研究課題/領域番号 |
21K05032
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
近藤 慎一 山形大学, 理学部, 教授 (20281503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | アニオン認識 / リン酸トリアミド / P-キラル / キラル認識 / 水素結合 |
研究開始時の研究の概要 |
3つの異なる官能基を有することにより、リン原子上にキラル中心を有するリン酸トリアミドを合成し、アニオンのキラル認識を達成する。まず、対応するリン酸トリアミドを合成し、キラルなアニオンとの会合によるジアステレオマー形成を用いて、光学分割することでキラルなリン酸トリアミドを得る。次にそれらのアニオン認識能について、種々の分光学的な手法によって評価する。さらに会合能の向上を目的として、複数のキラルリン酸トリアミドを分子内に有するレセプターを構築し、その会合能とキラル選択性について検討を行う。また、これらの成果をもとにして、不斉有機分子触媒としての有用性についても検討を行う。
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研究実績の概要 |
アニオン認識化学は生体、環境分野で重要なため近年盛んに研究されている。本研究では、リン酸トリアミドの3つの置換基がすべて異なり、リン原子が不斉中心となるP-キラルなリン酸トリアミドの合成と、そのアニオン認識能について評価することを目的とする。 令和4年度は3つの異なる置換基を有するリン酸トリアミドの1つの置換基に中心不斉を有する官能基を導入したレセプターについて、合成と分離を検討した。リン酸トリアミドにフェニル基、メトキシフェニル基に加え、L-ロイシンメチルエステルもしくはL-フェニルグリシンメチルエステルを導入することで、2つのジアステレオマーを合成した。1H NMRにおいて、ジアステレオマーに由来する2種のピークがそれぞれ観測された。また、逆相HPLCを用いた分析により、2つのジアステレオマーがほぼ完全分離する条件を見出した。これらの結果は、リン酸トリアミドがP-キラリティを有しており、実時間においてキラル反転を伴わず安定に存在していることを意味している。さらに、分取HPLCカラムを用いて、2種の側鎖を有するリン酸トリアミドについて、それぞれ2つのジアステレオマーを少量ながら単離することに成功した。それぞれのジアステレオマーについて、NMRの各種ピークを同定した。現在それぞれのジアステレオマーについてのアニオン認識能について検討を行っている。 こられ化合物はP-キラルなリン酸トリアミドを実証した初めての例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究計画では、ラセミ体で得られた3置換リン酸トリアミドの光学分割を達成することを目的とした。具体的には、キラルな側鎖を有する3置換リン酸トリアミドを合成し、この生成物は側鎖のキラリティとリン中心のキラリティを両有することからジアステレマーとなるため、カラムクロマトグラフィー、HPLC、再結晶などによって2つの異性体を分離することを計画し、これによってP-キラルなリン酸トリアミドをまず確認する。研究実績にも記したように、これらの計画を十分に達成し、初めてのP-キラル化合物の実証と分離を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、得られたジアステレオマーそれぞれについて、そのキラル認識能を検討する。特にP-キラルの影響について、詳細に検討する予定である。また、少なくとも一方のジアステレマーに関して、単結晶を得ることでX線結晶構造解析によってリン中心の立体配置を決定する。 また、ヒドロキシ基などを3つ目の置換基として有するリン酸トリアミドにエステル結合でキラル中心を導入することで、ジアステレマーへと誘導体したリン酸トリアミドを合成し、加水分解によってキラル中心を有する置換基を外すことによって、P-キラルなリン酸トリアミドのエナンチオマーの合成を試行する。 また、すでに着手している側鎖によりπ面の広い芳香環であるナフチル基やピレニル基を有するP-キラルリン酸トリアミドについても合成し、蛍光センサーや広いπ面を利用した分子認識能について検討をする。 これらの検討から3年の本研究をまとめる予定である。
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