研究課題/領域番号 |
21K05180
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
藤森 厚裕 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00361270)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 金属捕集 / 界面膜 / ポリグアナミン誘導体 / 捕集選択性 / 蛍光発光 / レアアース / 環状部位 / 配座転移 / polyguanamine / metal collection / selectivity / interfacial monolayers / 組織化膜 / 金属脱着 |
研究開始時の研究の概要 |
環状部位を有するポリグアナミン誘導体の超分子組織化により,レアアース/レアメタル等を含む水溶液中の金属カチオンを選択的に捕集し,更には脱離回収する分子技術を確立する.即ち,環内部に豊富な非共有電子対由来の陰電場域を形成可能な上記誘導体を,標的金属カチオンを含む下相水上に分子性薄膜として展開し,比較的弱い静電的相互作用による"金属捕集"を実現する.加えて簡便な超音波処理のみで,捕集金属を高効率に『脱着・回収する手法』の開拓を目指す
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研究実績の概要 |
研究実施期間である2年である昨年度は,環状部位と,"剛直な"芳香族リンカー,または"柔軟な"脂肪族リンカー部位を持つポリグアナミン誘導体の単分子膜による,金属捕集能を気/水界面で実現した. 先ず,Pd2+イオンの脱離挙動に関して,芳香族リンカー,または脂肪族リンカーを有する2種のポリグアナミン誘導体誘導体組織化膜に於いて,明確な差異を確認した.また,ポリグアナミン誘導体の組織化膜の形成から生じた環状部位は,平面配座ではなく,カップ状配座であることを明らかにした. 捕集金属イオンをCd2+にした場合,前出のPd2+と同じ価数であるが故,下相水からの捕集挙動において,各種誘導体の界面単分子膜の間に有意差は無かった.一方で,Na+やNd3+に価数が変わると捕集特性に変化が確認された.脱離挙動に於いて確認された差異の原因は,リンカー ユニットの置換による環状部位の傾斜角の変化と推定した.つまり環状部位の歪み角とイオン半径の組み合わせにより,捕集した金属カチオンが脱離しにくい構造が生じる場合があると推定された. 更に,環状部分を含むポリグアナミン誘導体の界面膜が金属捕集に対して選択性を有することを実証した.加えて,捕集された金属種に依存する蛍光発光の選択性が確認された.ポリグアナミン誘導体の水面上単分子膜における金属捕集は,イオン半径と価数に応じて,下相水中に存在する金属カチオンに対して極端な選択性を示した.即ち,イオン半径が小さく価数の大きい金属カチオンが優先的に捕集される傾向にあることが確認された。 これは,典型的な金属脱離挙動と一致しており,脱着がより困難な陽イオンが優先的に捕集された.更に,環状部位でのカップ状配座の傾斜角は、捕集選択性と相関していた. 加えて,蛍光の発光と消光は,捕集した金属種に応じて大幅に変化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施期間3年間中の2年目に於いて,レアアースに属するネオジム,レアメタルであるパラジウム,有害金属としてカドミウムを含む下相水其々から,リンカー部位を様々に作り分けたポリグアナミンの水面上単分子膜によって,金属捕集を達成している.また,捕集金属種によって回収効率の差異はあるものの,簡便な超音波処理を用いた,捕集カチオンの脱離回収技術も確立した.更にこの2年目に於いては,複数の金属を下相水に含む水溶液上では,捕集金属に明確な選択性が生じることを明らかにした.捕集し易い金属は,容易に脱離もさせ易く,捕集金属の回収の研究と,複数種金属の捕集実験に相関性も見出した.加えて,捕集金属条件によっては,金属捕集後に蛍光発光性を示すポリグアナミン誘導体を発見し,金属捕集時のセンサーとしても活用できる可能性を示した. またここまで,芳香族リンカーを含む3種の誘導体と,脂肪族リンカーを含む3種の誘導体を用いてきたが,いずれもバルク状態では結晶性・配列性が低い化合物群であり,組織化膜形成した際の配列転移で秩序性を示してきた.その秩序性や配列転移の挙動が金属捕集性に影響を与えると考えられる.従って,リンカー部位に結晶性のポリエチレングリコール(PEG)ユニットを導入し,新規の誘導体を得るに至っている.PEG誘導体の固体構造評価については既に解明し,新たに論文を投稿している.今後は界面膜展開し,金属捕集・回収・捕集選択性の研究を新たに進行させていく. 以上のような経過は,予定された研究内容を概ね満たすものであり,更なる新しい展開も進行が見られている.以上の内容から,本課題は「順調に進行している」と結論付けていい内容であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
過去2年間に於いて,各種ポリグアナミン誘導体の界面膜形成に於ける,下相水からの金属捕集のメカニズム解明,脱離特性評価とその機構の解明,複数種の金属捕集選択性の評価,金属捕集による蛍光発光センサー能を見出すに至った.また,金属捕集メカニズムに環状部位の再配列が関与していることが明らかになり,これは様々にリンカー部位を置換することで変化が生じることも分かった.従って,これまで芳香族リンカー3種,脂肪族シンカー3種の誘導体では達成できていない,バルク状態での結晶性を担保したポリグアナミンPEG誘導体を得,その球晶形成や高次構造評価を既に済ませている.研究実施期間最終年度である2023年度は,この結晶性PEG誘導体を界面膜として展開し,金属捕集特性・金属脱離特性・金属捕集選択性・蛍光発光特性の評価を実施する.またこれらの結果を先の6種の誘導体と比較し,分子設計にフィードバックする.特に本研究課題の出発点である,「レアアース回収技術」に際しては,その捕集から回収の汎用性・利便性などを検討しつつ,我が国の南鳥島近郊の海底に沈むと言われる,世界需要数百年分のレアアースの回収に於いて,当該の分子膜技術が有用に寄与できるかどうかについて検証を行う. 加えて,申請研究機関最終年度であることから,積極的な学会発表,論文発表を行い,得られてた成果を広く学会や国民に報告・フィードバックしていきたいと考えている.
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