研究課題/領域番号 |
21K04795
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
河原崎 泰昌 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (80303585)
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研究分担者 |
田中 瑞己 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70803344)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 出芽酵母発現系 / 組換え蛋白質 / 難生産性蛋白質 / 転写因子 / 難生産性組換え蛋白質 / 酵母異種蛋白質発現系 / 機能未知転写因子 / レアコドン / プロモーター / 組換え蛋白質分泌生産 / 遺伝子工学 / 遺伝子発現制御 / 酵素 / 遺伝子発現 / 蛋白質生産 / 進化工学 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代シーケンサーの普及により、利用可能な遺伝子・cDNAの配列情報は急速に拡大している。その一方、遺伝子産物である蛋白質や酵素の調製・解析は、依然として組換え発現系の構築・最適化が必要であり、試行錯誤的である。さらに、すべての遺伝子が組換え生物で活性型発現するわけではなく、発現に伴い宿主に毒性を示す蛋白質・酵素も多い。 本研究は、種々の組換え蛋白質および宿主を用いて蛋白質折りたたみに関する基礎情報を収集し、折りたたまれやすい蛋白質 の配列の予測を試みる研究である。同時に、細胞毒性を示すために低収量となる蛋白質・酵素の生産に適した、新たなプロモーターを用いた組換え蛋白質生産システムを構築する。
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研究実績の概要 |
発現による宿主細胞への毒性や、不十分な折りたたみにより活性型発現が困難である「難生産性組換え蛋白質」の発現系を構築し、難生産性の効率的回避手段を提案することを目的とする。これまでに「組換え酵母細胞を高密度に懸濁し、発現誘導を行う」という簡便な操作により、難生産性蛋白質の分泌生産量が飛躍的(菌体あたり千倍)に高まる現象を見出し、この「高密度発現系」の分子機構を基礎として研究を展開してきた。 高密度発現系において発現量が増大する宿主遺伝子としてYgr067C遺伝子に着目した。同遺伝子は機能未知の転写因子をコードしており、自身の発現を負に調節した。その後の解析により、培地中の糖濃度の低下に応答して同遺伝子の発現量が増加し、ミトコンドリア蛋白質をコードする遺伝子の発現を調節すること、無酸素条件下で細胞をG1期で停止させること、発現した転写因子は細胞周期に依存して分解されることを明らかにした。同遺伝子欠損株は、無酸素条件下における細胞周期の停止が明確ではなく、定常期における蛋白質合成速度が増大していた。同遺伝子のプロモーター領域を目的蛋白質遺伝子に連結し、同遺伝子欠損株にて発現させたところ、培養後期に著量の蛋白質を生産することが可能となった。 他方、出芽酵母で発現毒性を示す分泌蛋白質である糸状菌β-ガラクトシダーゼ(lacA蛋白質)をモデル蛋白質として、同酵素の活性型発現が生育にとって必須となる培地条件(ラクトースのみを炭素源とする低栄養合成培地)を用い、プロモーターの最適化を行った。具体的には、lacA遺伝子上流域に酵母染色体DNAの限定加水分解断片をクローン化してライブラリーを作製し、平板寒天培地上で繰り返し良好生育株を選別した。選択されたプロモーター配列の性質決定を行ったところ、恒常的に弱い遺伝子発現を引き起こすDNA断片が最適プロモーターとして選択されたことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未知転写因子Ygr067C欠損株の網羅的解析により、同遺伝子の発現制御を受けている遺伝子の候補を同定することができた。クロマチン免疫沈降を用いた結合部位の解析により、ミトコンドリア蛋白質をコードする遺伝子上流域の幾つかが同定されたほか、幾つかの糖輸送蛋白質遺伝子の上流域が結合部位としてマッピングされた。さらに、同遺伝子欠損株が示す顕著な表現型を特定することができた。また、培地中の酸素の有無と同遺伝子産物の発現量の関係も明らかにすることができた。 これらの成果の一部は令和4年度日本生物工学会大会で発表した。 他方、難生産性蛋白質の生育連動型生産を可能にする人工プロモーター配列の創生・性質決定を試み、これに成功した。得られた人工プロモーター配列は、既存の出芽酵母プロモーターとはまったく異なる領域に由来する配列であり、宿主増殖フェイズや培地成分に依存せず、恒常的に弱い転写を引き起こす配列であった。出芽酵母異種遺伝子発現系で多用される他のプロモーター配列と比較して、いずれのものよりも良好な異種蛋白質生産量を与え、宿主の生育は良好であった。 他の難生産性蛋白質の候補を探すため、別の食用菌類の酵素遺伝子(cDNA)の取得を試み、いくつかの候補分泌生プロテアーゼ遺伝子のクローニングに成功した。このうちのいくつかは通常の誘導性発現プロモーターで活性型発現し、性質決定を行うことができた。これらは、令和5年度日本生物工学会大会で発表予定である。他方、生育阻害もなく活性型発現もしない遺伝子については、その後の発現条件の最適化は進行していない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
未知転写因子Ygr067Cのプロモーター領域を詳細に解析し、異種蛋白質発現系の人工プロモーターとして使用できることを証明する。同遺伝子の発現制御、標的遺伝子群のデータを整理し、追実験を行う。また同遺伝子欠損株の表現型を精査し、特に培養特性を明らかにする。遺伝子発現系の宿主としての利用を念頭におき、効率的発現法の確立を目指す。これらを英文誌に投稿し、研究成果を公表する。 バクテリオファージを用いた配列人工進化システムの追試、他サンプルを用いた実証実験を行う。この人工進化システムでは、可溶性蛋白質の発現量は増大するが、活性を失った変異配列に収斂することが多く、実用性が乏しいことが課題となっている。蛋白質の折りたたみに影響を与える重要部位を特定するシステムとして利用できないか、引き続き検討を行う。
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