研究課題/領域番号 |
21K04690
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松口 正信 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (50190434)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 水素ガスセンサー / 常温作動 / ポリアニリン / 水蒸気バリアー層 / 水素社会 / 二層構造 / 耐湿度 |
研究開始時の研究の概要 |
石油に代わる代替エネルギー源として水素の利用が進められているが、水素は可燃性ガスであるため安全の確保は必須であり、今後膨大な数の水素センサーが必要である。またその用途を考えると、加熱ヒーターの設置の必要がない常温作動型センサーの開発が望まれている。本研究では、常温作動で問題となる環境中の湿度の影響を抑制した新規水素センサーの開発を行う。そのために、柔軟なフィルム上に水素ガス検知層として導電性高分子であるポリアニリン(PANI)グラフト鎖を成長させ、さらに水分子のバリア層として疎水性の高分子を共重合させた二層構造を有する水素検知膜を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は、基板上に導電性高分子であるポリアニリン(PANI)グラフト鎖を検知層として成長させた常温作動型水素センサーを作製する初めての試みである。さらに、水蒸気バリアー層として疎水性高分子をPANIに共重合させた二層構造とすることで、水素ガス応答に対する湿度の影響を抑制する。以上の取組により、水素社会の実現に不可欠な実用水素ガスセンサーの構築を目指す。 補助事業2年目にあたる令和22年度は、二層構造を有するセンサーを作製し、その水素ガス応答特性について調べた。まず、PANIグラフト膜センサの応答を調べたところ、PANIを単に塗布しただけの場合と比較して2倍の大きな応答値が得られた。この応答値は、これまでに報告されている酸化物半導体や炭素化合物を用いた室温作動型水素ガスセンサの応答値と比較しても、十分に大きな値であった。さらに、応答速度もかなり早く、1分程度で平衡値に達した。これらのすぐれた水素ガス応答特性が得られた理由は、PANIをグラフト膜構造とすることでPANI鎖間に大きな自由体積が生じたためだと考えられる。その結果、膜内部へのガス拡散が容易になり、内部のPANI鎖とも容易に反応することができるようになったと考えられる。次に、PStをPANI鎖に共重合し水素ガス応答を調べた結果、PStバリアー層の付与は水素ガス検知の妨げにはならないことが確かめられた。また湿度の影響について調べたところ、加湿条件下では水素ガス応答値が減少したものの、バリアー層を付与していない場合と比較してその影響を抑制できることが確認できた。また、研究計画にはなかった試みとして、PSt球状マイクロ微粒子をバリアー層として積層した二層検知膜も作製したところ、より湿度の影響を抑制できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助事業2年目にあたる令和22年度までに、湿度バリアー層を有する二層構造型のPANI水素ガスセンサーの作製方法を確立した。また、水素ガス応答も測定し、PANIが室温作動型水素ガスセンサーの検知材料として有望であることも明らかにした。さらには、PSt層をバリアー層とする二層構造型センサーの水素ガス応答への湿度の影響についても調べ、PStバリアー層の付与が期待通り水素ガス応答への湿度の影響を抑制することに効果があることも確かめられた。また検証の過程で、研究当初の計画には含まれていなかった、PSt球状微粒子から成るバリアー層を付与した場合の有効性についても確認することができたことは良かった。
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今後の研究の推進方策 |
令和22年度までに得られた結果に基づき、最終年度となる令和23年度は、水素応答値への湿度の影響のさらなる抑制を図る。まず、PANI鎖へPStを共重合させた二層構造のセンサに関しては、PSt共重合層のPSt鎖長やグラフト密度の最適化を行う。ただし、これまでの作製方法では、PStを共重合時に脱ドープが起こって水素応答が得られなくなってしまったため、プロトン酸による再ドープをPSt共重合後に行っていた。しかしこの手法ではあまり高密度なPSt層を設けることができない。そこで、PSt共重合時に脱ドープが起こらないように、高分子型のドーパントを用いることを検討する。また、PSt球状マイクロ微粒子層を付与した二層構造のセンサでは、球状微粒子の直径の最適化、膜厚の最適化などを実施する。以上の研究を推進することにより、湿度の影響を受けない室温作動型水素ガスセンサーの構築を実現する。
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