研究実績の概要 |
主にチタンの陽極酸化プロセスにおける強磁場印加の影響について調査した。また,アルミニウムおよびジルコニウムの陽極酸化挙動についても調査し,その知見を踏まえて,全体の考察を進めた。まず,磁場印加の影響が明確に現れる電解質の選定調査を行い,エチレングリコールを主成分とする有機電解質を採用した。無磁場,4, 6, 8 Tの垂直磁場,4, 8 Tの平行磁場での実験を行い,膜厚形成速度がそれぞれ、0.20, 0.31, 0.37, 0.28, 0.23, 0.25 μm/min.であり、磁場印加はナノチューブ形成を促進させることがわかった。これはMHD効果による対流がイオンの拡散を促進させたためであると考えられる。ここで,平行磁場を印加した場合には処理時間30分間以降の酸化被膜孔径が無磁場の孔径よりもわずかに減少した。これはマクロ的なMHD対流の影響であると考えられる。一方,水溶液系電解質溶液での陽極酸化中に磁場印加を行ったところ、ナノチューブの形成が不十分であった。これは酸化反応よりも溶解反応が支配的になったためであると考えられる。これは,アルミニウムの実験結果でも観察でき,金属の陽極酸化挙動では普遍的な知見といえる。 チタンの陽極酸化に現敵して,JIS R 1703-2の光触媒性能試験を行った。無磁場,4, 6, 8 Tの垂直磁場,4, 8 Tの平行磁場で作製した陽極酸化被膜の分解活性指数はそれぞれ、5.0, 7.3, 6.6, 5.9, 7.8, 5.6 nm/minであり磁場印加によって光触媒性能を向上させることができた。陽極酸化への磁場印加は有用性があると考えられる。
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