研究課題/領域番号 |
21K05328
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38010:植物栄養学および土壌学関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
田中 壮太 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 教授 (10304669)
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研究分担者 |
森塚 直樹 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (10554975)
大西 浩平 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (50211800)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 土壌肥沃度 / ショウガ病害 / 高知県 / 土壌環境の空間変異 / 土壌環境 / 中山間地 / ショウガ / 病害 / 赤音地 |
研究開始時の研究の概要 |
高知県のショウガは,中山間地の水田転換圃場で栽培されている。土壌消毒をしても病害が発生することから,病害が発生しやすい圃場条件を特定し対策を講じる必要がある。本研究は,代表的産地の高岡郡四万十町において,水田転換圃場内の谷側と山側の違いや盛土の土壌物質の違いに起因する土壌環境の空間変異に焦点を当て,フィールド調査と土壌・植物体・病原菌分析により,病害発生を助長する土壌環境条件の究明を目指す。
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研究実績の概要 |
高知県四万十町は我が国のショウガ栽培の中核地域であり、主に水田転換圃場においてショウガが栽培されているが、病害発生が深刻な問題である。本研究は、中山間地における圃場の多様な立地環境と病害発生との関連を明らかにすることを目的とし、これまでに実施してきた四万十町との共同研究を発展させるものである。 2年目となる2022年度には、1)四万十町の農地では赤音地土壌が特徴的であることから、赤音地層の有無に着目して土壌断面試料を前年度に採取し、それらの理化学性、物理性、鉱物性分析を行った。その結果、赤音地層は酸性シュウ酸塩可溶性Al・Feやリン酸吸収係数の点で火山灰土としての特徴を持っているが、多くは基盤整備や農作業の影響により通常の土壌と混合しているものと考えられた。孔隙率は80%に達し、保水性は高いが、pF3以上の微小な孔隙が主であり排水の面で問題があると思われた。一方で、赤音地層の試料間で遊離鉄の結晶化指数と活性度などに大きな違いが見られ、性質が大きく異なっていることが分かった。2)ショウガ栽培期間中に、2つの圃場のそれぞれ山側と谷側の2地点で土壌水分モニタリングを行なった。重度の病害が発生した圃場では、病害がほとんど出なかった圃場と比べて、降雨により種ショウガが浸水する頻度が高く、土壌水分は高く推移し、降水後の水分低下も小さかった。3)ハウス内で土壌種と土壌水分条件を変えた二因子ポット試験を行ったところ、ショウガの生育量は梅雨明け以降に土壌水分含量を高め安定に維持させた土壌水分処理区で増加する傾向が見られた。4)根茎腐敗病菌が圃場の中でどのように伝播するのかを明らかにするために、いくつかの圃場において補足法の変法により、根茎腐敗病が発生した個体周囲の土壌における根茎腐敗病菌の存在の検出を試みたが、捕捉率は0%で根茎腐敗病菌を検出することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、1)赤音地層の土壌特性解明、2)栽培期間中の土壌養水分モニタリング、3)病害伝播メカニズムの解明、4)水分や養分を要因とするポット試験を行った。1)では赤音地層と非赤音地層の土壌特性の差異を明確にでき、赤音地層の多くは保水性が高すぎる一方で排水性に劣ることが分かった。2)では重度の病害発生圃場とほとんど病害発生のなかった圃場間での土壌水分状況の差異を明確に捉えることができた。1)と2)により、2021年度の研究結果に基づいて設定した「7月から8月の台風などによる多雨時に圃場の排水が追い付かず病原菌が蔓延する原因となっている」との裏付けとなるデータを得ることができ、2023年度も継続実施することで病害対策にも繋がると考えている。3)については、補足法の変法による根茎腐敗病菌の検出を試みたが、捕捉率は0%となり期待通りの結果を得ることができなかった。その原因として試験期間中に土壌が比較的乾燥していたことに加えて、病害発生圃場への立ち入りを忌避する生産者も多く、圃場数の確保が難しいことも分かったので、2023年度は栽培期間中に自由に立ち入ることを条件に圃場を借り上げて本テーマを継続するにより、病害伝播のメカニズムを解明する。4)は申請段階の計画には入れていなかったが2021年度の結果に基づいて設定したテーマである。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度には、生産者の協力により、栽培期間中に自由に立ち入ることを条件に2つの圃場を借り上げて(契約済み)、研究を推進する。土壌養分の経時変化の評価、土壌水分モニタリング、病害伝播のメカニズムの解明、ショウガの生育評価などを集中的に実施する。加えて、ポット試験を継続実施することにより、中山間地における圃場の多様な立地環境と病害発生との関連を明らかにしていく。 赤音地層を含む断面の土壌特性に関しては、理化学性、物理性、鉱物性とも十分なデータが得られているので、性質間の関連などの解析を進め、年度半ばに学会において発表する。最終的に結果を取りまとめ、学会発表を行うとともに、論文として学術誌に投稿する。報告書として四万十町に提出する。
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