研究課題/領域番号 |
21K05433
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 公益財団法人岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
矢野 明 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 研究部長 (50312286)
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研究分担者 |
上杉 祥太 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 主任研究員 (30795901)
福原 和哉 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70881514)
大沼 広宜 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 研究員 (90891028)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | SARS-CoV-2 / ACE2 / Hydrangea macrophylla / Dihydroisocoumarin / IL-6 / Physalis peruviana L. / Withanolides / 緑茶 / ガレート型カテキン / 甘茶 / ナリンゲニン / カリン / TMPRSS2 |
研究開始時の研究の概要 |
主に岩手県で生産される農林水産物を対象に、抽出物ライブラリーを作出し、新型コロナウイルス感染症において課題となっている、ウイルス付着、感染、重症化の抑制素材および有効成分の探索を行い、作用機序解明に取り組む。ライブラリー探索に先立ち、インフルエンザウイルス感染症において、その抑制作用の報告がある緑茶について、新型コロナウイルスへ感染症抑制効果の検証と、有効成分の特定を行う。評価する活性は、SARS-CoV-2 Spikeタンパク質と受容体ACE2との結合阻害活性、ウイルスの細胞内への侵入に必要なプロテアーゼTMPRSS2の阻害活性、IL-6の過剰発現による炎症抑制活性の3つである。
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研究実績の概要 |
本研究では、新型コロナウイウルスSARS-CoV-2をモデルとしてウイルス感染症の抑制機能を有する食品素材の探索を行い、有効成分を特定することで食品等の利活用による健康維持・増進技術の解明につながる基礎的知見を得ることを目的としている。初年度から次年度にかけ、スクリーニング系の確立と、有望素材の選抜を行った。すなわち 1. SARS-CoV-2 Spikeタンパク質とその受容体ACE2を用いた複数種のELISA系によるウイルス結合阻害活性評価系、2. ウイルスの細胞融合を促進するプロテアーゼTMPRSS2阻害活性評価系、3. 感染によるサイトカインストームを模倣したHeLa細胞によるIL-6過剰発現阻害活性評価系により、北東北の農林水産物(約500種)から作製した抽出物ライブラリーから有望素材の選抜を行った。実際には、近縁種等を考慮して約110種の代表的素材の抽出物を評価し、1. ウイルス結合阻害素材として、緑茶、コシャク、ヤマミズ、甘茶、セリ、アカモク等、3. IL-6発現抑制素材としてカリン、ヤーコン、ケンポナシ、食用菊、クラブアップル、ゴールデンベリーなどを選抜した。2. TMPRSS2は市販酵素の安定性に問題があり、酵母による組換えTMPRSS2の作製を実施した。 有効成分特定について、1. ウイルス結合阻害成分を甘茶から単離同定を行い、既報の抗ウイルス成分であるNaringeninおよび、新たな有効成分として、Dihydroisocoumarins(phyllodulcin and hydrangenol)の同定に成功した。3. IL-6発現阻害成分についてゴールデンベリーの葉に含有されるwithanolide類を特定し、4beta-hydrxywithanolide Eおよびwithanolide Eが主たる阻害成分の一つであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SARS-CoV-2 Spikeと受容体ACE2の結合を阻害する素材として甘茶Hydrangea macrophylla var. thunbergiaの乾燥茶葉、有効成分としてdihydroisocoumarins (phyllodulucin & hydrangenol)を見出した。甘茶およびその有効成分dyhidroisocoumarinsは、主にACE2に作用することでウイルスとの結合を阻害するが、その際ACE2の酵素活性(AngIIからAng 1-7へ変換するプロテアーゼ活性)を阻害することなく、ACE2と相互作用していることを明らかにした。ウイルス-受容体の結合阻害成分として、緑茶epigallocatechin gallate (EGCg)が報告されているが、EGCgは主にウイルス側に作用するのに対し、甘茶はACE2に作用する阻害成分であり、ACE2を受容体とする様々なSARS-CoV-2変異株に有効であると推測された(論文投稿中)。 また、甘茶にTMPRSS2を阻害する活性があることも見出している。 非免疫細胞であるHeLa細胞に、IL-17およびTNF-alphaの同時刺激を与えることでIL-6の過剰発現を誘導するサイトカインストームのモデル系を構築し、その阻害素材としてゴールデンベリーPhysalis peruviana L.の葉を特定し、主要な有効成分としてwithanolide類 (4beta-hydrxywithanolide Eおよびwithanolide E)を同定した。過剰発現系では非常に強いIL-6の発現誘導が見られ、既報の抗炎症成分を含むと考えられる抽出物の多くに阻害効果を確認できず、withanolide Eを主要成分の一つとするゴールデンベリーの葉は、有望な抗炎症素材として活用が期待される(論文投稿中)。
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今後の研究の推進方策 |
投稿中論文についてアクセプトを目指すとともに、甘茶およびdihydroisocoumarinsについて、SARS-CoV-2のin vitro感染実験系を有する研究室との共同研究を行い、その感染抑制能について明らかにする。コロナ禍ではほぼ全ての学会がオンライン開催で、異分野の研究者との交流が困難であったため、共同研究者を見つけることができなかったが、今年度は論文発表を契機に共同研究を実現させる。 また、甘茶に含まれるプロテアーゼ(TMPRSS2)阻害成分の単離・同定を行う。 さらに、Withanolide類の有するIL-6発現抑制メカニズムの解析を行い、その作用点を明らかにする。
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