研究課題/領域番号 |
21K05554
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 福岡県農林業総合試験場 |
研究代表者 |
宮原 克典 福岡県農林業総合試験場, 豊前分場, 研究員 (80557033)
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研究分担者 |
石橋 勇志 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50611571)
内川 修 福岡県農林業総合試験場, 農産部, チーム長 (50502465)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | イネ / 玄米品質 / 高温 / 遺伝子 / 水稲 / 品質 / 外観 / 農業形質 / 高温耐性 / 高温登熟耐性 / 胚乳 |
研究開始時の研究の概要 |
温暖化の影響により水稲の登熟期間が高温で経過し、米の品質低下を招いている。対策として、高温でも玄米品質が低下しにくい高温耐性品種が育成され、品質向上に貢献しているが、これらの高温耐性品種が持つ高温耐性のメカニズムは明らかにされていない。本研究では、高温耐性品種の染色体の一部を、非高温耐性品種に組み込んだ系統を用い、遺伝子発現、農業形質、胚乳構造がどのように変化することで高温耐性がもたらされるのかについて調査する。
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研究実績の概要 |
水稲高温耐性品種「元気つくし」が有する高温耐性機構を明らかにするため、「元気つくし」の親品種である「つくしろまん」との遺伝的差異の調査を中心に研究を進めている。「つくしろまん」と「元気つくし」のゲノム情報と高温登熟条件下における未熟粒の発生率を調査することにより、「元気つくし」の第8染色体上に高温耐性に影響を及ぼすことがこれまでに示唆されていた。本年は、「つくしろまん」のゲノムに「元気つくし」の第8染色体領域を組み込んだ「準同質遺伝子系統」を用いて、遺伝子発現について主に評価した。 「準遺伝子系統」は「つくしろまん」に比較して、未熟粒の発生が少なかった。「準同質遺伝子系統」は未熟粒の発生を抑えるための遺伝子を含んでいることが強く示唆された。これまでに、第8染色体には糖やデンプンの代謝にかかわる遺伝子が複数存在していることが知られており、これらの遺伝子が「元気つくし」の高温耐性にも関与していることが予想された。そのため、「元気つくし」と「つくしろまん」と「準同質遺伝子系統」のそれぞれにおいて、高温登熟条件と、常温登熟条件の子実をサンプリングし、RNAを抽出して、高温耐性に関与されることが疑われた(AGPS2b, Amy3D, Amy3E)の遺伝子発現量を調査した。これらの遺伝子の発現量は、高温処理をすることにより増減していることが確認されたが、「元気つくし」と「つくしろまん」の間に差は認められず、「準同質遺伝子系統」においても同様であった。このことから、これらの遺伝子は「元気つくし」と「つくしろまん」における高温耐性の差異を説明できる遺伝子ではないことが確認された。 今後は、高温条件における「元気つくし」と「つくしろまん」の遺伝子発現を網羅的に解析することにより、上記の遺伝子以外にも調査対象を広げて解析していくこととしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分担者との協力体制のもと、必要なサンプルと調査データを順調に蓄積することができている。 「準同質遺伝子系統」の農業形質の評価については、2ヵ年にわたり、水稲作況試験に準ずる栽培を実施することにより、生育期間における反復親品種との同質性を確認することができた。 また、高温条件下における品質評価や遺伝子発現調査に関する研究においても、ファイトトロンによる安定した処理で期待通りのサンプルを得ることができたほか、遺伝子発現調査においても、分担者と協力しながら進めることができた。 胚乳の観察についても、高温処理されたサンプルを分析することができている。 遺伝子発現については、既知の高温反応性遺伝子において、高温による反応が確認されているほか、高温条件で発現量が上昇する新たな遺伝子も検出されるなど、順調な成果を上げている。胚乳の観察においては、予想された形質が観察されていないが、データの蓄積は予定されたとおりに進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、「準同質遺伝子系統」の農業形質および既知の高温耐性遺伝子発現の調査を進めてきたところである。また、RNA-seq の結果が揃い、予想していなかった遺伝子における「元気つくし」と「つくしろまん」の間の発現量差異が確認されている。 今後は、これらの遺伝子発現情報を基に、これらが高温登熟反応性であるのかや、予想される機能から高温耐性をもたらしている遺伝子であるのかなどについて考察を進める必要がある。 また、ゲノム情報の解析にも取り組むこととしており、DNAの情報をRNAの情報を照らし合わせることにより、「元気つくし」の高温耐性の仕組みの解明につながる分析を進めていく。 胚乳の観察については、明らかな品種間差が確認されていないことから、本年は結果が期待されているDNA、RNAの解析に注力し、RNA-seqで見いだされた遺伝子の働きについて多くの情報を得ていきたい。
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