研究課題/領域番号 |
21K05033
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
吾郷 友宏 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (90466798)
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研究分担者 |
安田 琢麿 九州大学, 高等研究院, 教授 (00401175)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 有機ホウ素化合物 / 蛍光分子 / 熱活性化遅延蛍光 / ヘテラボリン / 発光材料 / 有機エレクトロルミネッセンス / 有機典型元素化学 / 典型元素化学 / 近紫外発光体 / 有機ホウ素化学 |
研究開始時の研究の概要 |
パイ共役骨格にホウ素を導入したラダー型ヘテラボリンを基本構造とし、熱活性化遅延蛍光特性を付与することで近紫外光を発する有機エレクトロルミネッセンス(EL)用発光体を開発する。本発光体と青・緑・赤の蛍光材料を組み合わせたHyperfluorescence素子を構築しフルカラー有機ELディスプレイや照明へ応用すると共に、医療用紫外光源への利用を検討し、水銀フリーの紫外光源の高効率化に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究では、良好な蛍光発光特性を持つ有機ホウ素化合物であるジベンゾヘテラボリン構造を複数連結した、ラダー型骨格を有する発光体の開発を行い、紫外領域で動作する熱活性化遅延蛍光(TADF)材料への展開を行う。このような短波長発光体は、紫外有機ELやhyperfluorescence用光源への活用が期待されるが、可視領域の発光体に比して発光効率や材料寿命、色純度などの点で大きく劣っており、革新的な紫外発光体の開発が望まれている。 研究代表者はこれまでに、前述したラダー型構造を持つジベンゾヘテラボリンをアクセプター部位としたドナー・アクセプター型または多重共鳴型の青色TADF発光体を報告しており、本構造がTADFの特性向上に有効であることを見出している。そこで本研究では、ラダー型ジベンゾヘテラボリンを基本構造とし、ホウ素上置換基または共役系の構造を変更することで発光帯域を短波長シフトさせ紫外TADF特性の発現を検討した。 今年度は、ジベンゾヘテラボリンに比して共役系を短縮したジチエノチアボリン骨格を持つドナー・アクセプター型分子の合成と性質について検討を行った。目的とした紫外発光を得ることはできなかったが、ドナーとしてフェノチアジンを導入したドナー・アクセプター型ジチエノチアボリンが二重発光特性を持つことを見出した。種々の分光学的検討および理論計算から、二重発光のうち短波長側は通常のπ-π*励起状態からの発光であり、長波長側の発光はフェノチアジン部位とジチエノチアボリン部位とのねじれに起因した電荷移動励起状態の形成に起因したものであることを明らかにした。また、ホウ素上置換基を酸素原子としたボリン酸エステル型発光体については、縮環骨格にボリン酸エステル構造を埋め込んだ多重共鳴型分子の合成を行い、本分子が近紫外領域で良好な発光性を持つことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要で述べたように、ドナー・アクセプター構造のジチエノチアボリンにおいて二重発光の発現を見出し、これがドナーであるフェノチアジン部位と、アクセプターであるジチエノチアボリン部位とのねじれに起因したものであることを明らかにした。また、二重発光挙動が溶媒の温度や極性、粘性に応答することを見出し、ドナー・アクセプター型チアボリンが環境センサーとしての性質を持つことが分かった。 しかしながら、本研究の主目的であるヘテラボリン分子の発光波長短縮については、ジベンゾヘテラボリンからジチエノチアボリンへの共役系短縮では目的を達成することはできなかった。 一方、三臭化ホウ素を用いる直接ボリル化反応を用いることで、ジベンゾアザボリンに対してボリン酸エステル構造を簡便に導入できることを見出し、この方法によってボリン酸エステル骨格を持つラダー型ジベンゾヘテラボリンの合成に成功した。本化合物は、ジベンゾアザボリンに比して吸収・発光波長が顕著に短縮しており、ボリン酸エステル構造の導入が紫外発光特性の発現に有効であることを明らかにした。しかしながら、本分子はTADF特性に重要な一重項励起状態-三重項状態間のエネルギー差(S-Tエネルギー差)が比較的大きいため、TADF発光体へ応用するためにS-Tエネルギー差の縮小が必須である。また、発光をさらに短波長化し完全な紫外発光を実現するために、共役系の短縮などを検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の検討で、ボリン酸エステル部位を持つラダー型アザボリンの合成法を確立し、ボリン酸エステル部位の導入によってジベンゾヘテラボリンの発光の短波長化が可能であることを見出した。令和5年度の計画では、ボリン酸エステル構造を持つラダー型ジベンゾアザボリン分子を基本として、S-Tエネルギー差を縮小することでTADF特性の発現を検討する。S-Tエネルギー差の縮小には複数の窒素・ホウ素原子を縮環共役系に導入した多重共鳴構造の活用が有効であるため、ジベンゾアザボリン部位を複数導入したラダー型分子構造にボリン酸エステル部位を組み合わせた、多重共鳴型かつボリン酸エステル型の発光体の合成を検討する。具体的には、筆者が報告したジベンゾアザボリンとハロベンゼンのカップリングを活用することで、2つのジベンゾアザボリン構造をナノグラフェン骨格に埋め込んだ多重共鳴型分子を合成し、その光学的性質を明らかにする。 また、直接ボリル化がボリン酸エステル構造を持つ縮環骨格の構築に有効であることが分かったので、本反応を適用した含ホウ素多環共役分子の合成と発光特性についても検討を行う予定である。具体的には、複数のジベンゾアザボリン骨格とボリン酸エステル部位をアセン構造に埋め込んだ含ホウ素共役分子の構築と光学的性質について検討する。
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