研究課題/領域番号 |
21K04739
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26060:金属生産および資源生産関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
高須 登実男 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (20264129)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | ヒ酸鉄 / スコロダイト / 固相変態 / 結晶化 / 非晶質 / 結晶性 / 処理特性 / 操作因子 |
研究開始時の研究の概要 |
銅製錬をはじめとして非鉄製錬では、しばしばヒ素が鉱石中に含まれており、製錬工程で分離されている。ヒ素は有害金属であり、厳しい環境規制が導入されているために大きな市場を持たず、通常は安定化して保管されている。結晶質のヒ酸鉄であるスコロダイト鉱物は安定であるためヒ素固定のための適切な化合物といえる。本研究ではスコロダイトを生成するための安定で安価な新規プロセスの開発を目指す。そのために、気相中にて結晶化させる方法、すなわち固相変態によるスコロダイトの生成を対象として取り上げ、結晶化の挙動と生成物の性状に及ぼす各種の結晶化条件の影響を系統的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
銅製錬をはじめとして非鉄製錬では、しばしばヒ素が鉱石中に含まれており、製錬工程で分離されている。ヒ素は有害金属であり、厳しい環境規制が導入されているために大きな市場を持たず、通常は安定化して保管されている。結晶質のヒ酸鉄であるスコロダイトは安定であるためヒ素固定のための適切な化合物といえる。本研究ではスコロダイトを生成するための安定で安価な新規プロセスの開発を目指す。そのために、非晶質のヒ酸鉄を経由して気相中にて結晶化させる方法、すなわち固相変態によるスコロダイトの生成を対象として取り上げ、結晶化の挙動と生成物の性状に及ぼす各種の結晶化条件の影響を系統的に明らかにすることを目的としている。 今年度は、まず、出発原料として非晶質のヒ酸鉄を作製した。30℃に保った Fe 0.43 mol/L の硫酸鉄水溶液 350 mL に NaOH 1.7 mol/L を含む As 1.0 mol/L のヒ酸水溶液 150 mL を滴下し、300 rpm で 24 h 保持した。懸濁溶液から残渣を遠心分離により回収し72 h 乾燥させたものを非晶質ヒ酸鉄試料とした。次に、非晶質ヒ酸鉄試料を加圧下で保持する結晶化実験を実施した。結晶化実験については、初年度の研究で構築した実験方法の改良を行った。具体的には、結晶化実験に用いるプレス機を油圧式からねじ式に変更し、時間経過による加圧力の減衰を少なくした。さらに、密閉に用いるゴムをシリコンゴムからフッ素ゴムに変更し、加圧下での密閉性を向上した。結晶化実験の保持温度を 95℃、保持時間を 24 h、加圧力を 0, 32, 64, 96 MPa とした。 非晶質ヒ酸鉄は 0.1 um 程度の粒子であったが、結晶化実験後の試料表面近傍に粒子の凝集あるいは成長が見られ、2 um 以上となっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、非晶質ヒ酸鉄の結晶化の挙動と生成物の性状に及ぼす各種の結晶化条件の影響を系統的に明らかにすることを目的としている。 今年度までの研究では、まず、研究手法の基礎の一つとなる、温度や圧力を制御して結晶化を行う装置を設計、製作した。また、出発原料としての非晶質ヒ酸鉄を作製するための基本的な手順を策定した。さらに、非晶質ヒ酸鉄の結晶化実験の基本的な手順についても策定した。 策定した手順に基づき特定の条件で非晶質ヒ酸鉄の作製を実施した。そして、得られた非晶質ヒ酸鉄を出発原料として、特定の条件にて試料を保持する結晶化実験を行った。特に、常温で事前に加圧成形した非晶質ヒ酸鉄試料を水蒸気飽和雰囲気で保持する結晶化実験と水添加量を変えた試料を加圧下で保持する結晶化実験を実施した。さらに、非晶質ヒ酸鉄試料を加圧下で保持する結晶化実験を複数の加圧力、保持時間で実施した。 結晶化実験で得られた試料について、SEM で粒度や表面形状、XRD で結晶性、TG-DTA で熱的挙動と水分量の測定を行った。いずれの結晶化実験の方法と条件においても結晶化が進行していることが確認されたが、実験データ数および実施した性状調査項目数が少ないこともあり、結晶化に及ぼす基本操作因子の影響までは明確になっていない。 以上の状況より、研究の進行が若干遅れている点はあるものの、着実に成果を上げつつあると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で製作した装置と、構築した実験条件および方法を基本として、各種の操作因子が結晶化挙動に及ぼす影響を系統的に調査していく。 結晶化の基本操作因子としては、保持温度、保持圧力、時間、水の添加量、非晶質ヒ酸鉄の事前脱水、種結晶の種類と大きさおよび添加量等がある。また、非晶質ヒ酸鉄の作製方法による影響も考慮する。そのため、非晶質ヒ酸鉄の作製方法と生成されるヒ酸鉄の性状との関係についても調査する。 結晶化実験前後の試料の性状調査を実施する。ICP-AES で組成、XRD で結晶性、SEM で粒度や表面形状、TG-DTA で熱的挙動と水分、TEM で微細構造の分析等を行う。また、pH を変えた浸出実験を行い、結晶性と溶出性を評価する。以上の結果をとりまとめ、新規プロセスを検討し評価する。 これら一連の系統的な実験によって、結晶化の挙動と生成物の性状に及ぼす各種結晶化条件の影響を系統的に明らかにする。操作因子を単純に組合せた場合には膨大な量の実験条件になる。また、各実験についての評価項目も多い。そのため、逐次データをまとめ、結果を参照し予想しながら、条件と評価項目を絞って、効率的に研究を進める。得られた知見に基づいて安定で安価な新規プロセスについて検討を行う。
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