研究課題/領域番号 |
21K04613
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
長尾 年恭 東海大学, 海洋研究所, 研究員 (20183890)
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研究分担者 |
鴨川 仁 静岡県立大学, その他部局等, 特任准教授 (00329111)
楠城 一嘉 静岡県立大学, その他部局等, 特任准教授 (10549504)
上嶋 誠 東京大学, 地震研究所, 教授 (70242154)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 富士山 / 噴火予測 / 地磁気観測 / マッチドフィルタ / 火山性地震 |
研究開始時の研究の概要 |
マグマの挙動を2つの手法を用いて、変動検知を行う。1つ目は地磁気観測を実施し、そのデータに独立成分分析等の信号解析を適用する。微小地震の検知ではマッチドフィルタ法(MF法)を適用し、高感度火山性地震検知システムを構築する。MF法では直近10年程度の低周波地震を例としてまず解析を実施する。山頂・山麓での火山ガス観測については、富士山NPOが集約している各大学・研究機関発の観測データも統合し、多角的に噴火予知研究という視点から監視するシステム構築を行う。なお観測データは地磁気や地震活動のみに限らずポータルサイトでリアルタイムに公開し、近隣住民および登山者への啓発活動もあわせて行う。
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研究実績の概要 |
令和4年度もコロナの状況が改善せず、当初計画では、山頂に位置する認定NPO法人「富士山測候所を活用する会」が管理をしている旧気象庁・富士山測候所近傍に新規観測点の設置を計画していたが、これは実現できなかった。 そのため令和4年度は、実際に山頂に赴き、観測点近傍の電磁環境調査を主に実施した。具体的には高さ方向に2つセンサーを有する磁力計を徒歩で背中に担いで実施した。これは地磁気の空間勾配が小さい場所を探すためで、地磁気に何らかの変化が観測された時に、それが火山活動に起因する真の変動なのか、あるいはセンサーが風等の影響でセンサーの位置がずれてしまった等の人為的変化なのかを見分けるためである。今回の予備観測はサンプリングレートは1Hzとして行った。また山頂は極めて風が強く、登山者も極めて多い事から、山頂付近に別の観測点候補地を探す事にした。 令和4年8月に山頂から宝永火口まで徒歩にて地磁気環境調査を実施し(長尾、鴨川、上嶋)、その結果、8合目に位置する気象庁の火山観測点敷地周辺に好適地を見つける事ができた。 下山後気象庁に赴き、観測の主旨を説明し、今後の地磁気観測に協力頂ける事となった。またこの8合目の気象庁敷地の有利な点は、生活物資や研究機材等を山頂に運搬するブルドーザ登山道に隣接している事である。これは冬季連続観測に欠かせないバッテリーの運搬にも極めて有利な事であり見逃せない条件である。話し合いの結果、令和5年度に気象庁火山観測点を拠点とした臨時観測を行う事が気象庁に認められた。 火山性地震の高感度検出については、共同分担者の楠城が中心となりマッチドフィルタ法を適用する事とし、気象庁の地震カタログより数倍の地震活動を検知する事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度の当初計画では、認定NPO法人「富士山測候所を活用する会」の富士山頂観測点に磁力計を設置する予定であったが、やはりコロナの状況が改善せず、特に山頂での作業が大きく制限される事となった。そのため令和5年度には、地磁気環境調査を主に実施した。 今後のデータ交換等の打ち合わせのため、国土地理院を訪問したが、国土地理院は富士山における地磁気観測から撤退を決定した事が判明した。今後、なんらかの形で、大学側で代替となる観測点を維持する事を考えている。 火山性地震の高感度抽出システムについては、順調に開発が進んでいる。今後は解析に使用するテンプレート地震の改良等も行っていく予定である。 火山監視では、ポータルサイトを通じてのリアルタイムのデータ公開およびそのデータを見方を一般市民に判りやすく解説する事が、火山噴火に対する基礎知識の底上げにも、啓発活動としても重要である。令和4年度もウエブを通じて太郎坊観測点のデータの公開を継続した。
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今後の研究の推進方策 |
噴火に先行する現象は地磁気変化も火山性地震の変化も微小である可能性が存在する。そのため、いかに微小な変化を客観的に抽出出来るかが課題となる。火山性地震については、現在はマッチドフィルタ法を用いて、発生個数を気象庁が従来の方法よりおよそ1桁多く決定できるが、マグニチュードの決定については、今後の課題である。現在テンプレート地震の改良および判別におけるパラメータサーチを実施している。 地磁気変化については、いかに日変化や、熱消磁による全磁力変化を高精度で検出できるかが課題であり、現状は主成分解析(PCA)および独立成分解析(ICA)をシステムに組み込んだ。今後、人工知能の導入や、火山性地震およびGNSSによる山体の変動等との比較を行えるシステムとしていく所存である。
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