研究課題/領域番号 |
21K05034
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
村岡 貴子 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40400775)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 中員環化合物 / 12~13族元素化合物 / 合成 / 構造 / 反応性 / 合成戦略構築 / 13族元素 |
研究開始時の研究の概要 |
主に炭素と水素で構成された物質(有機化合物)は,天然に多く存在し,人工的にも多種類のものが合成されています。しかし,特殊な構造を持つ有機化合物の中には,効率的な合成法が確立されていないものもあります。本研究では,これまでにあまり注目されてこなかった8~12員環化合物(8個から12個の元素で構成された環状物質)の合成戦略の構築を最終目標に掲げ,合成戦略構築に寄与する基礎的知見を得るために,10員環化合物の性質について明らかにします。
|
研究実績の概要 |
本研究は,ルイス酸性元素を含む中員環化合物の合成手法を確立し,得られた中員環化合物の性質について明らかにすることを目的としている。我々のグループでは,ジルコナシクロペンタジエン誘導体とトリクロロガランとの反応により,ガリウムを2つ含む10員環テトラエン誘導体が生成することを見出した。この反応は,ガリウム―炭素結合が分極しており,ガリウムの空のp軌道が電子豊富なsp2炭素と相互作用することで進行することが理論計算により示唆された。 今回,ルイス酸性元素を含むハロゲン化物として,塩化亜鉛を用いてジルコナシクロペンタジエン誘導体との反応を行ったところ,10員環テトラエン誘導体は生成せず,亜鉛を3つ含む15員環ヘキサエン誘導体が生成することを見出した。得られた化合物は既知であったが,合成手法が異なることが分かった。また,含亜鉛15員環ヘキサエン誘導体の反応性は明らかにされていなかった。 そこで,含亜鉛15員環ヘキサエン誘導体とロジウム(I)錯体との反応を行ったところ,ブタジエンフラグメントが亜鉛からロジウムに移動し,ロジウムを含む5員環ジエン誘導体であるロダシクロペンタジエン配位子を含む錯体が生成することが明らかになった。生成した錯体の亜鉛およびロジウムの酸化数について知見を得るためXPS測定を行ったところ,それぞれZn(II)およびRh(I)であることが分かった。単結晶X線結晶構造解析の結果得られた固体構造,およびXPS測定の結果から,得られた錯体の構造を提案した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に示した通り,ジルコナシクロペンタジエン誘導体とルイス酸性元素ハロゲン化物との反応として,これまでに塩化ガリウム,塩化アルミニウム,塩化亜鉛との反応を行い,それぞれ10員環テトラエン誘導体,アルミニウムとジルコニウムを含む錯体,および15員環ヘキサエン誘導体が生成することを見出している。これらの成果は,ルイス酸性元素を含む中員環化合物の合成戦略の確立に向けて,ルイス酸性元素の元素特性を知る重要な成果であると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は,ジルコナシクロペンタジエン誘導体と低原子価14族元素ハロゲン化物との反応により,新たに低原子価14族元素を含む中員環化合物が合成できるか検討する。更に,現在得られているガリウムを含む10員環テトラエン誘導体と亜鉛を含む15員環ヘキサエン誘導体の反応性について開拓する。 含13族元素化合物の中で,13族元素フラグメントの交換反応が起こることが知られている。従って,ガリウムを含む10員環テトラエン誘導体にガリウム以外の13族元素ハロゲン化物を反応させ,ホウ素,アルミニウム,インジウムフラグメントを含む中員環化合物が生成するか検討する。 有機亜鉛試薬は,根岸カップリングをはじめとする多くの有機合成反応に利用されている有用な化合物であるが,含亜鉛15員環ヘキサエン誘導体のような,環状亜鉛化合物の有機亜鉛試薬としての反応性はほとんど検討されていない。そこで,亜鉛を含む15員環ヘキサエン誘導体を有機亜鉛試薬として用いる,有機合成反応の開拓を目指す。
|