研究課題/領域番号 |
21K04701
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
今井 裕司 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (40334693)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | マイクロカプセル / PVDFフィルム / エッチング / 内視鏡 / pHセンサ / 配向分極制御 / センサ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,有機強誘電体であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムを部分的に配向分極制御や表面加工処理を施すことにより,体内でマイクロカプセルを移動させる機構とカプセル自身が発電し動力を駆動する技術を確立し,内視鏡観察のみならず治療可能なマイクロカプセルを開発する。研究代表者がこれまで確立したPVDFフィルムの作製手法を用いることで,移動機構や発電デバイスの作製を容易にすることのみならず,体内のpHセンサの役割も果たせると考えるため,消化器官の健康状態を同時にモニターできるようなデバイスを開発することが本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
本研究では,有機強誘電体であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムを用いて,消化器官内でマイクロカプセルを移動させる機構の開発を目的とする。PVDFフィルムに配向分極処理や表面加工を施すことにより,電圧印加時のPVDFフィルムのひずみ量を制御して,マイクロカプセルの移動機構を確立する。これにより,診察や治療を行う検査部位にマイクロカプセルを誘導したり,任意の場所に滞留したりして治療を継続できる。さらに,我々が開発したPVDFフィルムを用いた水素ガスセンサをpHセンサへ応用してマイクロカプセルに取り付け,消化器官のpH値を測定することによって,健康状態をリアルタイムにモニターできるようなデバイスの構築を目指す。 令和4年度は電圧印加時に比較的変位量の大きい逆圧電性を有したPVDF系強誘電体(P(VDF-TrFE-CTFE))フィルムを用いて,マイクロカプセルの移動機構の検討を行った。PVDF系強誘電体フィルムを3種類の有機溶媒で溶液塗布法にて作製し,フィルムに直流電圧を印加した時の変位量の測定を行った。その結果,HMPA(ヘキサメチルリン酸トリアミド)溶媒で作製したフィルムの変位量が最も大きかった。フィルムの膜厚が小さいほど,電圧印加時の変位量が大きくなる傾向が見られ,印加電圧の増加に伴い変位量が大きくなることが確認できた。さらに,PVDFフィルムにパラジウム(Pd)を堆積させたpHセンサについては,実際の消化液に近い溶液を用いてpH値を調整し,フィルムからの出力電圧の測定を行った結果,溶液のpH値の変化に伴いpHセンサの出力電圧が変化することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は,逆圧電性が大きいPVDF系強誘電体(P(VDF-TrFE-CTFE))フィルムを用いて,マイクロカプセルの移動機構の検討を行った。走査に必要なフィルムの変化量を確認するために,PVDF系強誘電体フィルムの作製条件と電圧印加時のフィルムの変化量を調査した。PVDF系強誘電体フィルムの硬軟度を調整するために,3種類の有機溶媒(ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA),ジメチルスルホキシド(DMSO),N,N-ジメチルホルムアミド(DMF))を用いて溶液塗布法にて作製し,フィルムに直流電圧を印加した時の変位量の測定をレーザー変位計により行った。その結果,HMPA溶媒で作製したフィルムの変位量が最も大きかった。フィルムの膜厚が小さいほど,電圧印加時の変位量が大きくなる傾向が見られ,印加電圧の増加に伴い変位量が大きくなることが確認できた。今後,令和3年度に検討したフィルムのエッチング長さと幅,ピッチ幅,パターンを考慮することで,カプセル内視鏡を移動させる機構を確立していく。 さらに,PVDFフィルムにパラジウム(Pd)を堆積させたpHセンサについては, pH値の調整が可能な溶液中で,pHセンサの出力電圧が変化したことから,pHセンサへの応用が可能なことを令和3年度に確認している。令和4年度は,実際の消化液(塩酸,炭酸水素ナトリウム)に近い溶液を用いて測定を行った結果,溶液のpH値の変化に伴いpHセンサの出力電圧が変化することが確認できた。 以上,当初の研究実施計画の達成度として,おおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,PVDF系強誘電体(P(VDF-TrFE-CTFE))フィルムをマイクロカプセルの外壁に巻き付け,それを振動させてカプセルを移動させるために,フィルムの固定方法や印加電圧の条件(直流,交流(周波数・位相)),信号パルス入力の方法などをさらに検討し変位量の関係を調査する。また,ガラスなどの基板上にチオール修飾またはc軸配向した酸化亜鉛薄膜を部分的に塗布し,その上にPVDF系強誘電体フィルムを形成することにより,フィルムの一部分を配向分極制御することや,フィルムの表面をエッチング加工(エッチング長さと幅,ピッチ幅,パターンなど)することにより,電圧印加時の変位量との関係性を調査する.pHセンサについては,Pd電極の構造の検討を行い,より高感度のセンサを作製して,pHセンサのカプセル内視鏡への搭載を目標にしていく。
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