研究課題/領域番号 |
21K04370
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阪上 公博 神戸大学, 工学研究科, 教授 (90231331)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 建築音環境 / 新生活様式 / COVID-19 / MPP / 自然換気機能 / プレナムドア / パーティション |
研究開始時の研究の概要 |
新生活様式は建築音環境にも影響を与えている.例えば室の収容定員減に伴う吸音不足・残響過,飲食店や会議室等でのパーティションやビニールカーテンの使用による音声明瞭度の低下,および反射音によるスピーチプライバシーの低下などが問題になりつつある.これらはいずれも吸音技術によって緩和できる.そこで,本研究では吸音技術を用いて,主として以下の目的に対して実用的な成果を目指した研究を実施する. 1. 収容定員減に起因する吸音不足の解消のための次世代材料3次元空間吸音体の提案 2. 飛沫感染予防のためのパーティションでの反射に起因する音声伝達における悪影響への対策のための,吸音性透明パーティションの提案
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研究実績の概要 |
新生活様式における建築音環境改善手法の研究として,本年度は下記の課題に取り組んだ. (1)自然換気機能を有するドアについての詳細な検討:新生活様式においては,換気機能を有することが建築物内の空間において重要となりつつある.換気機能を有することは,建築音響的には遮音性能を減ずることとなり,両立が難しい問題であるが,本研究では前年度の取り組みとして,開口を有する2重構造であるプレナム構造を採用したドア(以下,プレナムドア)を提案し,実験的にその遮音性能を検討した.本年度は,さらに詳細にこのプレナムドアの遮音性能を検討するため,有限要素法による数値解析により,ドアの各パラメータの影響について知見を得るため,詳細な検討を行った.その結果,プレナムドアは,厚さが小さい場合,開口幅が小さい場合により高い遮音性能を示すこと,また内部の空洞部を吸音処理することにより,さらに高い遮音性能を得られることが明確になった. (2)MPPを使用した吸音性を持つ透明アクリル製卓上パーティションに関する詳細な検討:MPP(微細穿孔板)を使用した卓上パーティションについては,前年度には室内実装時を想定した実験的検討を行ったが,本年度はこのパーティションの性能改善のため,理論解析によりその可能性を検討した.具体的には,パーティション越しの音声伝達性能を向上するための透過性向上,話しやすさの改善及び室内音環境調整のための吸音性能向上を主な目的として,最適設計のための指針を得るための検討を行った.その結果,MPPのパラメータを適切に調整することで,透過性を向上できる可能性が示された.また,MPPおよび芯材(2枚のMPPに挟まれた孔のない遮音板)のパラメータを調整することで,吸音性能を向上できる可能性が示されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プレナムドアの研究については,数値解析の導入により詳細な検討が可能となっており,当初に期待した成果が得られており,今後のさらなる発展が期待できる状況である. MPPを使用した吸音性パーティションの研究については,理論的な解析手法を確立したことにより,各パラメータの影響が明らかになり,当初期待した最適化への手がかりを得ることができた.今後は,数値解析も導入することで,実装時の条件を想定した検討が可能となることが期待される.
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今後の研究の推進方策 |
まず,プレナムドアについては,その基本的な特性は把握できたが,自然換気を確保しつつ高い遮音性能を得るためには,効果的な吸音要素の導入による性能の改善が必要であると考えられる.これについては,数値解析によって検討を進める計画である. MPPを使用した吸音性を持つ透明アクリル製卓上パーティションについては,卓上パーティションに留まらず,一般的なパーティションについても検討を進める方向で,数値解析も援用したさらに幅広い条件での解析を計画している. 次年度は,これらを中心に研究を推進することを計画している. なお,空間吸音体の利用によって,ソーシャルディスタンスのため室内の利用人数を制限したことによる残響過多を解決する問題については,昨今の社会状況からこの問題の重要性が低下していることを鑑みて,実施しない方針である.
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