研究課題/領域番号 |
21K05032
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
近藤 慎一 山形大学, 理学部, 教授 (20281503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アニオン認識 / リン酸トリアミド / P-キラル |
研究実績の概要 |
アニオン認識化学は生体、環境分野で重要なため近年盛んに研究されている。本研究では、リン酸トリアミドの3つの置換基がすべて異なり、リン原子が不斉中心となるP-キラルなリン酸トリアミドの合成と、そのアニオン認識能について評価することを目的とする。 令和3年度は、3つの異なる置換基を有するリン酸トリアミドの合成法の開発を行った。塩化ホスホリルを出発原料にジクロロメタン中、2当量のアニリンと反応させることにより1置換生成物を得た。続いて、2当量の4-メトキシアニリンをクロロホルム中で反応させることにより、ラセミ体の2置換体を得たが、精製が困難であった。この2置換体に1-ブチルアミン、ベンジルアミン、tert-ブチルアミンを反応させることにより、3種のことなる3置換リン酸トリアミドをラセミ体として得た。 また、フェニル基を有する1置換体に4-ヒドロキシアニリンを反応後、1-ブチルアミンを反応することで、別の3置換体を合成した。これのヒドロキシ基とN-アセチルアミノ酸誘導体を縮合することで、ジアステレオマーへと誘導し、光学分割について検討していく。また、これらレセプターの一部については、酢酸アニオン、リン酸二水素アニオン、塩化物アニオンについて、重アセトニトリル中での会合能をNMR滴定によって検討した。 以上のように、令和3年度は異なる3つの置換基を有するリン酸トリアミドの合成手法について開発し、いくつかの化合物を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アニオン認識化学は生体、環境分野で重要なため近年盛んに研究されている。アニオン認識部位として、種々の水素結合ドナーが利用されているが、リン酸トリアミドは3つのN-Hによって協同的にアニオンを捕捉可能であり、その3次元的な水素結合部位の配置は種々のアニオンレセプターや、その応用を考える上で、有用であると考えられる。そこで幾つかのリン酸トリアミドについてアニオン認識能を調査したところ、尿素に匹敵する認識能を有していることを明らかとした。本研究では、リン酸トリアミドの3つの置換基がすべて異なり、リン原子が不斉中心となるP-キラルなリン酸トリアミドの合成と、そのアニオン認識能について評価する。 令和3年度は、3つの異なる置換基を有するリン酸トリアミドの合成法の開発を行った。塩化ホスホリルを出発原料にジクロロメタン中、2当量のアニリンと反応させることにより1置換生成物を得た。続いて、2当量の4-メトキシアニリンをクロロホルム中で反応させることにより、ラセミ体の2置換体を得たが、精製が困難であった。この2置換体に1-ブチルアミン、ベンジルアミン、tert-ブチルアミンを反応させることにより、3種のことなる3置換リン酸トリアミドをラセミ体として得た。 また、フェニル基を有する1置換体に4-ヒドロキシアニリンを反応後、1-ブチルアミンを反応することで、別の3置換体を合成した。これのヒドロキシ基とN-アセチルアミノ酸誘導体を縮合することで、ジアステレオマーへと誘導し、光学分割について検討していく。また、これらレセプターの一部については、酢酸アニオン、リン酸二水素アニオン、塩化物アニオンについて、重アセトニトリル中での会合能をNMR滴定によって検討した。 以上のように、令和3年度は異なる3つの置換基を有するリン酸トリアミドの合成手法について開発し、いくつかの化合物を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度においては、ラセミ体で得られた3置換リン酸トリアミドの光学分割を達成することを目的とする。まずキラルな側鎖を有する3置換リン酸トリアミドを合成する。この生成物は側鎖のキラリティとリン中心のキラリティを両有することからジアステレマ-となるため、カラムクロマトグラフィー、HPLC、再結晶などによって2つの異性体を分離することが可能であると考えられる。これによってP-キラルなリン酸トリアミドをまず確認する。 次いで、合成した3置換リン酸トリアミドを用いて両エナンチオマーもしくは一方のエナンチオマーを分離する。光学分割としては、過剰量のキラルアミノ酸存在下で再結晶により一方のジアステレオマー錯体を得て、アニオンを除去する方法が挙げられる。また、分子内にヒドロキシもしくはアミノ基を有する誘導体を合成し、それら官能基とキラルなα-アミノ酸誘導体とを縮合そ、再結晶、カラムクロマトグラフィーを用いて両ジアステレオマーを分離した後、エステル結合などを加水分解することで、エナンチオマーを分離する手法も考えられる。また、より直截的に分取キラルHPLCを導入することで、両エナンチオマーへの分割も考慮に入れる。 また、ナフチル基やピレニル基、ピレニルメチル基を有するリン酸トリアミドの合成手法についても検討する。これら蛍光性官能基はもちろんゲスト添加による蛍光応答が期待できるが、それらの広いπ面は、ゲストのπ面やC-H-π相互作用など種々の比較的強い分子間相互作用の部位としても利用可能であるため、これら化合物の合成を達成する。 一方のエナンチオマーが得られた時点で、キラルなゲストとの会合について検討を始める。NMR滴定を中心に検討する予定であるが、先に示した蛍光性レセプターの場合にはUV-visスペクトルや蛍光スペクトル滴定を利用可能と考えられるので、これら手法によってもキラル認識能を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で学会開催が中止もしくはオンライン開催となり、また、外部への測定のための出張も控えたために旅費については支出がなかった。また、購入予定の物品(特にキラルカラムなど選定が必要な物品など)について、研究進行の都合上2021年度には購入できておらず、本年度において購入を予定している。
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