研究課題/領域番号 |
21K05483
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
三浦 靖 岩手大学, 農学部, 教授 (50261459)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 低塩化食品 / 低糖質化食品 / 咀嚼・嚥下容易性食品 / 3次元積層造形 / 3Dプリンタ / レオロジー / 数値流体力学 / コンピュータシミュレーション / 咀嚼・嚥下容易食品 / 3次元造形 |
研究開始時の研究の概要 |
『超高齢社会』と『多発する自然災害』に食関連産業が対応すべき事項として,高齢者対応食品 (特に咀嚼・嚥下容易食品,低塩/低糖質化食品) ならびに災害食 (特に低塩/低糖質化食品,常温保存・流通可能食品) の開発が考えられる。本研究では呈味素材 (食塩, ショ糖) の配合量を低減しても呈味 (塩味, 甘味) が十分に知覚できるようにして食品の低塩/低糖質化を可能すること,および咀嚼時には過剰に唾液を吸収することなく容易に破砕・小片化され,口腔中で形成された食塊が唾液を滲出することなく一体となって嚥下できるようにして咀嚼・嚥下を容易にすることを目的にして低水分固体食品の3次元造形法を確立する。
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研究実績の概要 |
我が国が直面している『超高齢社会』と『多発する自然災害』に食関連産業が対応すべき事項として,高齢者対応食品ならびに災害食の開発が考えられる。本研究では呈味素材の配合量を低減しても呈味が十分に知覚できるようにして食品の低塩/低糖質化を可能すること,および咀嚼時には過剰に唾液を吸収することなく容易に破砕・小片化され,口腔中で形成された食塊が唾液を滲出することなく一体となって嚥下できるようにして咀嚼・嚥下を容易にすることを目的にして低水分固体食品の3次元積層造形法を検討した。1.食品用3次元積層造形装置の改造②:食品用3次元積層造形装置の吐出機構を単シリンジ式から2シリンジ式に変更する計画であったが,吐出機構の耐久性が想定よりも低かったために吐出機構を改造して耐久性を向上させた。2.微細構造が異なる3次元積層造形法の確立:呈味評価用生地および咀嚼・嚥下容易性評価用生地を吐出口内径0.84mmのノズルにて並列構造(同方向,直交方向),同心円形構造,同心方形構造およびコア/シェル構造に造形した。造形物を63.5%RH-5℃-9日間の調湿乾燥(呈味評価用),または上火・下火130℃-20分間の焼成(咀嚼・嚥下容易性評価用)して低水分固体モデル食品にした。3.吐出シミュレーション法を用いた吐出条件の確立:MPFI法でノズル内の圧力分布と流速分布を数値流体力学シミュレーションした。4.呈味性,咀嚼・嚥下容易性の評価:低水分固体モデル食品から人工唾液へ溶出したナトリウムイオン・塩化物イオン量,スクロース量を定量し,塩味・甘味強度を官能検査した。低水分固体モデル食品の曲げ強度ならびに食塊の理化学的特性(唾液吸収量,付着性,摩擦係数,動的粘弾性)を検討した。生体計測(最大舌圧,食塊の移動速度,咬筋・舌骨上筋・下筋群の表面筋電位)および咀嚼・嚥下特性の官能評価により咀嚼・嚥下容易性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.食品用3次元造形装置の改造②:吐出機構を改造して耐久性を向上させた。2.微細構造が異なる3次元造形法の確立:0.25 %(w/w)塩化ナトリウムまたは2.5 %(w/w)スクロースを配合した呈味評価用生地および咀嚼・嚥下容易性評価用生地を並列構造,同心円形構造,同心方形構造およびコア/シェル構造に造形した。吐出生地のダイスェルを計測した。造形物を調湿乾燥または焼成して低水分固体モデル食品にした。低水分固体モデル食品の3次元画像を非接触3Dスキャナ型3次元測定機にて,断面画像をデジタルマイクロスコープにて取得した。3.吐出シミュレーション法を用いた吐出条件の確立:シミュレーションモデルに吐出生地とノズル内壁面との摩擦力を取り入れてMPFI法でノズル内の圧力分布と流速分布を数値流体力学シミュレーションした。4.呈味性,咀嚼・嚥下容易性の評価:(1)呈味性:コア/ シェル(体積分率)が0.24 / 0.76となる微細構造で,シェルのみに塩化ナトリウムを分布させた試料ではナトリウム・塩化物イオンの溶出量が有意に多かった。コア/シェルの体積分率が0.24 / 0.76の構造で,コアのみに塩化ナトリウムを存在させた試料で塩味強度が高かった。コア/シェルの体積分率が0.42 / 0.58である試料ではスクロースの溶出量が有意に多かった。試料間に甘味強度の有意差は見られなかったが,同じ微細構造の試料間で甘味強度にばらつきがみられる傾向にあった。(2)咀嚼・嚥下容易性:細線並列と細線交差試料は曲げ強度を低減でき,咀嚼容易性を向上できる可能性があった。食塊の理化学的特性は,微細構造を変えても顕著に変化しなかった。嚥下時の最大舌圧と舌骨上筋・下筋群の筋活動量を最も低減でき,咽頭部の食塊流速が最も遅く,官能評価で嚥下容易性が高かった細線同心方形構造は,咀嚼・嚥下が容易な微細構造であった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)呈味性の評価:試料の構造と呈味強度の関連性をさらに検討するためにブロックチェックのような複雑な微細構造の試料を調製する予定である。本研究で調製した試料は咀嚼の際に口腔内に断片が付着しやすいため,付着しにくい吐出生地配合を考案する予定である。現在の材料の中で歯に付着しやすいと考えられるのは増粘剤であるLMGであり,LMGを低濃度にすることや粘度が低い増粘剤(アラビアガム,タマリンドシードガム,イソマルトデキストリンなど)に変更することを想定している。 (2)嚥下容易性の評価:前年度にはCOVID-19禍により,咽頭部での食塊移動速度,咀嚼時の舌骨上筋群の活動電位,咀嚼・嚥下時の舌圧(新潟大学大学院医歯学総合研究科で実施)の計測が実施できなかったが,令和4年度にはこの未実施項目を優先して実施した。食品の微細構造を変化させることによる咀嚼・嚥下容易性の向上効果をより顕著に示すような微細構造を考案する必要があり,ブロックチェック構造をもつクッキー様食品の咀嚼・嚥下容易性を検討する予定である。また,本研究ではクッキー様食品の筋シナジーと嚥下動態との関連性を立証することができなかったため,嚥下容易性の評価法を改善させるためには,試料の量を一回で嚥下できるように設定して試行回数を増やすことや,sEMG測定と同時にVF等の測定を行うことで各シナジーと嚥下動態との関連性を検証する必要がある。本対照試料と3次元積層造形試料とで質量を揃えていなかったことによる咀嚼・嚥下容易性への影響が懸念されたため,今後は対照試料と3次元積層造形試料とで質量を揃えた場合での咀嚼・嚥下容易性を再評価する予定である。咀嚼・嚥下が容易な食品を3次元積層造形法で製造するという目標を達成するため,3次元積層造形精度を向上させるとともに咀嚼・嚥下容易性が顕著に向上するような微細構造を特定する。
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