研究実績の概要 |
梁が三本貫入する側柱梁部分架構試験体に二方向水平力および柱変動軸力を載荷する実験を実施した.また既往の隅柱梁部分架構実験の結果の検証結果に基づいて隅柱梁部分架構試験体を設計・作製して同様の実験を行った.ここでは側柱梁部分架構の実験結果について述べる. 全試験体で最大耐力に到達した層間変形角1.5%までに柱・梁主筋および接合部横補強筋の引張降伏が発生した.このとき梁曲げ降伏が生じた。一方向載荷時の最大耐力発揮後,水平二方向載荷時に層せん断力が接合部降伏破壊耐力の予測曲面に到達し,層間変形角1.5%の南西地点で接合部降伏破壊を生じたと判断する. 層間変形角2%では柱主筋の圧縮降伏が発生し,柱梁接合部のかぶりコンクリートの圧壊とともに十字形方向の水平耐力が低下した.層間変形角3%では柱梁接合部のかぶりコンクリートの圧壊がさらに進み,柱主筋が露出して座屈の兆候が見られた.層間変形角4%では,柱梁接合部のコアコンクリートの圧壊にともなって柱主筋が柱梁接合部内で座屈し,軸崩壊へ向かう挙動へ転じた.柱主筋の座屈挙動はその直径が細くて柱主筋比が1.1%と小さい試験体で最も激しく,接合部横補強筋を分散配置した試験体で少ない傾向を示した. 層間変形角4%の第二サイクルでの二方向載荷時に,柱主筋を細径(8-D13)とした試験体では柱梁接合部の軸崩壊直前に至ったために実験を終了した.これに対して柱主筋を8-D16とした試験体では層間変形角4%の第二サイクルの載荷を全て完了して実験を終了した.この試験体においても柱主筋の座屈状況および柱梁接合部のコンクリートの損傷状態から,柱梁接合部の軸崩壊直前であったと判断した.これより柱主筋を細径とした柱梁接合部の軸崩壊は他の試験体よりも早期に発生したと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では1) 柱梁部分骨組の実験,FEM解析の実施および軸崩壊機構の探究,2) 降伏破壊後に軸崩壊する柱梁接合部の力学モデルの構築,および3) 降伏破壊後に軸崩壊する柱梁接合部の耐震性能評価,の三つの課題に取り組む. 課題1)では,三本の梁が貫入する側柱梁部分架構試験体および直交する二本の梁が貫入する隅柱梁部分架構試験体の各柱頭に二方向水平力および変動軸力を載荷する静的実験を実施した.側柱梁部分架構は熊本地震(2016年)で被災したRC庁舎と同様に,一方向水平加力時には梁曲げ降伏が先行するが,二方向水平加力時には接合部降伏破壊が生じるように設計した(実験でも同様の破壊経過をたどったことを確認した).二本の梁が貫入する隅柱梁部分架構の既往実験との比較のため,柱断面,梁断面,梁スパンおよび階高は共通とした.新規の隅柱梁部分架構では,柱梁接合部の横補強筋の径を既往の試験体よりも細くするがその配筋組数を増やして配筋間隔を密にすることで接合部横補強筋比を同一としたときの影響を検討した.実験では全ての柱梁接合部が降伏破壊後に軸崩壊の直前まで至ったと判断した. 以上の実験による結果と本科研費の研究担当者が以前に実施した実験の結果とをあわせて分析することによって,課題3)に掲げる「降伏破壊後に軸崩壊する柱梁接合部の耐震性能評価」を行なっている. 課題2)については,平面のト形柱梁接合部を対象に力の釣り合い条件および柱梁接合部の隅部コンクリートが圧壊するときの変形の適合条件を考慮したマクロ・モデルを前年度に作成した.2022年度には二方向水平力を受ける立体の隅柱梁接合部および側柱梁接合部を対象としてこの力学モデルを拡張する方策を考えているが成案を得るには至っていない.また柱梁接合部が降伏破壊を生じたのちに軸崩壊するときの変形性能を定量化する手法についても考慮中である.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には本課題によって実施した側柱梁部分架構および隅柱梁部分架構の三方向載荷実験の結果をさらに精細に分析するとともに,その結果を適宜,既往の研究結果と比較・検証する.これによって降伏破壊したRC柱梁接合部の軸崩壊機構をさらに探究する.筆者らの立体柱梁部分架構実験と前田らの平面ト形部分架構実験とを比較すると,柱梁接合部が降伏破壊した後に軸崩壊するときの柱の層間変形角(骨組の変形性能)および圧縮軸力比(柱梁接合部の軸支持性能)は大きく相違した.両者には水平二方向加力と一方向加力という相違はあるものの,本課題の申請時にはこれらの差異の原因は不明なためこれを「軸崩壊の謎」と呼んだ.最終的にはこの謎の解明を試みる. 過年度に降伏破壊後に軸崩壊する柱梁接合部のマクロ・モデルを提案したが,このモデルは一方向水平力を対象とした.そこで二方向水平力を受けるときの応力状態および変形機構を考慮できる立体マクロ・モデルへの拡張を引き続き考える.過年度のモデルでは一方向水平力を受けるときの下柱に対する上柱の相対回転角を知ることができるが,建物の耐震設計では軸崩壊時の骨組の水平変形を知ることが重要である.そこでこの力学モデルをもとにして降伏破壊した柱梁接合部が軸崩壊に至る水平変形性能を定量的に評価する手法を考える. 必要に応じて三次元非線形有限要素(FEM)解析を実施し,RC柱梁骨組が二方向水平力および変動軸力を受けるときの地震時挙動を検証する.以上の検討結果を合わせることによって降伏破壊した柱梁接合部の軸崩壊機構を深化探究する.さらに柱梁接合部の軸崩壊を防止して建物に要求される変形性能を確保するための耐震設計法を具体に提示することを目指す.
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